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骨格筋のインスリン感受性調節における血管内皮細胞のインスリンシグナルの役割の解明

【はじめに】
 食生活の欧米化や車の普及などによる運動不足といったいわゆる“ライフスタイルの変化”に伴い、個々人のインスリン抵抗性は増悪し、糖尿病のみならず、肥満・高血圧・脂質代謝異常などの動脈硬化症の危険因子が重積する、いわゆるメタボリックシンドロームを発症することになります。

その結果、我が国では心筋梗塞や脳梗塞といった動脈硬化性疾患の発症率が増加の一途をたどっています。

従ってインスリン抵抗性がメタボリックシンドロームや動脈硬化症を惹起するメカニズムを解明し、それに立脚した根本的治療法の確立が極めて重要です。

我々は以前より血管内皮細胞の主要なインスリン受容体基質(IRS)2に着目し、IRS2が欠損すると血管内皮機能が障害され、動脈硬化を来すことを報告しております。
今回は、血管内皮細胞のIRS2が糖代謝調節にどの程度寄与しているのかについて血管内皮特異的IRS2欠損(ETIRS2KO)マウスを用いて検討を行いました。

【血管内皮細胞のインスリンシグナルの糖代謝調節における役割】
 我々はまず血管内皮細胞の機能調節に重要であると考えられているeNOSの活性化について検討しました。
ETIRS2KOマウスは、血管内皮細胞においてインスリン刺激によるeNOSのリン酸化が有意に低下していました。

次にインスリン感受性についてグルコースクランプという方法で検討したところ、肝臓の糖産生はコントロールマウスと同程度でしたが、骨格筋における糖取り込みが有意に低下していました。インスリンが骨格筋に作用するためには、毛細血管から骨格筋の間質にイ
ンスリンが移行する必要があります。
そこで、毛細血管拡張能と間質のインスリン濃度について検討したところ、ETIRS2KOマウスではインスリン投与後の毛細血管拡張能障害に伴い、間質のインスリン濃度の増加に有意な障害が認められまし
た。
このことから、ETIRS2KOマウスでは、血管内皮細胞のIRS2欠損の結果、eNOSの活性化が低下し、毛細血管拡張能障害に伴う間質のインスリン濃度が低下することにより、骨格筋のインスリン依存性の糖取り込みが障害されたと考えられました(図左)。次に、より一般的なインスリン抵抗性モデル動物である高脂肪食誘導性肥満モデル
マウス(HFマウス)を用いて検討を行いました。

HFマウスではインスリン刺激によるeNOSの活性化がETIRS2KOマウスと同様有意に低下していました。さらにこのマウスではインスリン投与後の骨格筋における毛細血管拡張能障害に伴い間質のインスリン濃度の増加が有意に障害されていました。またこの結果と一致して、このマウスではインスリン依存性の骨格筋の糖取り込みが有意に低下しており、HFマウスでもETIRS2KOマウスと同様のメカニズムが存在すると考えられました(図右)。
【今後の方向性】
 以上の結果から、血管内皮細胞のeNOSの活性化を上昇させるような薬剤は、肥満や2型糖尿病患者で認められるインスリン依存性の骨格筋の糖取り込み障害を改善する可能性が示唆されます。
今後このような薬剤をETIRS2KOマウスやHFマウスに投与し、これらのマウスで認められたインスリン依存性の骨格筋の糖取り込み障害を改善するかどうか検討していきたいと考えております。【臨床栄養プログラム/栄養療法プロジェクト 窪田 哲也】



関連研究論文
1) Kubota T et al. Lack of insulin receptor substrate-2 causes
progressive neointima formation in response to vessel injury.
Circulation. 107: 3073-3080, 2003
2) Kubota N et al. Dynamic functional relay between insulin
receptor substrate 1 and 2 in hepatic insulin signaling during
fasting and feeding. Cell Metab. 8: 49-64, 2008


(当研究所機関誌「健康・栄養ニュース第33号」より転載)
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作成:2011/1/4 14:07:51 自動登録   更新:2011/1/4 15:06:22 自動登録   閲覧数:7743
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