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生活習慣病予防のための最大酸素摂取量基準値を満たす四肢筋量の推定

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背景と目的
 生活習慣病を予防するために、体力の一つの要素である全身持久力(長時間粘り強く運動を継続する能力であり最大酸素摂取量で評価される)を高い水準に維持することが重要であることがいくつかの生理学的研究で明らかとなっています。

 厚生労働省は健康づくりのための運動基準2006において、生活習慣病発症のリスクを減少させるために推奨される最大酸素摂取量の基準値を示しました。最大酸素摂取量は、心臓の機能や大きさと腕や脚の筋量に強く依存します。したがって四肢筋量を高く保つことは、最大酸素摂取量を維持するために重要であり、ひいては生活習慣病を予防することに繋がると考えられます。さらに四肢筋量を維持することは,高齢者の自立度を維持するうえで重要であり、介護のリスクを減らす効果もあります。

 この研究では、日本人女性の最大酸素摂取量基準値を維持するのに必要な四肢筋量を明らかにすることを目的としました。

方 法
 20歳から69歳の合計403人の日本の女性を検討群と確認群にランダムに割り付けました。全ての被験者の最大酸素摂取量は自転車エルゴメーターを用いた漸増負荷テストを疲労困憊に至るまで実施させ(約8-12分間)、その間の呼気ガスをダグラスバッグに採取して分析・算出しました。

 全身の体組成を二重放射線吸収法(DEXA)で定量し、四肢の筋量を測定しました。その四肢筋量を体重で除して100をかけた値を四肢筋量指数としました。

 検討群を用いて、最大酸素摂取量を年齢と四肢筋量指数で重回帰分析し、最大酸素摂取量の推定式を作成しました。この推定式の妥当性を確認群により再検討し妥当性が検証された後に、全ての403名の全データを用いて再度推定式を算出しました。この式から、運動基準2006で示された最大酸素摂取量の年齢別基準値を予測する四肢筋量指数を算出しました。

結 果
 全ての被験者は喫煙習慣がなく、生活習慣病に罹患していない健康な女性であることが問診と血液データならびに血圧測定から明らかとなり、全ての被験者の特徴に関して検討群と確認群との間に有差は見られませんでした。

 検討群での最大酸素摂取量の推定式は以下の通りでした。最大酸素摂取量(mL・kg‒1・min-1)=?0.135×年齢(歳)+1.315×四肢筋量指数(%)?0.799、重回帰決定係数と標準推定誤差は0.522と5.4mL・kg-1・min‒1でした。

 この式を用いた確認群の最大酸素摂取量の推定値や分散は、検討群との間に有意差がありませんでしたので、全ての被験者を用いて再度、推定式を算出しました。最終的に最大酸素摂取量=?0.131×年齢+1.344×四肢筋量指数?2.035という推定式を求めることが出来ました。この式に、日本人女性の年齢別最大酸素摂取量基準値である20歳代33、30歳代32、40歳代31、50歳代29、60歳代28(mL・kg-1・min-1)を代入すると、大変興味深いことに全ての世代の四肢筋量指数が28.3?28.9%までの間に収まることがわかりました。

結論と課題
 この研究成果から、日本人女性の生活習慣病予防のための最大酸素摂取量基準値を維持するのに必要な四肢筋量は体重の28.5%であることが示唆されました(図参照)。この研究は日本人成人女性を対象とした研究であるため、今後男性や様々な年齢に応用するためには、適切な被験者群を用いた推定式作成のための研究が必要となります。

 また、この四肢筋量指数28.5%の妥当性をさらに検証するためには、この基準値を満たす者と満たさない者で将来の生活習慣病発症やそれによる死亡率がどの程度違いのかに関する前向き研究も今後必要でしょう。【宮地元彦、宮谷昌枝】



出典:Miyatani M, Kawano H, Masani K, Gando Y, Yamamoto K, Tanimoto M, Oh T, Usui C, Sanada K, Higuchi M, Tabata I, Miyachi M. Required muscle mass for preventing lifestyle-related diseases in Japanese women. BMC Public Health. 2008, 8: 291.

ニュースレター「健康・栄養ニュース」第7巻3号(通巻26号)平成21年1月15日発行から転載


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作成:2009/1/26 15:28:10 自動登録   更新:2009/1/26 21:59:51 自動登録   閲覧数:11319
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