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肝臓におけるDGATの働き

?内臓肥満や脂肪肝とのかかわり?
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 肝臓ではトリアシルグリセロール(TG)が合成され、TGが肝臓にたまると脂肪肝になります。また、肝臓では超低密度リポタンパク質(VLDL)を分泌していますが、このVLDLの構成要素であるTG(VLDL-TG)も肝臓で合成しています。

 これらのTGを合成している酵素はAcyl CoA:diacylglycerol acyltransferase(DGAT)で、TG合成の最終段階でアシルCoAとジアシルグリセロールからTGを合成しています。肝臓には、DGAT1とDGAT2の2種類の酵素が存在しています。

 ところで、VLDL-TGは肝臓の細胞中の小胞体(ER)で作られます。なぜなら、TGはERの膜を通過できないからです。したがって、DGATには肝臓細胞の細胞質でTGを合成する機能と、ERでTGを合成する機能があります。そこで、マウスの肝臓に特異的にDGAT1あるいはDGAT2を過剰に発現させて解析を行い、これらの機能とDGAT1及びDGAT2の役割について調べました。


 その結果、DGAT1を肝臓に過剰発現させたマウスでは、DGAT活性が増加し、血中のVLDLTG濃度が増加し、1時間あたりのVLDL分泌量も増加していました。

 また、肝臓組織切片を電子顕微鏡で観察すると、ERが膨張していて、VLDLを分泌するためにさかんにTGや他のVLDL構成要素を合成している様子がうかがえました。このマウスは脂肪肝にはなりませんでした。したがって、DGAT1はERでTGを合成する機能を持っていることがわかりました。

 さらに、このマウスでは、皮下脂肪重量には変化がありませんでしたが、内臓脂肪重量(副睾丸周囲脂肪組織、子宮傍脂肪組織)が増加していました。

 脂肪細胞の表面には、VLDLレセプター(VLDLR)が存在しており、増加したVLDLをVLDLRがキャッチし、VLDL中のTGを脂肪細胞が取り込みます。それゆえ、内臓脂肪重量が増加したのだと考えられるのですが、では、なぜ皮下脂肪重量は増加しなかったのでしょうか。

 内臓脂肪細胞と皮下脂肪細胞を普通のマウスから調製し、VLDLRの発現について調べたところ、内蔵脂肪細胞には皮下脂肪細胞の約4倍のVLDLRが発現していることがわかりました。内臓脂肪組織の方が皮下脂肪組織より多くのVLDLRがあるために、DGAT1を肝臓に過剰発現させたマウスでは、増加したVLDL-TGを内蔵脂肪組織が皮下脂肪組織より多く取り込み、その結果、内蔵脂肪組織重量だけ増加したのです。

 一方、DGAT2を肝臓に過剰発現させたマウスは、DGAT活性が増加し、脂肪肝になりましたが、VLDL-TGは変化しませんでした。したがって、DGAT2は細胞質でTGを合成する機能を持っていることがわかりました。

 以上の結果から、まず、DGAT1の働きを抑えることで、VLDLの分泌を抑制して内蔵脂肪が増えるのを抑え、肥満を防ぐことが、また、DGAT2の働きを抑えることで、脂肪肝を防ぐことが可能になると考えられます。

 普段の食生活でDGATの働きをコントロールして肥満や脂肪肝にならずに健康を維持できるようにしたいものです。【山崎 聖美】



出典:Yamazaki T, Sasaki E, Kakinuma C, Yano T, Miura S, Ezaki O. Increased Very Low Density Lipoprotein secretion and gonadal fat mass in mice overexpressing liver DGAT1. J Biol Chem. 280:21506-21514, 2005

ニュースレター「健康・栄養ニュース」第4巻1号(通巻12号)平成17年6月15日発行から転載

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作成:2008/6/30 10:53:35 自動登録   更新:2009/2/6 16:26:00 自動登録   閲覧数:21834
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