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抗酸化食品の摂取で免疫老化が防げるか?

 今年7月に発表された平成15年簡易生命表によれば、日本人の平均寿命は現在、男性78.6歳、女性85.33歳で世界でも最長寿国となっています。

 世界各国の平均寿命の表をみてみると、いずれの国においても、男性よりも女性の方が長生きしています。世界各国において寿命の性差が起こっているのはなぜでしょうか?

 死因については、様々な因子(生物学的、社会学的、環境的他)が関連しているため、この現象の理由について、単一の理由で述べることは不可能だろうと思われますが、人の健康維持に免疫機能の発現が必須で、平均寿命の延長に感染症による死亡率の低下が大きく関わっていることから、この平均寿命の男女差について免疫機能の観点から考えてみたいと思います。

 免疫は、自己と非自己の識別から始まり、非自己の排泄に収束します。この場合、非自己は、例えば感染症の場合、感染源(ウィルスや細菌)や感染した細胞であり、このほか体内で発生したがんも同様に見なされます。この認識がきちんとできないと、免疫機構が働かず様々な疾患に罹患し、治癒が困難になります。生物の生死を左右する大きな因子として免疫能力があげられている理由がここにあります。

 免疫能力は生体内のリンパ球によって発現されるのですが、特にTリンパ球が重要な役割を担っています。Tリンパ球は、胸腺で分化・増殖して、末梢血・リンパ節に移行することになります。

 分化・成熟の場である胸腺は、成長期において大きくなりますが、成熟後加齢と共に萎縮していき、その萎縮が免疫機能の低下につながっていると考えられています。その際、胸腺の萎縮が始まる時期には性差があり、明らかに男性の方が早い年齢から現れます。このことから、男性の方が、免疫機能の低下が女性に比べ早く起こることが推測されます。

 胸腺の萎縮は生体の老化現象の一つとしてとらえることができ、男性の方が免疫の老化が早く始まることになります。胸腺細胞を含む細胞の老化の原因としての有力な候補の一つに細胞内活性酸素が考えられています。活性酸素の除去及び活性酸素に対する抗酸化能力が生体の老化や生活習慣病等の発症にも重要な役割をしているといわれています。

 生体内での抗酸化能力を担っているのは、抗酸化酵素と抗酸化成分ですが、いずれも食品中の様々な栄養成分によって調節することが可能になってきます。抗酸化酵素は活性発現にセレンや亜鉛、マンガン等の金属が必要であり、また細胞内外の抗酸化に関与する栄養素を摂取することによって、抗酸化能力を高めることが可能になってきます。

 従って、抗老化因子として食品中の抗酸化成分が注目されていますが、最近、細胞内の抗酸化能力が免疫バランスをも司っているとの報告もされ、抗酸化成分の免疫機能調節能についても期待されています。

 そして、これら抗酸化食品の適切な摂取により、胸腺の萎縮が抑制され、免疫機能保持が可能になり、男性の早期免疫機能低下の遅延や、ひいては女性と同等の平均寿命も夢でなくなるそんな時代がいずれ来るかもしれません。【餐場直美】



ニュースレター「健康・栄養ニュース」第3巻3号(通巻10号)平成16年12月15日発行から転載
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作成:2008/7/7 10:59:13 自動登録   更新:2009/2/10 14:26:59 自動登録   閲覧数:7323
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