国立健康・栄養研究所

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食生活の10のポイント

妊娠期及び授乳期は、お母さんの健康と赤ちゃんの健やかな発育にとって大切な時期です。
「妊産婦のための食生活指針」では、この時期に望ましい食生活を実践するための指針が示されています。
今回、現代女性の現状にあわせた指針として、リニューアルされました。
妊娠前からしっかりと食事をとることを意識しましょう。

妊娠前から、バランスのよい食事を
しっかりとりましょう

1食分のバランスの良い食事の目安として、主食、主菜、副菜の揃った食事があります。1日に主食、主菜、副菜の揃った食事が2食以上の場合、それ未満と比べて、栄養素摂取量が適正となることが報告されています。また、1日に、何を、どれだけ食べたらよいのかの目安が示された「食事バランスガイド」及び「妊産婦のための食事バランスガイド」に沿った食事をすることで、主食、副菜、主菜、牛乳・乳製品、果物を適切に組み合わせて摂取することができます。このような目安を参考に、多様な食品を組み合わせることで、必要な栄養素をバランスよくとることができます。
現在、1日に2回以上主食・主菜・副菜の3つをそろえて食べることがほぼ毎日である女性の割合は、20代では32.1%、30代では47.4%であり、若い世代を中心にバランスのとれた食事がとりにくくなっている状況がみられます。妊娠は食を見直す絶好の機会と言われますが、実際には妊娠を機に妊婦の食行動は大きく変化するものではなく、妊娠前の食行動が継続されている可能性があります。そのため、妊娠前から栄養のバランスに配慮した食生活を意識し、実践することが望まれます。
また、近年、外食や中食でも、栄養バランスに配慮した食事を選択できるよう、「健康な食事・食環境」認証制度などの食環境整備が進んでいます。

主食・主菜・副菜の揃った食事が
1日に2回以上ある頻度(女性、年齢階級別)

資料:農林水産省 食育に関する意識調査報告書(平成31年3月)

資料:農林水産省 食育に関する意識調査報告書(平成31年3月)

「主食」を中心に、
エネルギーをしっかりと

主食は、ごはん、パン、麺など、炭水化物を多く含み、エネルギーのもととなる料理のことを言います。健康寿命の延伸につながる健康の保持・増進、生活習慣病の予防のために参照すべきエネルギー及び栄養素の摂取量の基準が日本人の食事摂取基準に示されています。日本人の食事摂取基準(2015年版及び2020年版)と現状の摂取量を比較したところ、特に思春期を含む、若年女性においては十分にエネルギーを摂取できていない状況にあることが分かりました。
現在、妊婦の平均的なエネルギー摂取量は1,700kcal前後です。日本人の食事摂取基準(2020年版)によると、妊娠中には適切な栄養状態を維持して正常な分娩をするために、妊娠前に比べて必要なエネルギー摂取量が増加するため、妊娠初期(?13週6日)は+50kcal、妊娠中期(14週0日?27週6日)は+250kcal、妊娠末期(28週0日?)は+450kcal、妊娠前に比べて余分にエネルギーを摂る必要があります。また、授乳婦も、妊娠前に比べて+350kcal余分にエネルギーを摂取する必要があります。
エネルギーをしっかりと摂取するためには、炭水化物を中心に食事を摂取することが必要です。しかし、炭水化物の主要な摂取源である穀類の摂取量は、20歳から49歳の女性において減少しています。妊娠前からの意識的な主食の摂取が望まれます。
一度にたくさんの主食を摂取することが難しかったり、3回の食事で十分に主食を摂取できない場合は、間食におにぎりを摂取するなど、食事バランスガイドなどを参考に、主食からのエネルギーをしっかり摂取できるよう心がけましょう。

主食・主菜・副菜とは

主食

主食

主に炭水化物の供給源となるごはん、パン、麺、パスタなどの穀類

主菜

主菜

主にたんぱく質の供給源である肉、魚、卵、大豆・大豆製品などを主材料とする料理

副菜

副菜

主にビタミン、ミネラル、食物繊維の供給源となる野菜などの料理

エネルギー摂取量と推定エネルギー必要量
(女性、年齢階級別)

エネルギー摂取量と推定エネルギー必要量(女性、年齢階級別)

1-14歳女性は、国民健康・栄養調査と日本人の食事摂取基準(2015年版)の年齢区分が大きく異なっているため、推定エネルギー必要量は示していない。また、15-19歳の推定エネルギー必要量として、食事摂取基準の15-17歳の推定エネルギー必要量を示した。

