Welcome GUEST
重要なお知らせ
現在リニューアル中のため、これは閲覧のみの旧バージョンです。質問や検索はできませんのでご注意下さい。
トップ  >  健康・栄養研究雑感  >  地域色豊かな調査を
地域色豊かな調査を

 全国津々浦々とはいきませんが、調査研究などで色々な地方に行って、地元住民の方達と接する機会を持つと、その地域の方言や特有の表現に触れることが多くあります。

 沖縄県での調査の時、対象者の方に出す挨拶状の文面を協力してくれる市町村役場の方にチェックしてもらったところ、「初夏の候?」という書き出しが「うりずんの候?」と書き直してありました。「うりずん」というのは、沖縄地方で旧暦の2月?3月頃、動植物が成長し田畑の土も肥え物が潤う事を言い、季節を表す言葉として使われるようです。

 地域性豊かで美しい言葉があるものだなあと思い、次に東北の農村地域で同様の挨拶状を出す時に、役場の方に「この地方で使われる季節の言葉がありますか」とお聞きしたところ、今度は「さなぶりの季節」という言葉を教えてもらいました。「さなぶり(早苗饗)」は田植えの終わりに田の神を送る祭りの事だそうで、現在でもさなぶりの行事をする地域もあるようです。

 食事調査でも、同じようにその地方特有の言葉は当然出現します。よく知られている所では、沖縄で「そばを食べた」と調査対象者が言っても、ほとんどの場合、それは日本そばのことではなく、小麦粉を主原料とする沖縄そばを指します。豆腐も島豆腐(沖縄豆腐)で、一般の木綿豆腐とは成分がかなり違います。豆腐1丁の大きさも、都心では300?350gに対して、沖縄では1?程度が一般的です。最近ではインターネットで全国展開されているそば屋や豆腐屋などが見られますので、沖縄でも本州と同じそばや木綿豆腐が食されている場合もあるでしょうから、逆の注意も必要になってくるでしょう。

 野菜の名前なども地域によってそれぞれで、かぼちゃなどは、なんばんうり、ぼうぶら、なんきん、とうなす、などと呼び方がたくさんあるようです。私の生まれ育った関西では、さやいんげんの事を「三度豆」、とうもろこしの事を「なんば」と呼んでいました。

 豆腐加工品では、刻んだ野菜や昆布などを入れて油で揚げた丸い製品を「ひろうす(飛竜頭?ひりょうず)」と言っていたため、私は幼い頃、テレビや本に出てくるおでん種の「がんもどき」はいったいどんな食べ物なのだろうと考えていました。料理名となると「にぬき(茹で卵)」や「まむし(鰻丼)」など、東京では通じない呼称がもっと多いのかも知れません。

 最近の若い世代では、どんどん言葉が標準語化しているそうですが、先日関西で中学生の食事聞き取り調査をしていた時に、「おだいこのたいたん(大根の煮物)」というセリフが飛び出しました。関西出身ではない聞き取り役の栄養士さんは一瞬目を白黒させていましたが、私は方言が中学生の日常生活にもまだきちんと根付いていることを微笑ましく思いながら、通訳を買って出ました。

 食生活を調査する時には、その地域特有の食品・料理の情報を含めて事前リサーチをしっかりとした上で、調査票を作り実施計画を考える事はもちろんですが、栄養士さんをはじめとする地元の人達の協力を得て、食生活におけるお国言葉や郷土料理の豊かさを大切にした調査をする事を、常に心がけたいと思います。【森田明美】



ニュースレター「健康・栄養ニュース」第5巻3号(通巻18号)平成18年12月15日発行から転載
プリンタ用画面
友達に伝える
投票数:4 平均点:5.00
作成:2008/6/30 14:30:50 自動登録   更新:2009/2/10 14:13:08 自動登録   閲覧数:4021
前
疾病予防のための新しいQOL(quality of life)評価法の必要性
カテゴリートップ
健康・栄養研究雑感
次
ペットコーナーで健康と栄養の研究を考える?

メインメニュー