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インスリン抵抗性の新たな生体指標としてのレチノール結合タンパク質(RBP4)


【はじめに】

 私たちはこれまでビタミンなどの低分子栄養素を中心に、栄養素の持つ新しい機能を解析することで生体指標としての可能性を探ってきました1?4)。今回もやはりビタミンに関係したテーマですが、ビタミンA(レチノール)そのものではなくその血中輸送タンパク質であるレチノール結合タンパク質(RBP4)に関する研究についてご紹介します。

 インスリン抵抗性は糖尿病をはじめとする生活習慣病の原因となります。インスリン抵抗性の特徴の一つとして、GLUT4とよばれる糖輸送タンパク質の発現が脂肪細胞特異的に低下することが知られています。Yangらは、脂肪細胞においてのみGLUT4遺伝子を欠損させたモデルマウスを作成し詳細に解析しました。その結果マウス脂肪細胞でRBP4遺伝子発現が上昇すること、それに伴って血中RBP4濃度が上昇することを見出しました。その後、肥満や糖尿病の患者の血中RBP4濃度が上昇するという報告が相次いでなされました。すなわちRBP4はこれらの病態を評価する新しい生体指標(バイオマーカー)となる可能性があります。しかしながらインスリン抵抗性がどうして脂肪細胞のRBP4遺伝子発現を上昇させるかは明らかになっていません。そこで私たちはその分子メカニズムを明らかにすることを目的に研究をはじめました。


【対象および方法・結果】

 まず脂肪細胞の代表的な細胞株である3T3-L1細胞のGLUT4を、レンチウイルスを使って恒常的に低下(ノックダウン)させた細胞を作成しました。この細胞にRBP4遺伝子の発現を調節していると考えられる遺伝子プロモーター領域を含んだルシフェラーゼレポータープラスミドを導入し、GLUT4ノックダウン依存的に転写を促進するDNA配列を同定することに成功しました。遺伝子工学的手法を用いてこの配列に結合する因子を検索したところ、PSMB1というタンパク質を同定しました。PSMB1は細胞内タンパク質の分解に関与するプロテアソームとよばれる巨大タンパク質の構成サブユニットの一つです。詳細に解析すると、PSMB1は確かにRBP4プロモーター配列に特異的に結合し、転写を促進する転写因子であることが分かりました。またGLUT4ノックダウン依存的に細胞質から核への移行が促進されることが明らかになり、これが転写活性化の原因の一つであることが示唆されました(投稿中)。


【今後の方向性】

 今回の研究では、プロテアソームサブユニットの一つがRBP4の遺伝子発現に関与するという興味ある結果をもたらしました。プロテアソームによって特定の転写因子が分解されることで遺伝子発現が制御されることは古くから知られていますが、転写制御に直接作用する事実はあまり知られていません。今後はPSMB1の核移行のメカニズムを明らかにし、RBP4がインスリン抵抗性の新たな生体指標として活用できる科学的根拠を提供したいと考えています。【栄養疫学プログラム/生体指標プロジェクト】




関連研究論文

1) Yamauchi J., Iwamoto T., Kida S., Masushige S., Yamada
K., Esashi T. Tocopherol associated protein(TAP), is a ligand-dependent transcriptional activator..Biochem Biophys Res Commun. 285. 2. 295-299,2001

2) Yamauchi J. The establishment of a HeLa cell-line demonstrating rapid mitogen-activated protein kinase phosphorylation in response to 1α, 25-dihydroxyvitamin D3 by stable transfection of chick skeletal muscle cDNA library. Biosci.Biotechnol.Biochem. 70., 1., 312-315, 2006

3) Inoue E. and Yamauchi J. AMP-Activated Protein Kinase
Regulates PEPCK Gene Expression by Direct Phosphorylation of a Novel Zinc Finger Transcription Factor. Biochem Biophys Res Commun 351., 793-799, 2006

4) Inoue E. Ishimi Y. and Yamauchi J. Diff erential Regulation of Extracellular Signal-related Kinase Phosphorylation by Vitamin D3 Analogs. Biosci. Biotechnol. Biochem. 72., 1., 246-249, 2008

ニュースレター「健康・栄養ニュース」第8巻3号(通巻30号)平成21年12月15日発行から転載
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作成:2009/12/22 16:00:15 自動登録   更新:2009/12/22 16:13:19 自動登録   閲覧数:4789
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