資料:厚生労働省 平成29年国民健康・栄養調査厚生労働省 日本人の食事摂取基準(2015年版)

穀類摂取量の平均値の年次推移
(女性、年齢階級別、2001~2017年)

穀類摂取量の平均値の年次推移(女性、年齢階級別、2001~2017年)

穀類には、米・加工品、小麦・加工品、その他穀類・加工品を含みます。
資料:厚生労働省 平成29年国民健康・栄養調査

不足しがちなビタミン・ミネラルを、
「副菜」でたっぷりと

妊娠中や授乳中では特に、多くのビタミン・ミネラルについて、摂取量が十分ではないことが報告されています。中でも日本人女性で摂取量が不足しがちなビタミン・ミネラルには葉酸と鉄が挙げられます。葉酸は胎児の先天異常である神経管閉鎖障害の予防のため、妊娠前から充分に摂取していることが大切です。鉄は酸素の運搬に必須のミネラルで、妊娠期には胎児の成長やさい帯・胎盤中への鉄貯蔵、循環血液量の増加などに伴い、需要が増加するため、妊娠前よりさらに多くの鉄摂取が必要です。
野菜は葉酸や鉄を含めビタミン・ミネラルのよい供給源ですが、若年女性では野菜摂取量も健康日本21(第二次)の目標値である1日350gに達していません。食生活はすぐに変えられるものではありません。妊娠前から、野菜をたっぷり使った副菜でビタミン・ミネラルを摂る習慣を身につけましょう。

鉄摂取量と推奨量(女性、年齢階級別)

鉄摂取量と推奨量(女性、年齢階級別)

資料:厚生労働省 平成29年国民健康・栄養調査
厚生労働省 日本人の食事摂取基準(2015年版)

野菜摂取量と摂取目標量
(女性、年齢階級別)

野菜摂取量と摂取目標量(女性、年齢階級別)

資料:厚生労働省 平成29年国民健康・栄養調査
厚生労働省 健康日本21(第二次)

葉酸と神経管閉鎖障害発症の予防

神経管閉鎖障害とは、胎児の神経管ができる時(受胎後およそ28日)に上手くつながらない先天性異常で、無脳症・二分脊椎・髄膜瘤などがあります。多くの場合、妊娠を知るのは神経管ができる時期よりも遅いため、妊娠に気づく前の段階から葉酸を十分に摂取していることが大切です。この時期に葉酸サプリメントを摂取することにより、神経管閉鎖障害のリスクが低減することが数多くの研究で明らかになっています。神経管閉鎖障害を予防するためには、通常の食事に加えて、サプリメントや食品中に強化される葉酸として400μg/日摂取することが推奨されています(1)。
サプリメントや食品中に強化される葉酸は、化学名をプテロイルモノグルタミン酸といい、グルタミン酸が一つ結合した構造を持ちます(狭義の葉酸)。一方、通常の食品中に存在する葉酸は、複数のグルタミン酸が結合したポリグルタミン酸型として存在します(食事性葉酸)。食事性葉酸の生体利用率は狭義の葉酸に比べ低いため、生体利用率の高い狭義の葉酸として摂取するように推奨されています(1)。
妊娠経験のない女性における神経管閉鎖障害予防のための葉酸摂取推奨の認知度は、15~19歳22.3%、20~24歳24.8%、25~29歳32.0%、30~34歳34.8%、35~39歳35.8%と十分に広まっていない現状が報告されています(2)。また、日本国内における神経管閉鎖障害の発症率は1万出生(死産を含む)当たり6程度で推移しており、減少傾向は認められていません(2)。したがって、意識的にサプリメントや強化された食品として摂取することが大切です。ただし、たくさん摂れば摂るだけ良いというものではありません。過剰摂取により、健康障害を引き起こす可能性がありますので、サプリメントや強化食品から30~64歳は1,000μg/日、その他の年齢区分では900μg/日を超える葉酸を摂取すべきではありません。また、神経管閉鎖障害は葉酸不足だけが原因で起こるものではありません。葉酸のサプリメントを摂取しただけで、必ず予防できるというわけではありません。さらに、サプリメントを摂取したからといって、野菜などの食事性葉酸を含む食品を摂取しなくてもよいということではありません。

