ホーム > 論文紹介

論文紹介

総たんぱく質摂取量と筋量増加の関係をメタアナリシスで解明
―105文献、5402名のデータで解析―

〜11月4日 Nutrition Reviewsに論文がWeb掲載されました〜


身体活動研究部、渡邉大輝特別研究員と宮地元彦部長および株式会社明治の研究者らによる研究論文“Dose-response relationship between protein intake and muscle mass increase: a systematic review and meta-analysis of randomized controlled trials”「タンパク質摂取量と筋肉量増加の間の用量反応関係:ランダム化比較試験の系統的レビューとメタアナリシス」が、2020年11月4日にNutrition ReviewsにWeb掲載されました。
https://academic.oup.com/nutritionreviews/advance-article/doi/10.1093/nutrit/nuaa104/5936522
研究の概要は以下のとおりです。

【背景と目的】

筋量は健康の維持・増進に重要ですが、たんぱく質介入量ごとの筋量増加への有効性に関して一定の見解が得られていません。本研究の目的は,たんぱく質が筋量に及ぼす影響について、メタアナリシスを用いて用量反応関係を評価することです。

【方法】

PubMedと医中誌Webを用いた文献調査に加え,採用文献や他のメタアナリシスの参考文献からの手動検索も実施しました。たんぱく質介入量が筋量に及ぼす影響を群間で比較可能な無作為化割付介入研究を採用しました。2名の研究者が独立して要旨をスクリーニングし,5名で全文レビューを実施しました。

【結果】

5402名の被験者を含む105件の文献が採用条件を満たしました。多変量調整スプラインモデルを用いた解析により、日々の総たんぱく質摂取量と筋量増加との間に正の用量反応関係が示されました。特に、毎日の総たんぱく質摂取量が1日体重1kgあたり0.1 g(体重が50kgの方では5.0g/日)増加すると、2〜3ヶ月で筋量0.39kgの増加が期待できること、一方で、1日の体重あたりの総タンパク質摂取量が1日体重1kgあたり1.3 g(体重が50kgの方では65g/日)を超えると、筋量増加の効率が悪くなりました。しかし、筋トレを行っている場合は、総タンパク質摂取量が1日体重1kgあたり1.3 gを超えても筋量増加の効率が落ちないことも明らかとなりました。

【結論】

本研究の結果から,日々のたんぱく質摂取を少しでも増やすことが,性別,年齢や運動習慣の有無に関わらず,多くの人々の筋量の維持・向上に役立つことが示されました。

【展望】

本研究の成果は、先進国の健康課題であるサルコペニアやフレイルだけでなく発展途上国の栄養不足によるクワシオルコルの予防や改善のための対応策の開発に寄与することが期待されます。

2020年11月5日更新