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「食事調査」をめぐって

 人々の食生活や栄養をより良いものにするための実地活動において、「栄養アセスメント」の重要性がことさら強調されるようになってきている。

 栄養アセスメントにはさまざまな対象及びアプローチの仕方があるが、対人サービスにおいては目の前の個人が、また公衆衛生においては地域の人たち等が、「何をどれだけ食べているのか」を定量的に把握・評価する「食事調査」は、一連のアセスメントの“スタート”としてたいへん重要なものである。これまでも、多くの実践や研究の場で、管理栄養士等を中心とした多くの専門家が「食事調査」を行ってきた。約60年の歴史を誇る国民(健康・)栄養調査もしかりである。

 習慣的な栄養素等の摂取量と疾病との関係を明らかにすることを目的とした「栄養疫学」においては、大規模集団に対しても実施可能な自己記入式の調査票(特に、食物摂取頻度調査票;Food Frequency Questionnaire)の開発が各国で進められてきた。わが国でも、この分野における研究の進展は近年著しい。

 一方、ある特定の日(多くは前日)に「何をどれだけ食べたか」を個々の食品単位で詳細に把握する、記録法や思い出し法といった調査については、調査を行う(面接、確認、コードづけ、データ処理、解釈等)側に様々なスキルが要求される。

 どれほどのことが必要とされるかは、実際にやってみないと決してわからないだろう。そして、このようなスキルは、テキスト(教科書)に簡単に収められ、短時間で教えることのできるようなものではない。医学部の教育においては、丁度「内科診断学」に相当するようなものだろう。

 さて、私たちの研究所では、国民(健康・)栄養調査で行われる「食事調査」(注:この調査においては「栄養摂取状況調査」と呼ばれる)について、特に最近5、6年間、細かな手法等の開発や調査員のスキルの向上に関する検討を行ってきた。その中で、実際に調査を担当される方々のご協力・ご意見をいただきながら、現場でのプレテスト等を繰り返してきた。そのことにより、“実地での感覚”から離れてしまい、“研究者の理屈”になりはしていないかを、常に心がけるようにしている。

 「食事調査」に関する研究や手法の開発、スキルの向上、管理栄養士養成課程における学生教育等、まだまだやるべき事は多そうである。

 特に、教育という点では、管理栄養士の養成課程においても、十分な教育・訓練が行われていない施設もあるように聞く。さて、実際に患者を診た経験のない者が「内科診断学」の講義を行うことは無い。「食事調査」についても、実際に多くの経験を持つ管理栄養士等が中心となって、その領域の研究や教育が大きく発展することを期待している。研究所においても、実地の管理栄養士等と連携・共同しながら、さらにこの領域の研究を進めていきたい。【吉池信男】



ニュースレター「健康・栄養ニュース」第3巻4号(通巻11号)平成17年3月15日発行から転載
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作成:2008/7/3 15:03:51 自動登録   更新:2009/2/10 14:21:18 自動登録   閲覧数:10709
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