表1 女性の葉酸摂取推奨量

12歳以上 妊娠計画中、妊娠の可能性あり 妊娠初期 妊娠初期 授乳期
食事性葉酸(μg/日) 240 240 240 480 340
狭義の葉酸(μg/日) 400 400

文献
1.厚生労働省.日本人の食事摂取基準(2020年版)
2.株式会社日本総合研究所.妊娠・出産に当たっての適切な栄養・食生活に関する調査報告書(平成30年度子ども・子育て支援推進調査研究事業).2019

「主菜」を組み合わせてたんぱく質を十分に

たんぱく質は、からだを構成する必要不可欠な栄養素です。主菜は、魚や肉、卵、大豆製品などを使った、食事の中心となるおかずの料理で、たんぱく質や脂質を多く含みます。主菜は種類によって、含まれる栄養素が異なります。例えば、魚の中でも特に青魚は、ドコサヘキサエン酸(DHA)やエイコサペンタエン酸(EPA)などの多価不飽和脂肪酸が豊富に含まれ、牛肉や豚肉などの畜肉には鉄が多く含まれています。さらに、大豆製品には、食物繊維も豊富に含まれています。このように、主菜は食材や量、調理方法によって、1食のエネルギーや栄養素量に大きく影響します。
魚介類や肉類は、全体のたんぱく質摂取量のうち、それぞれ2割程度がそれらの食品群由来のたんぱく質摂取量となります。同様に、穀類由来のたんぱく質摂取量も全体の2割を占めるため、主菜と同様に穀類もしっかり摂る必要があります。特定の食材に偏らず、多様な主菜を組み合わせて、たんぱく質を十分に摂取するよう心がけましょう。

たんぱく質摂取源(20歳以上)

たんぱく質摂取源(20歳以上)

資料:厚生労働省 平成29年国民健康・栄養調査

鉄を多く含む動物性食品

食品名 1食あたりの重量(g) 鉄(mg)
1食あたり 100gあたり
あさり(缶詰、水煮) 40 11.9 29.7
鶏レバー 40 3.6 9.0
さばみそ煮(缶詰) 180 3.6 2.0
コンビーフ 100 3.5 3.5
牛サーロイン 赤肉 150 3.3 2.2
牛肉(もも、赤肉) 80 2.2 2.8
牛レバー 40 1.6 4.0
かつお(生) 80 1.5 1.9
さんま(生) 100 1.3 1.3
干しエビ 8 1.2 15.1

資料:文部科学省 日本食品標準成分表2015 年版(七訂)追補2018年
小山裕子 他 サービングサイズ栄養素量100-食品成 分順位表- 第一出版(2011)

気をつけたい食品

たんぱく質の豊富な食品の中には、注意の必要な食品もあります。レバーなどには、ビタミンAが多く含まれていますが、過剰摂取により先天奇形が増加することが報告されているため、妊娠を計画する人や妊娠3か月以内の人は、大量摂取を避けましょう。また、大きな魚には小さい魚に比べて水銀が多く含まれているため、おなかの赤ちゃんに影響を与える可能性が指摘されています。食べる魚の種類と量に注意しましょう(1)。さらに、肉・魚のパテ、生ハム、スモークサーモンやナチュラルチーズ(乳製品)は、リステリア菌という食中毒が増殖している可能性があり、妊娠中は感染しやすくなっているため、お母さんと赤ちゃんの健康のために、食中毒予防も注意が必要です(2)。

参考
1.厚生労働省.お魚について知っておいてほしいこと
2.厚生労働省.食べ物について知っておいてほしいこと

乳製品、緑黄色野菜、豆類、小魚などで
カルシウムを十分に

妊娠中は胎児のからだをつくるために、また、授乳中は母乳中に、母体からカルシウムが供給されますが、母体のカルシウム吸収率が増加するため、妊娠前よりも多くのカルシウムを摂取する必要はないとされています。しかし、これは妊娠前のカルシウム摂取量が十分な場合に限ります。日本人女性のカルシウム摂取量は平均的に少なく、十分に摂取できていない状況が長年続いています。妊娠・出産・育児に適したからだをつくるために、妊娠前からの積極的なカルシウム摂取を心がけましょう。
乳製品はカルシウムのよい供給源となり、同時にたんぱく質やエネルギー補給にも役立ちますが、学校給食のなくなる15歳以降、その摂取量は急激に減ってしまいます。緑黄色野菜、豆類、小魚などからもカルシウムを摂取することができますので、様々な食品を組み合わせ、カルシウムの摂取量を増やすよう努めましょう。

