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研究の背景

これまでの日本の栄養政策により、国民の健康・栄養状態は改善していると考えられますが、 健康・栄養状態の改善がもたらす社会保障費抑制効果については、その評価方法が確立されていない状況です。

研究の目的

栄養政策の効果を社会保障費抑制の面から評価するために、 海外の先行研究等を参考にして、日本における栄養政策の医療経済学的な評価手法について基礎研究を行ことを目的としました。

研究方法

日本の栄養政策を医療経済学的に評価するためのシミュレーションモデルを作成するために以下の方法を用いました。

  1. 栄養政策の公衆衛生学的効果と社会保障費抑制効果の評価に関する国内・海外論文等のレビュー
  2. 栄養政策の公衆衛生学的効果と社会保障費抑制効果の評価に関する国内・海外論文等のレビュー結果の整理
  3. 国内の栄養政策の整理
  4. 海外の先行研究を基にシミュレーションモデルの作成及び検討
  5. 〇イギリスの減塩政策を日本で実施した場合の循環器疾患関連医療費の抑制効果について、マルコフモデルシミュレーションにより費用便益分析を行いました。
    〇システム・ダイナミクスを用いて「もし食塩摂取量が減少しなかったら」などの反事実状況を設定してのシミュレーションを行いました。

成果 ~この研究で分かったこと~

  1. 海外の先行研究

    栄養政策による循環代謝疾患の発症予防と社会保障費の抑制効果に関して、海外では将来予測的な経済評価を行った様々な研究が実施されていることが明らかになりました。
    <業績> 加藤浩樹, 池田奈由, 杉山雄大, 野村真利香, 由田克士, 西 信雄.
    海外における減塩政策による循環器疾患予防に関するシミュレーションモデルを用いた医療経済的評価研究の現況
    日本公衆衛生雑誌2021,68(9). doi:10.11236/jph.20-150

  2. 国内の減塩について

    日本の食塩摂取量の減少と同時に血圧の低下が確認されました。
    また、国内で実施されてきた減塩活動(都道府県レベル以上)について整理した結果、自治体主導に限らず関連団体・企業との連携も多くなっていること、自治体内では他部門との連携が積極的に行われていることが分かりました。また、自然に減塩に繋がるような食環境整備がポピュレーションアプローチの中心となっていることが考察されました。 減塩活動の評価については、結果評価、影響評価、取り組み全体の評価をどのような手段で行っていくのかが今後の課題であること分かりました。

  3. 世界の栄養政策  

    栄養不良の二重負荷の観点から海外の栄養政策の効果と評価手法についてレビューを行った結果、世界の多くの国・地域において栄養不良の二重負荷が問題となっていることが分かりました。 国連の持続可能な開発目標(SDGs)の達成目標に「あらゆる形態の栄養不良を終焉させる」が掲げられているものの、低栄養・過栄養に対する政策・介入は、それぞれが個別に独立して行われています。 そこで近年、複数の栄養不良形態に同時効果的な栄養政策・介入を行うという新しい概念であるDouble-duty actionsが提案されました。 しかしそれは、母子を対象とした政策・介入が比較的多く、我が国が従来から行ってきたような、より幅広い世代を対象とした栄養政策・介入からも検討されるべきであると考えられました。

    <業績> 野村真利香, 山口美輪, 西 信雄.
    栄養不良の二重負荷への介入としての栄養の二重債務行動に関する国際的動向
    栄養学雑誌 2022;80(1):60-68. doi:10.5264/eiyogakuzashi.80.60

  4. 日本の栄養政策の評価  

    日本の栄養政策の評価については、現在、システムダイナミクスやマルコフモデル、疾病費用法を用いて分析中です。

    報告書

    厚生労働科学研究費補助金(循環器疾患・糖尿病等生活習慣病対策総合研究事業)報告書

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