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幅広いがん抑制機能を持つコネキシン遺伝子

 がん細胞は非常に不均一であり、多様な形質を保持しており、そのことががんの予防・治療を困難にしている最大の要因である。

 臨床的には同一のがん組織の中でも抗癌剤がよく効く部分と抵抗性を有する部分があり、後者の部分ががんの再発・浸潤・転移に関与し、がんの完全治癒を困難にしています。従って、この悪性度の高いがん細胞の生存・増殖をいかに制御するかががんの二次予防に重要になってきます。

 一般的に、がんの悪性度は高度に分化した正常細胞からの脱分化度で規定できるので、悪性度の高いがん細胞の生存・増殖の効率よく制御するには、正常組織の分化を維持するために必要な遺伝子群の機能を回復・維持することが重要になってきます。

 私どもは、正常組織の分化を維持するために必要な遺伝子群の中で、ギャップ結合を構成し、隣接する細胞間で分子量1300以下の親水性分子の細胞内濃度を均一化する事で細胞間の恒常性を維持して、細胞の分化機能を保つコネキシン遺伝子に着目し、そのがん抑制機能を使った新たな癌予防・治療法の構築の可能性を考えました。

 幸いなことに、1998年10月から20ヶ月間、当時コネキシン遺伝子のがん抑制機能解析を精力的に行っていたリヨン(フランス)にある世界保健機構国際癌研究センター多段階発癌研究部に滞在し、コネキシン遺伝子に関する研究をする機会を得て、コネキシン遺伝子が持つ多様ながん抑制機能の一面を知ることができ、その後の研究の展開をはかることができました。

 当初、この遺伝子はギャップ結合を構成し、その機能に依存したがん細胞の増殖抑制機能のみが着目されていましたが、その後の解析でギャップ結合の形成とは無関係に、細胞接着機能や細胞骨格の形成を制御し、正常細胞の接着機能を維持したり、各正常細胞の機能に必要な蛋白の発現・機能維持に重要であるといった正常細胞の分化に必要不可欠な機能維持にコネキシン遺伝子が幅広く貢献していることが明らかになってきました。

 また、最近の研究から、転移性を示す悪性度が高いがん細胞に対しても、浸潤・転移に関係するシグナル系を網羅的に制御し、その浸潤・転移を抑制する可能性が示唆され、コネキシン遺伝子のがん抑制機能ががん予防・治療に幅広く役立つことが明らかとなってきました。

 将来的には、各がん別に抑制的に働くコネキシン遺伝子の機能回復を標的にしたがん予防・治療法が構築される可能性があり、私どもの研究グループがこの構築に何らかの貢献ができれば幸いです。【矢野友啓】



ニュースレター「健康・栄養ニュース」第4巻1号(通巻12号)平成17年6月15日発行から転載
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作成:2008/7/4 17:21:58 自動登録   更新:2009/2/10 14:25:18 自動登録   閲覧数:7746
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