細菌情報学プロジェクト
1.主要メンバー
プロジェクトリーダー | 山口 雅也 |
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研究員 | 公募中 |
特任研究員 | 公募中 |
研修生 | 小林 桃子 |
事務補助員 | 浅野 真智子 |
2.研究目的・背景
近年、耐性菌による感染症が国際社会の脅威となっています。2019年には、世界で約495万人が薬剤耐性菌の関係する疾患により死亡したと推定されています。これまで、新たな抗菌薬が登場して数年以内に耐性菌が出現しており、新たな抗菌薬の開発とともに、ワクチンや革新的な治療法の研究が求められています。
我々は、病原細菌による病態発症機構の解明を行っています。病気の機構を明らかにすることで薬剤の標的とすべき分子が明らかとなり、効果的な予防法・治療法の開発につながります。
また、病原細菌に加え、細菌叢の解析を行っています。多くのヒトの細菌叢について、細菌種の構成や存在する遺伝子を比較することで、健康の増進や病気の悪化に関わる細菌叢の因子を明らかにしていきます。
3.研究内容
Ⅰ 肺炎球菌感染症
耐性化が強く懸念されている病原細菌の一つに、肺炎球菌が挙げられます。我々は肺炎球菌感染症の重症化機構について、細菌側と宿主側の両面から解析を行っています。
細菌側について、細菌のパンゲノムワイド関連解析により、病態と相関する細菌遺伝子の探索を行っています。さらに、病態と相関する細菌因子について、分子生物学的な実験による解析にて、病態形成に果たす役割を明らかにしています。
宿主側について、肺炎球菌は肺炎の主たる原因菌で、高齢の重症肺炎患者の約半数から分離されます。日本における肺炎の死亡者は98%が65歳以上の高齢者であり、加齢は明確な重症化のリスク因子です。シングルセル解析や空間遺伝子発現解析技術などを用いて若齢宿主と老齢宿主の免疫応答を比較することで、加齢による免疫応答の変化の詳細な解明を行っています。
Ⅱ 化膿レンサ球菌感染症
「劇症型溶血性レンサ球菌感染症」は、ショック症状に加えて肝不全や腎不全、播種性血管内凝固症候群、壊死性筋膜炎などを伴う、β溶血性レンサ球菌による感染症です。稀ではあるが誰にも起こり得る疾患で、致死率は30〜40%と高いにも関わらず発症機構に不明な部分が多く残っています。
従来のM1型化膿レンサ球菌において、感染後に細菌の遺伝子制御を司る二成分制御系に変異が入ることで病原因子の発現パターンが変化し、侵襲性の病態を引き起こします(Cole J.N. et al. Nat. Rev. Microbiol. 2011)。しかし、同様の変異を持たない株においても劇症型感染症は引き起こされており、未知の劇症型感染症の発症機構が未だ存在していると考えられます。
我々はこれまでに、劇症型ならびに非劇症型疾患由来株の全ゲノム情報を比較し、細菌のパンゲノムワイド関連解析を行ないました。その結果、劇症型株に特異的な系統は存在しないこと、すなわち菌が感染過程で変異を蓄積し、散発的に劇症型を引き起こす可能性が示されました。また、劇症型と相関する細菌の変異は、CovR/Sへの変異以外にも複数あることが示されました。現在、劇症化に寄与する変異の詳細を解明するとともに、得られた知見をもとに新規予防薬・治療薬の開発を試みています。
Ⅲ 微生物叢解析
健康なヒトは、皮膚や口、腸などに生息している多くの微生物と共存しています。このような微生物の集団を常在微生物叢といい、微生物叢のバランスは健康増進や病気の発症に関与することが明らかになってきました。しかし、微生物叢には培養ができないために詳細がわかっていない細菌種も多く存在します。我々は、メタゲノム解析や細菌シングルセル解析などを通じて、微生物叢の詳細を明らかにするとともに有用な遺伝資源の探索を行っています。
また、一部の病原細菌が、類縁の常在細菌を自身の外部遺伝子リザーバーとして利用していることが明らかとなっています (Kilian M. et al. mBio 2019; Nahm MH. et al. J. Infect. Dis. 2020)。すなわち、薬剤耐性遺伝子が常在微生物叢にどの程度存在しているか、また、微生物叢内でどの程度種の壁を超えて遺伝子が伝播していくのか、という情報は、耐性遺伝子の拡大を防ぐ上で重要な情報となります。
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