カルシウム摂取量と推奨量(女性、年齢階級別)

カルシウム摂取量と推奨量(女性、年齢階級別)

資料:厚生労働省 平成29年国民健康・栄養調査

カルシウム摂取源(20歳以上)

カルシウム摂取源(20歳以上)

資料:厚生労働省 平成29年国民健康・栄養調査

妊娠中の体重増加量は、
お母さんと赤ちゃんにとって望ましい量に

体重増加は正常な妊娠経過でみられる現象です。適正な体重増加は、お母さんと赤ちゃんの長期的な健康の維持・増進につながります。体重増加が不足すると、早産や赤ちゃんが在胎週数に比べて小さいSGAのリスクが高まります。逆に、体重増加が過剰だと赤ちゃんが巨大児(出生体重が4,000gを超える場合)や在胎週数に比べて大きいLGAのリスクが高まります。また、体重増加が胎児発育に与える影響は妊娠前の体格によって異なり、やせの場合により強いことがわかっています。早産やSGAは乳児死亡の危険因子であるだけでなく、成人後の循環器疾患や糖尿病発症の危険因子であることが報告されています。また、巨大児やLGAも成人後の肥満や糖尿病発症の危険因子です。
つまり、望ましい体重増加量は、お母さんの妊娠前の体格(ボディマスインデックス:BMI)によって異なると考えられます。BMIの値は妊娠前の体重(㎏)を身長(m)の2乗で割って計算しましょう。日本人や東アジア人を対象とした多くの研究を総合的に検討した結果、表1,2におなかの赤ちゃんが一人の場合の、妊娠前体格区分別の推奨体重増加量を示しました。おなかの赤ちゃんが二人以上いる場合(多胎)は、それぞれの体格区分の推奨体重増加量よりも多く増加することがみられます。妊娠前がふつう体型に区分される方でも、低体重に近いBMI値の場合は、推奨体重増加量の上限値を目安にしましょう。

妊娠中の体重増加指導の目安*1

妊娠前の体格*2 体重増加量指導の目安
低体重(やせ) 18.5未満
12~15㎏
普通体重 18.5以上25.0未満
10~13㎏
肥満(1度) 25.0以上30.0未満
7~10㎏
肥満(2度以上) 30.0以上
個別対応
(上限5㎏までが目安)

*1 「増加量を厳格に指導する根拠は必ずしも十分ではないと認識し,個人差を考慮したゆるやかな指導を心がける.」 産婦人科診療ガイドライン産科編 2020 CQ 010 より
*2 日本肥満学会の肥満度分類に準じた。

母乳育児も、バランスのよい食生活のなかで

授乳婦の栄養素等の平均摂取量は、エネルギーやたんぱく質をはじめ、多くのビタミンやミネラルでも少ない状況にあります。授乳中には、エネルギーおよびたんぱく質、ビタミンA、ビタミンB1、ビタミンB2、ナイアシン、ビタミンB6、ビタミンB12、葉酸、ビタミンC、鉄、亜鉛、銅、ヨウ素、セレン、モリブデンで妊娠前よりも多く摂取することが推奨されています。付加量を十分に摂取できるように、バランスよく、しっかり食事をとりましょう。また、十分な水分摂取も母乳分泌には大切です。
一般的に母乳は子どもにとっても母体にとっても負担の少ない授乳方法です。また、母乳栄養は妊娠中に増加した母体の体重や蓄積した脂肪の減少にもつながります。そこで、WHOでは生後6か月までの母乳栄養を推奨しています。ただし、様々な要因で母乳栄養の実施が困難な場合もありますので、状況に応じて柔軟に対応しましょう。
母乳育児のために特別に摂取すべきものはありません、また、酒類以外に摂取してはいけないものもありません。授乳中に特定の食品を過剰に摂ったり、避けたりすることで、母乳育児が継続できたり、子どもの発達が促進されたり、疾病が予防できたりするというエビデンスはありません。

