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食物繊維入り経管栄養が、寝たきり高齢患者の大便重量を増加させた

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 経鼻胃管栄養は、経口的に食物を摂取できないが中心静脈栄養法をとる程でもない患者さんに使われています。また、中心静脈栄養法のような高いレベルでの無菌操作も必要無く、普通の食べ物も使え、長期間寝たきりになった高齢の患者さんに適しています。

 食物繊維は色々な生理学的な働きで注目されていますが、水に溶けるもの(可溶性)と水に溶けないもの(不溶性)とに分ける事が出来ます。この2つは生理学的にも栄養学的にも違った働きがあり、小腸での消化には主に可溶性が影響し、大腸の調整や大便の排泄には主に不溶性が影響しています。

 食物繊維を入れた流動食の目的として、多く併発する下痢の減少や除去と大便の体積増加によって大腸の環境を適切に保つ事があります。また、最近では可溶性の食物繊維であるオリゴ糖は、腸内細菌叢をより有益なものに変えることが知られ、プレバイオテックスとしても注目されています。

 そこで、食物繊維として不溶性のセルロースと可溶性のオリゴ糖(lafinose)を組み合わせて流動食中に加え、血液検査値と排便状況を指標として流動食中の食物繊維の有効性を寝たきりの患者さんを被験者として検討しました。

 男性9名(平均年齢75.0歳;64歳?89歳)と女性13名(平均年齢77.5歳;64歳?89歳)の高齢の患者さんに、食物繊維を入れた流動食を4週間摂取してもらいました。

 実験期間中に添加した食物繊維による経鼻胃管のつまり等の問題は患者さんから報告されませんでした。

 食物繊維は栄養素の吸収を阻害する事が知られていますが、男性も女性も流動食を摂取して15日目以降では体重の増加傾向がみられました。さらに、血液検査は食物繊維を入れた流動食を摂取する直前と摂取から3週間後に行いましたが、血清中の総コレステロール、HDLコレステロール、中性脂肪、及び遊離脂肪酸の検査値は変化していませんでした。また、総タンパク、アルブミン、ヘモグロビン、カルシウム、鉄等、他の血液検査項目にも摂取前と3週間摂取後の間に変化は認められませんでした。

 大便の重量は食物繊維を入れた流動食を摂取してから増加し、男性では摂取前に対して平均値で1週目に4.1g、2週目に32.0g、3週目に44.5g、及び4週目に28.6gと増加し、摂取前の重量と2週目、3週目、及び4週目の重量の間に有意差(全てp<0.05)が認められました。

 一方、女性では摂取前に対して平均値で1週目8.3g、2週目に
8.8g、3週目に30.0g、及び4週目に13.9gと増加し、摂取前の重量と3週目の重量の間に有意差(p<0.05)が認められました。

 食物繊維を入れた流動食の目的とした下痢の減少や除去については、本研究の被験者の中には調査期間前に下痢をしていた者がいないために明かにする事が出来ませんでした。一方、添加した食物繊維による栄養素の吸収阻害は、高齢者が栄養不足に陥り易い事から注目されますが、この研究においては若干体重が増加傾向を示したほどで栄養状態に影響は見られませんでした。

 この研究では、寝たきりの高齢の患者さんにセルロースとオリゴ糖を組み合わせて流動食中に加えた場合に栄養状態に影響なく、大便重量の増加だけが認められましたが、さらに長期のコントロールされた実験によって流動食中の食物繊維の有効性を検討する必要があると考えられます。【熊江 隆】


出典:Nakaji S, Umeda T, Kumae T, Ohta S, Totsuka M, Sato K, Sugawara K, Fukuda S: A tube-fed liquid formula diet containing dietary fiber increased stool weight in bed-ridden elderly patients. Nutrition 20 (11-12):955-960, 2004

ニュースレター「健康・栄養ニュース」第4巻1号(通巻12号)平成17年6月15日発行から転載


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作成:2008/6/26 16:30:16 自動登録   更新:2009/2/6 15:33:08 自動登録   閲覧数:13096
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