水分補給について

運動選手の水分補給については、２つの観点から考える必要があります。
一つ目は、熱中症対策の観点から。
二つ目は、パフォーマンス（競技力）向上の観点から。
まず一つ目ですが、運動選手は暑熱環境下で激しいトレーニングを行います。そのため、大量に発汗し、水分摂取が適切に行われないと脱水症状に陥ってしまいます。脱水や水分損失の最も簡便な評価方法は体重を測ることです。運動開始前の体重を測定しておき、その体重が維持されるように水分を摂って行くことが脱水ならびに熱中症を予防する最も良い方法です。体重が３％減少し、体水分の３％が減少すると、運動能力や体温調節機能が低下します。運動による体重減少が２％を超えないようにしましょう。
その際に摂取するのに適切なのは、0.1-0.2％食塩水です。運動による水分損失では発汗により塩分も同時に失われます。したがって、それに見合った塩分の補給が必要です。
次に、パフォーマンスとの関連でどのようなものを補給すると良いかについてです。マラソンのような過酷な長時間運動では、給水地点などで水分摂取が行われ、成績やパフォーマンスに多少なりとも影響があると考えられています。カナダの栄養士会とアメリカスポーツ医学会の共同声明（Position of the American Dietetic Association, Dietitians of Canada, and the American College of Sports Medicine: Nutrition and athletic performance. J Am Diet Assoc. 2009 Mar;109(3):509-27.）では、「ブドウ糖と電解質を適度に含んだスポーツ飲料は血糖値や電解質濃度を維持する上で重要なので、競技の前中後に適切な量を摂取することが推奨される。」とされています。
しかし、その補給するものの具体的な内容やタイミングについては選手によってまちまちです。水、食塩水、清涼飲料水など摂るものも多様で、どの飲料を摂れば勝てるという共通した見解を述べることは不可能だと思います。
以上のことから、以下の点に留意して、水分摂取をされるのが良いと考えます。
１）運動による体重減少が２％を超えないように、積極的に水分を摂取する。
２）競技の前中後には、塩分などの電解質や糖質を適度に含む飲料を用いることが推奨される。
運動ガイドラインプロジェクトリーダー
宮地元彦

　運動選手の場合、どんな水分をいつ・どれだけ補給するのが最適なのでしょうか。

一般に、食塩・塩化マグネシウム・塩化カリウム・砂糖・ブドウ糖・乳酸カルシウムなどの入った、清涼飲料水を飲む運動選手が多いように思われますが、水と比べると効果はどのように違うのでしょうか。

　また、運動に適している飲む量かつ飲む時期はいつなのでしょうか。

　他方、日射病・風邪・お風呂あがりののぼせには、上記清涼飲料水が体に効果的なのはなぜなのでしょうか。