授乳婦のエネルギーおよび栄養素摂取量と食事摂取

H29年国民健康・栄養調査(授乳婦) 食事摂取基準(2015年)授乳婦(18-49歳)
人数 64
エネルギー【kcal】 1,829 2,300-2,350*1
たんぱく質【g】 66.6 70*2
ビタミンA_RE【μgRE】 450 1,100-1,150*2
ビタミンD【μg】 7.2 8*3
ビタミンE【mg】 5.9 7*3
ビタミンK【μg】 227 150*3
ビタミンB1【mg】 0.76 1.3*2
ビタミンB2【mg】 1.03 1.8*2
ナイアシン【mgNE】 12.9 14-15*2
ビタミンB6【mg】 0.99 1.5*2
ビタミンB12【μg】 5.0 3.2*2
葉酸【μg】 229 340*2
パントテン酸【mg】 5.12 5*3
ビタミンC【mg】 67 145*2
食塩相当量_g【g】 9.0 7*4
カリウム【mg】 1,949 2,200*3
カルシウム【mg】 463 650*2
マグネシウム【mg】 215 270-290*2
鉄【mg】 6.9 8.5-9.0*2
亜鉛【mg】 8.0 11*2
銅【mg】 1.07 1.3*2

*1 推定必要エネルギー量 身体活動レベルII、*2 推奨量、*3 目安量、*4 目標量
*食事摂取基準は当該年齢の基準に授乳婦の負荷量を加えたもの。
資料:厚生労働省 平成29年国民健康・栄養調査
厚生労働省 日本人の食事摂取基準(2015年版)

摂りすぎに注意したい栄養素

日本人は海藻を食べるため、他国の人々よりもたくさんのヨウ素を摂取しています(1)。ヨウ素は母乳中に移行するため、その分、授乳中は妊娠前よりも多くのヨウ素摂取が必要になりますが、過剰に摂りすぎると、母乳中のヨウ素濃度が極端に高くなり、乳児の甲状腺機能に影響を与える可能性がありますので、摂りすぎには注意しましょう。一方で、海藻の摂取を意図的に避け続けると、ヨウ素不足につながります(1)。からだによいからと言って特定の食品ばかりを食べ続けたり、逆に、からだに悪いからといって避け続けたりすると、必要な栄養素を適切に摂取することが難しくなります。多様な食品を組み合わせて、バランスよく食べることを心がけましょう。

文献
1.厚生労働省.日本人の食事摂取基準(2020年版)

無理なくからだを動かしましょう

身体活動・運動が多くの生活習慣病を予防・改善し、健康の維持や介護予防に効果があることは、よく知られています。さらに、座り続けることで健康障害が引き起こされることも分かってきています。妊娠中の身体活動・運動については、妊娠期における身体活動は早産及び低出生体重児のリスクを増加させない可能性が明らかになってきました。しかし、「どのような運動をどれだけ行ったら良いのか?」については、日本では、未だ明確な根拠はありません。
現在、日本人女性の1日の歩数が5,000歩未満の人の割合は増加しており、特に20歳代から50歳代においてその傾向が顕著です。また、運動習慣者の割合は減少しています。このように、日本人女性における運動不足は、重要な課題と言えます。
妊娠前の女性においては、「健康づくりのための身体活動基準 2013」や「アクティブガイド ―健康づくりのための身体活動指針―」に望ましい身体活動量が示されており、それらを参考にして、健康づくりの取り組みを行うことができます。
近年、マタニティビクスやヨガなど、妊娠中の運動プログラムがありますが、それぞれのプログラムの効果については、よく分かっていません。しかし、極端に運動不足であったり、運動をやりすぎることは、妊娠や出産に悪影響を及ぼす可能性があります。妊娠中に運動を始める場合は、医師や医療機関に相談の上、自身の体調に合わせて、無理なく実践してみましょう。

1日の歩数5000歩未満の者の割合の年次推移
(20歳以上、女性、年齢階級別)

1日の歩数5000歩未満の者の割合の年次推移(20歳以上、女性、年齢階級別)

出典:Takamiya T and Inoue S. Medicine & Science in Sports & Exercise. 51(9):1852-1859, 2019.

