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身体活動後の代謝亢進が1日当たりのエネルギー消費量に及ぼす影響

 運動(身体活動)をすると、運動中にエネルギーが使われるだけでなく、運動後も身体を回復させるためにエネルギーが消費されます。この現象はEPOC(Excess Post-exercise Oxygen Consumption)と呼ばれています。激しい運動を長時間行なった場合には、EPOCが数十時間も続くことが報告されており、肥満の予防・改善に対しても、寄与しているのではないかと考えられています。

 ところで、1日のエネルギー消費量(TEE)は、基礎代謝や運動・家事などの身体活動等で構成されています。そこで、アメリカ・カナダの食事摂取基準2005では、身体活動状況を反映させたTEEの推定式を提示しています。その推定式では、その人が行なった身体活動量(AEE)に応じて、EPOCによるエネルギー消費量を15%加算することとしています。しかしながら、EPOC分として15%加算することを決定したエビデンスとなる研究をみると、その研究デザインから考えて、過剰に加算していることが考えられました。このことは1日に必要なエネルギー量を過大に評価することになり、必要以上のエネルギー摂取、ひいては肥満につながります。

 そこで、エネルギー代謝測定装置として最も精度の高い方法の一つである、ヒューマンカロリメーターを用いて、一般的な日常生活状況をモデルし、1日の身体活動によってどのくらいのEPOCが生じるのかを検討しました。対象者は、活動が少ない日、中強度活動が多い日(M-day)、高強度活動が多い日(V-day)の合計3回(1回24時間)ヒューマンカロリメーターに入室し、TEEを測定しました。

 その結果、M-dayとV-dayのいずれにおいても、EPOCによるTEEの増加はそれほど大きくありませんでした(表1)。これをAEEに対するEPOCの割合であらわすと、平均で約5?6%になり、15%の加算は明らかに過大評価しているといえます。ただし、持久性体力の指標である最大酸素摂取量とV-dayで生じたEPOCとの間に関係性が認められ、高強度活動の多い日では体力の低いものほどEPOCが多く生じている傾向にありました。

 今回の結果では、体力がふつう以上の人にとって、日常生活環境下での身体活動状況ではEPOCによるエネルギー消費の増加はあまり期待できないことが考えられました。しかしながら、体力の低い肥満者などが日常生活を活発にすることで、EPOCによるエネルギー消費量の増加も期待できそうなので、なるだけ強めの身体活動をできるだけ多く確保するように心がけることが肥満の予防には重要ではないかと考えられます。【大河原一憲、田中茂穂、高田和子、田畑泉】


出典:Ohkawara K, Tanaka S, Ishikawa-Takata K, Tabata I. Twenty-four-hour analysis of elevated energy expenditure after physical activity in a metabolic chamber: models of daily total energy expenditure. Am J Clin Nutr (in press)

ニュースレター「健康・栄養ニュース」第7巻1号(通巻24号)平成20年6月15日発行から転載


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筋トレをすると基礎代謝があがり、寝ていてもエネルギーを消費すると聞くが、どのくらいの頻度、強度でやれば効果があるのか。筋トレで劇的に消費エネルギーが増えるのか疑問。

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作成:2008/9/29 10:51:20 自動登録   更新:2009/2/9 16:37:55 自動登録   閲覧数:11890
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