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シトラスアウランチウムの肥満抑制、体脂肪蓄積抑制効果と安全性の検討

 シトラスアウランチウム(Citrus Aurantium)は日本では橙(ダイダイ)として、古くからお正月の飾りや、生薬として親しまれてきました。

 Citrusはレモンの木に対する古い呼び名でミカンの仲間を、Aurantiumは赤みを帯びた黄色である橙黄色をそれぞれラテン語で意味しています。また、「サワーオレンジ」「ビターオレンジ」などとも呼ばれています。

 近年では痩身を目的としたいわゆる健康食品として、シトラスアウランチウムとその有効成分と考えられているシネフリン(Synephrine)を含む製品が流通しています。その理由はβアドレナリン受容体を介したシネフリンの体脂肪減少効果への期待にあります。

 受容体(レセプター)とは細胞膜上あるいは細胞内に存在し、ホルモンや光など外から細胞に作用する因子と反応して、細胞機能に変化を生じさせる働きがあります。

 アドレナリン受容体はその名のとおりアドレナリン、ノルアドレナリンというホルモンと結合し活性化するものです。アドレナリン受容体にはα受容体とβ受容体があります。α受容体は原則として興奮性の効果を、β受容体は基本的に抑制性の効果をもたらします。α受容体、β受容体は更にα1、α2、β1、β2、β3受容体に分けられ、それぞれ様々な作用を持っています。

 βアドレナリン受容体と脂肪分解との関連については、哺乳類の白色脂肪細胞を用いた研究が多く報告されています。その中でもβ3アドレナリン受容体は脂肪分解を促進させる作用と、熱生産を高める作用が強いとの報告があります。シトラスアウランチウムの有効成分であるシネフリンは、このβ3アドレナリン受容体を刺激し、活性化させると言われています。そのため、体脂肪減少効果が期待され、痩身を目的としたダイエット製品に多く使用されているのです。

 確かにヒトではカフェインなど他の刺激性物質とともにシネフリンを摂取した場合に体脂肪減少効果がみられるという報告が1つあります。しかし、この報告以外にシネフリンの体脂肪減少効果についてヒトを対象とした研究は見あたりません。さらに、ラットにシトラスアウランチウムを繰り返し摂取させると心臓毒性が現れ、投与量に依存して致死率が増加するという報告もあります。

 2004年5月、ヘルスカナダ(カナダ厚生省)は特定のシネフリン含有製品を使用しないよう消費者に対して警告を出し、その輸入を禁止しました(https://www.hc-sc.gc.ca/english/protection/warnings/2004/2004_30.htm)。

 その理由として、この製品がシネフリンの効果を増強する高レベルのカフェインおよび他の興奮性・刺激性物質を含有しており、死亡を含む重度の有害作用を引き起こす可能性があるためとしています。

 特に、心臓病、高血圧、甲状腺疾患、糖尿病、前立腺肥大、不安症、副腎に腫瘍を持つ人への注意が喚起されています。薬剤との相互作用にも注意を払う必要があります。


 このように、シネフリンによる効果の確証が非常に少ないにもかかわらず、ダイエット効果を標榜する製品が多く流通していることから、シネフリンを含有するシトラスアウランチウムの体脂肪蓄積抑制効果とその安全性についてラットを用いて検討を行いました。

 その結果、シトラスアウランチウムには有効性としての脂肪蓄積抑制効果が無いわけではありませんが、非常に小さいといえます。

 しかし、一般的なシトラスアウランチウムのサプリメント製品に表示されている指示量に従うならば、そして、茶やコーヒーに含まれるカフェイン、カテキンなどの刺激物との同時、過剰摂取を回避すれば、安全上の問題は少ないと考えられます。

 今後、カフェインおよび他の興奮性・刺激性物質とシトラスアウランチウムの併用摂取についても検討する予定にしています。【久保和弘】



出典:Suppressive Effect of Citrus Aurantium Against Body Fat Accumulation and Its Safety Kubo K、Kiyose C、Ogino S、Saito M:: J. Clin. Biochem. Nutr.: 36: 11-17, 2005. 2


ニュースレター「健康・栄養ニュース」第4巻1号(通巻12号)平成17年6月15日発行から転載
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作成:2008/6/26 16:40:14 自動登録   更新:2009/2/6 16:21:24 自動登録   閲覧数:6747
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