運動習慣者の割合の年次推移(20歳~64歳、女性)

運動習慣者の割合の年次推移(20歳~64歳、女性)

厚生労働省. 健康日本21(第二次)分析評価事業.現状値の年次推移

たばことお酒の害から赤ちゃんを守りましょう

喫煙や飲酒が胎児へ与える悪影響は大きいため、妊娠中は禁煙・禁酒が原則です。妊娠中の喫煙率や飲酒率は減少傾向にありますが、まだ0%には達していません。身近な人に喫煙や飲酒の習慣があると、妊婦や授乳婦自身の喫煙や飲酒行動も多くなります。妊婦・授乳婦だけでなく、周囲の人も自覚を持って禁煙・禁酒に協力しましょう。禁酒や禁煙がうまく行かないときは、専門の医療機関を受診してみましょう。
妊娠中の喫煙は、早産や前期破水、絨毛膜羊膜炎、常位胎盤早期?離、前置胎盤などの妊娠合併症や、子の口唇裂や口蓋裂、先天性心疾患、腹壁破裂増加、低体重や発育不全、死産や流産、乳児死亡率などの増加との関連が報告されています。また、妊婦自身の能動的な喫煙だけでなく妊婦や子の受動喫煙も、子の発育障害や出生時体重の低下、乳幼児突然死症候群リスクの増加との関連が懸念されていますので、育児中も継続した禁煙が重要です。
妊娠中の飲酒は、早産や妊娠高血圧症候群、癒着胎盤などのリスク増加に加え、子の発育不全や特異顔貌、多動学習障害を含む胎児性アルコール・スペクトラム障害を引き起こす可能性があります。胎児性アルコール・スペクトラム障害は、飲酒量や飲酒時期、摂取する酒の種類による安全域はないと考えられています。また、アルコールは母乳にも移行し、乳児の発達に影響を与えます。

妊娠中の喫煙本数と子の平均出生時体重

妊娠中の喫煙本数と子の平均出生時体重

資料:厚生労働省 平成22年度乳幼児身体発育調査

両親の喫煙による子の受動喫煙暴露スコア
(尿中ニコチン量)

両親の喫煙による子の受動喫煙暴露スコア

資料:Johansson et.al., Pediatrics (2004) 113(4):e291-295.

お母さんと赤ちゃんのからだと心のゆとりは、
周囲のあたたかいサポートから

お母さんと赤ちゃんのからだと心のゆとりは、家族や地域の方など周りの人々の助けや支えから生まれます。周囲の人は、お母さんの不安をやわらげ、母子ともに健やかな生活を送ることができるよう、協力しましょう。 妊娠期・授乳期は、妊娠・出産・育児の開始と、からだの急激な変化に加え、毎日の生活リズムや社会的環境も短期間で劇的に変化します。そのため、身体的にも精神的にも不安定になりがちです。全国16市1,900人を対象とした3~4か月児健康診査でのアンケート調査結果でも、多くの人が不安や負担を感じ、その内容は妊娠中から出産後までの各時期により大きく変化していることがわかります。周囲の人は、お母さんの気持ちをくみ取り、その時々に見合ったあたたかいサポートを心がけましょう。また、妊産婦さんは、日々の食事の準備や授乳・育児に負担や不安を感じたら、家族や周囲の人々に頼ったり相談したりしましょう。地域の母子センターやサークル、ミールキットや宅配サービスなども活用してみましょう。
疑問や不安を解消するために、インターネットやSNSなどを利用して情報を収集することが多いですが、中には不安を煽るだけのものや根拠のない偏った情報もたくさんあります。そのような情報に振り回されないように、公的機関から発信された情報や出典のしっかりした情報を収集するように心がけましょう。

妊娠・出産・産後期間に感じた不安や負担

妊娠・出産・産後期間に感じた不安や負担

資料:三菱東京UFJリサーチ&コンサルティング「妊産婦に対するメンタルヘルスケアのための保健・医療の連携体制に関する調査研究(平成29年度子ども・子育て支援推進調査研究事業)(2018)

出産や育児に不安や戸惑いを感じるときは、一人で悩まず、保健師や助産師などの専門職に相談してみましょう。

近年、少子化や時代的な家族関係の変化などにより、妊産婦にメンタルヘルスの問題が生じやすい環境が存在しています。多くの妊産婦が子どもを産み育てることに困難を感じており、妊娠中は約10%、産後は10~15%にうつ病がみられます(1)。医療機関と地方自治体の連携により、妊娠から産後まで切れ目のない支援の取り組みが開始されていますので(1)、出産や育児に不安や負担を感じたときには、ひとりで悩まずに、身近な人に相談してみましょう。

文献
1.公益社団法人日本産婦人科学会. 妊産婦メンタルヘルスケアマニュアル.産前・産後の支援のあり方に関する調査研究
(平成28年度子ども・子育て支援推進調査研究事業).2017
http://www.jaog.or.jp/wp/wp-content/uploads/2017/11/jaogmental_L.pdf

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