Welcome GUEST
重要なお知らせ
現在リニューアル中のため、これは閲覧のみの旧バージョンです。質問や検索はできませんのでご注意下さい。
トップ  >  研究紹介  >  水泳は、日々、遺伝子に働きかけ体力を向上させる
水泳は、日々、遺伝子に働きかけ体力を向上させる

■関連リンク(こちらもご参考にどうぞ)■
運動による糖代謝促進へのPGC-1αの関与

 最近の調査によりますと、これからやってみたい運動スポーツの上位に必ず水泳が登場します。今回は、この皆さんがやってみたい水泳運動・トレーニングにより体力がつく“からくり”を、すこし、つっこんで説明してみたいと思います。

 水泳トレーニングをすると段々と、持久力がついてきます。これは運動トレーニングにより、皆さんの肉(筋肉を指します。肉といっても脂肪ではありません)にあるミトコンドリアが増えるからです。

 ミトコンドリアとは、呼吸により肺から取り入れられた酸素を使って多くのエネルギーを作る細胞内小器官で、疲労物質である乳酸をつくることなく、運動を続ける能力つまり、持久力の根幹をなすものです。
 
 運動をするとミトコンドリアが増えるということは40年も前に報告されました。しかし、どうして運動するとミトコンドリアが増えるのか、つまりその“からくり”は不明でしたが、最近、その少しずつわかってきました。

 ミトコンドリアは、蛋白質の塊です。蛋白質を増やすには、対応した遺伝子に働きかける必要があります。遺伝子はDNAの中にあり、DNAからmRNA(メッセンジャー・アールエヌエイ)が作られ、さらに RNAから多くのアミノ酸の連鎖である蛋白質が合成されます。

 最近、私たちは、PGC?1αという遺伝子転写補助因子に注目しています。転写補助因子とは、DNAからmRNAを作る(DNAの配列(鋳型)から、正確にmRNAの配列に移していくので転写といいます)際に必要です。DNAからmRNAを写すプリンターと遺伝子をつなぐプリンタケーブル(皆さんがお使いになっているコンピュータとプリンター(難しくいうと基本転写因子)をつなぐ線)のようなものです。このケーブルが増えると、情報が早くつながり(ブロードバンドのようなもの)、たくさんmRNAができ、さらにはその産物であるミトコンドリアという蛋白質が増えるわけです。このプリンタケーブルみたいな物質が、水泳運動で使われた筋肉(滑車上筋)でのみ増加することを、ネズミを対象に発見しました(図)。

 つまり、運動して持久力が向上する、あるいは運動してミトコンドリアが増えるというのは、日々の水泳トレーニング中に常に、皆さんの遺伝子が活性化されているということを意味しています。遺伝子とかDNAとかmRNAとか、あまり身近な言葉ではないですが、実は皆様の体の中特に、水泳トレーニングで使う筋肉の中で、実際に起こっていることに関係している言葉です。

 最近では、運動・トレーニングによりの脳の遺伝子にも働きかけが増えるということも報告されています。皆さんも、もっとも行いたいスポーツである水泳を実際にやってみましょう。筋肉と脳の遺伝子が活性化されますよ。【田畑 泉】




出典:Terada S, I Tabata. Effects of acute bouts of running and swimming exercise on PGC-1 α protein expression in rat epitrochlearis and soleus muscle. American Journal of Physiology (Endocrinology and Metabolism) 286 : E208-E216, 2004.

ニュースレター「健康・栄養ニュース」第3巻2号(通巻9号)平成16年9月15日発行から転載


■関連リンク(こちらもご参考にどうぞ)■
運動による糖代謝促進へのPGC-1αの関与
プリンタ用画面
友達に伝える
投票数:7 平均点:7.14
作成:2008/7/14 10:12:03 自動登録   更新:2009/2/9 10:15:11 自動登録   閲覧数:9914
前
わが国の妊婦・授乳婦の栄養摂取状況について
カテゴリートップ
研究紹介
次
長期腎透析患者に多発する腎臓がんに対するコネキシン32遺伝子の抑制作用

メインメニュー