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体脂肪になりにくい油って本当?

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油っこい食事は太る?

 近ごろは、スーパーマーケットでもたくさんの種類の油を目にします。特に最近注目されているのが<太りにくい油>。調理用の油だけでなくサプリメントとしても数多く販売されています。これって本当?と思っている方も多いはずです。<太りにくい油>とは一体どの様な油なのでしょうか?

 油は脂肪酸という単位から出来ています。この脂肪酸には様々な種類があり、人間の体に必須なもの、必須ではないけれども体の機能を調節するために必要なもの等があります。また、体脂肪として蓄積されにくい性質の脂肪酸もあり、<太りにくい油>として販売されている商品にはこのような脂肪酸が含まれています。しかし、自然界にごく微量しか存在しない脂肪酸を大量に添加したり、構造をちょっと変化させた脂肪酸を加えている商品もあります。中には本当に体脂肪を減少させるかどうかハッキリと証明されていない商品や安全性が分かっていない商品も販売されています。我々はこのような脂肪酸が本当に体脂肪を減少させるのか、どのくらいの量を食べれば良いのか、食べ過ぎた場合には健康に悪い影響を与えないのかどうか研究しています。

 今回、実験に用いたのは自然界にも若干存在する(牛肉や羊肉、乳製品などに含まれる)共役リノール酸(CLA)という脂肪酸です。マウスにCLAを食べさせたところ、体脂肪が明らかに減少しました。内臓脂肪も皮下脂肪もどちらもCLAの摂取量に依存して減少し、肥満の改善に有効である事が分かりました。

 しかし、CLAを大過剰に摂取させると体脂肪が極端に減少し、体に必要な脂肪までなくなってしまう結果、脂肪肝や糖尿病が発症してしまいました(CLA摂取量1.3g/体重1kg、サプリメントの約70倍量)。少量のCLA摂取では脂肪肝や糖尿病は全く発症せずに体脂肪が減少したので(CLA摂取量0.13g/体重1kg、サプリメントの約7倍量)、肥満を安全に改善するにはCLAを少量摂取することが重要だとわかりました。

 また、大量にCLAを摂取してしまった場合でも、CLAの摂取と同時に脂肪分の多い食事をする事によって脂肪肝や糖尿病の発症は抑えられる事も発見しました。これはCLAを肥満予防法として使用する場合には、サプリメントより食用油に添加する方が望ましい事を示しています。

 さらに、なぜCLAによって脂肪肝が引き起こされるのかメカニズムを調べたところ、CLAは脂肪を合成する遺伝子群(SREBP?1とその標的遺伝子)に直接働きかけ、肝臓の脂肪合成を高めている事もわかりました。

 実験で用いたCLA量はサプリメントとして摂取する7倍?70倍量ですので、通常の摂取量では大きな問題はないと思われます。しかし、CLAのように特定の遺伝子を制御している栄養素を日常的に多量に摂取するには注意が必要です。<太りにくい油>として販売されている商品の作用メカニズムはそれぞれ異なりますが、脂肪は体に必要な構成成分ですので、どのような方法を用いた場合でも極端に体脂肪を減少させないよう注意する必要があります。【笠岡(坪山)宜代】



出典:Increasing the amount of fat in a conjugated linoleic acid-supplemented diet reduces lipodystrophy in mice. Tusboyama-Kasaoka N, Miyazaki H, Kasaoka S, Ezaki O : J. Nutr. : 133: 1793-99, 2003.

ニュースレター「健康・栄養ニュース」第2巻3号(通巻6号)平成15年12月15日発行から転載
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作成:2008/7/14 16:29:34 自動登録   更新:2009/2/9 11:08:57 自動登録   閲覧数:4598
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