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転写共役因子p300/CBP?associated factor(PCAF)とPCAF?Bは、子宮における正常なエストロジェン作用に必要である


 エストロジェンは、生殖腺・骨・脳組織を主な標的組織とする代表的な女性ステロイドホルモンであり、その生理作用は、細胞の核内に存在するエストロジェン受容体を介した標的遺伝子の転写制御により発揮されます。

 またこれらの転写制御には、エストロジェン受容体だけでなく複数の転写共役因子が関与し、複合体を形成することで機能していることが明らかになってきています。

 転写共役因子には、すべての転写に必要な基本転写因子と、DNA結合性転写因子をタンパク?タンパク相互作用により仲介する役割があり、中でもPCAFやPCAF?Bと呼ばれる転写共役因子は、エストロジェンを含む様々なステロイドホルモン受容体の転写共役活性化因子としても働くことが明らかにされています。

 このようにエストロジェンの核内受容体を介した生理作用は、核内受容体と各複合体タンパク質との協同作用により発揮されることが細胞レベルにおいて示唆されていますが、いまだ個体レベルでの解析が少ないのが現状です。

 そこで本研究では、個体レベルでの作用機序を明らかにするため、エストロジェン受容体の転写共役因子の一つであるPCAFおよびPCAF?Bの遺伝子欠損マウスを用いて、これらの遺伝子欠損がエストロジェン作用に及ぼす影響について調べました。

 生体内における正確なエストロジェン作用を評価するため、雌マウスにエストロジェン産生器官である卵巣の摘出手術を行い、内因性のエストロジェンを除去後、一定量のエストロジェンを3週間皮下投与し、子宮重量回復効果を検討しました。

 その結果、コントロールマウスではエストロジェン投与による子宮重量の回復が見られたのに対し、PCAFおよびPCAF?B遺伝子欠損マウスでは、子宮重量の正常な回復が認められませんでした。

 また、エストロジェンの標的遺伝子であるc?fos遺伝子の発現について検討した結果、PCAFおよびPCAF?B遺伝子欠損マウスでは、エストロジェン投与によるc?fos遺伝子発現の上昇は認められませんでした。

 これらのことから、子宮におけるエストロジェン受容体を介した正常なエストロジェン作用には、転写共役因子であるPCAFおよびPCAF?Bが重要な役割を持つことが示唆されました。

 近年、ダイオキシンをはじめとする多くの環境ホルモン(内分泌かく乱物質)が、生物の生殖や発育に深刻な影響を及ぼしていることが問題となっています。環境ホルモンは、非常に微量でも生体内における正常なホルモン作用をかく乱させる働きがあり、特にエストロジェンに似た作用が最も重大な問題であるとされています。

 これらの環境ホルモンの多くは、食品や容器などを通して経口
的に摂取されます。微量の環境ホルモンであっても、体内に蓄積することから、長期的な曝露に対する人体への影響が懸念されています。食品は生命維持に必要な栄養素源として非常に重要であり、今後、栄養学的観点からも研究を進めていく必要があると思います。

 なお本研究は、戦略的創造研究推進事業(CREST)「内分泌かく乱物質」の一環として行われました。【井上絵里奈】


出典:Inoue E, Hanai M, Yamada K, Esashi T, Yamauchi J : Transcriptional coactivator p300 /CBP?associated factor and p300/CBP?associa ted factor type B are required for normal estrogen res ponse of the mouse uterus. Biosci. Biotechnol. Bioc hem. 68(10): 2209?2211, 2004.

ニュースレター「健康・栄養ニュース」第3巻4号(通巻11号)平成17年3月15日発行から転載
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作成:2008/6/30 11:40:46 自動登録   更新:2009/2/6 16:27:24 自動登録   閲覧数:5263
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