医薬基盤研究所(NIBIO)のお知らせ
難病治療薬開発に新たな可能性- ドラッグリポジショニングの可能性を予測する評価指標を開発 -
2021年6月11日
この度、弊所 難治性疾患研究開発・支援センター 難病資源研究室 坂手龍一 サブ研究リーダーと、木村友則 センター長らは、難病治療薬開発の加速を目的とし、指定難病1)を対象とする臨床試験データを用いて、世界で初めて網羅的に難病領域における薬剤開発の動向に関する調査を行いました。その結果、ドラッグリポジショニング(DR)2)の可能性を予測する評価指標を開発することに成功しました。
薬剤標的遺伝子(または遺伝子産物)を疾患ペア間ごとに比較する評価指標Rgeneを設けて解析した結果、数値が急に上昇した場合には、数年以内にその難病間でのドラッグリポジショニング(DR)が進むことが見いだされ、RgeneがDRの予測指標となり得ることが示されました。
本研究成果により、今後、Rgeneを用いて、これまで困難であったDRの対象となる疾患や薬剤の探索、特定を行うことが可能となれば、難病領域における治療薬開発が飛躍的に加速することが期待されます。
なお、本研究成果は、2021年6月11日(金)に、「Scientific Reports」誌のオンライン版で公開されました(Sakate R, Kimura T. Drug Target Gene-based Analyses of Drug Repositionability in Rare and Intractable Diseases.)。
また、本研究のベースとなった臨床試験データは、当センターが開発するデータベース、DDrare(https://ddrare.nibiohn.go.jp)から公開されています。
詳細は、こちらをご参照ください。
<用語解説>
1)指定難病
厚生労働省により現在333疾患が指定されている。本研究では、ライソゾーム病に含まれるゴーシェ病を追加するなど、階層化した787疾患のリストを作成し、英語化したデータをもとに分析評価を行った。
2)ドラッグリポジショニング(DR)
既存薬を再評価し、別の病気に利用する方法。臨床試験(治験)で安全性が確認されている既存薬を利用するので、通常の新薬開発に比べて、迅速に薬を医療現場に届けることができる。