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長期腎透析患者に多発する腎臓がんに対するコネキシン32遺伝子の抑制作用

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 現在の日本において、糖尿病性腎不全等の増加により、年間20万人の人が新たに腎透析を余儀なくされており、また、腎不全の唯一の治療法である腎臓移植もドナー等の問題があり、なかなか進んでいないのが現状です。

 その結果、腎不全の患者が長期にわたり腎透析をうけざるを得ない状況下にあります。事実、透析歴10年以上の長期透析患者が全体の20%以上を占めるに至たりました。

 最近、このような長期の腎透析患者におけるいくつかの合併症が問題になってきています。その中で、特に問題になっているのが長期の腎透析の結果、後天的腎嚢胞性腎疾患を合併し、その多発する大小の嚢胞に混じって腎臓がんを合併することです。

 最近の統計では、日本における長期透析患者、88,534人における腎臓がん発生率は、健常人の41倍にものぼることが報告されました。従って、この長期透析患者から発生する腎臓がんの発生過程を解析し、その発生抑制に関与するがん抑制遺伝子を特定し、その機能を解明することはこの腎がんの発生制御や治療面から重要と考えられます。

 透析患者から発生する腎臓がんは、透析期間が3,4年以上になるとそのほとんどが前がん病変と考えられる後天的腎嚢胞性腎疾患を合併し、しかも透析期間が長くなるにつれて癌化した異型化嚢胞が多く認められるようになります。

 従って、この異型化嚢胞の発生の抑制に関与する遺伝子が有効な腎臓がん抑制遺伝子として働いていると推測し、我々は東京女子医科大学の協力を得て、手術で摘出した透析患者さんの腎臓がんの組織を詳しく解析した結果、発がん初期にがん抑制遺伝子の中で特異的に発現抑制される遺伝子として、コネキシン(Cx)32遺伝子を特定しました。

 さらに、Cx32遺伝子の腎臓がんに対するがん抑制機能を確認するために、人腎臓がん由来のガン細胞株に人Cx32遺伝子を組み込んだ発現ベクターを発現させた細胞株を樹立し、検討しました。

 その結果、Cx32遺伝子はin vitroにおける細胞増殖、腫瘍形成能、細胞浸潤能およびinv ivoにおける腫瘍形成能や血管新生能、検討した腫瘍形成に関係するすべてのパラメーターを有意に抑制し、Cx32が人腎臓がんにたいしがん抑制
遺伝子として機能することが確認されました。

 この遺伝子はギャップ(GJ)結合を形成して、このGJを介して分子量1,200以下の親水性分子が重要なシグナルとして細胞間でやり取りされ、隣接する細胞内環境の恒常性を維持することが知られており、この機能を介してCx遺伝子は細胞の分化誘導を行い、がん抑制遺伝子として作用していることが報告されています。従って、今後、透析患者に多発する腎臓がんの発生初期におけるCx32遺伝子の発現抑制機構を解明し、その発現抑制を防ぐ方法を確立することが、この腎臓がんの発生リスクを軽減することになると思われます。【矢野友啓】



出典:Yano T, et al. : Tumor-suppressive effect of connexin 32 in renal cell carcinoma from maintenance hemodialysis patients. Kidney International 63 : 381,2003.

ニュースレター「健康・栄養ニュース」第3巻2号(通巻9号)平成16年9月15日発行から転載


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作成:2008/7/14 10:52:05 自動登録   更新:2009/2/9 10:23:33 自動登録   閲覧数:7338
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