大豆イソフラボンの成長期マウスの骨形成に対する作用には性差がある
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○高脂肪食を摂った骨粗鬆症モデルラットに関連した遺伝子発現を経て、イソフラボンは脂質代謝を制御する
○大豆食品は脳卒中に役立つ
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大豆イソフラボンはフラボノイドの一種で主にマメ科植物に含まれています。
私達が日常的に食物から摂取しているイソフラボンとしては、大豆由来のものが最も多いのですが、同じマメ科の葛根にもイソフラボンが含まれています。
イソフラボンは弱い女性ホルモン様作用を示すことから、植物性エストロゲンとよばれ、現在、骨代謝調節、更年期症状緩和、抗酸化、チロシンキナーゼ阻害、トポイソメラーゼ阻害、アロマターゼ阻害作用などが報告されています。また、大豆イソフラボンは、骨の健康が気になる方のための特定保健用食品の関与成分として厚生労働省の許可を受けています。
私たちはこれまでに、大豆イソフラボンが弱い女性ホルモン様作用を示すことに着目し、女性ホルモンが欠乏している骨粗鬆症モデル動物や閉経後女性を対象とした試験において、イソフラボンが骨からのカルシウムの溶出を防ぐことを報告してきました。ところが、成長期の骨に対するイソフラボンの作用についてはまだ十分な科学的根拠がありません。そこで、私たちは成長期の雌雄マウスを用いて、大豆イソフラボン摂取が生体に及ぼす影響を、主に骨形成を中心に調べました(文献1)。
その結果、生後5週齢の幼若雄マウスに高用量のイソフラボン(ダイゼインまたはゲニステイン)を混餌して(75 mg/kg体重)6週間飼育すると、全身、腰椎、大腿骨の骨密度が対照群に比べて有意に高値を示すこと、また、大腿骨における骨形成率も亢進していることが分かりました(上図)。一方、成長期の雌マウスでは、雄とは異なり、ダイゼイン摂取群の全身および大腿骨の骨密度とその骨形成率は、対照群に比べて有意に低いことが分かりました(下図)。
これらのことから、成長期の動物の骨形成に対する高用量の大豆イソフラボンの作用には、性差があることがわかりました。これは成長期の雌では、高用量の大豆イソフラボンが女性ホルモンの働きを抑えたためと推察されますが、詳しい作用機序についてはさらに検討が必要です。
なお、高用量のイソフラボン摂取により、マウスの血中イソフラボン濃度は、日本人成人の約3倍(ダイゼイン)?20倍(エクオール)まで上昇し、また、胸腺重量が雌雄ともに対照群に比べて有意に低値を示しました。
ところで、ヒトでは乳アレルギーの乳幼児は、主に大豆由来の調整粉乳を利用しますが、そのときの血中イソフラボン濃度は、日本人成人の血中イソフラボン濃度のおよそ10倍であることから、以前から健康への影響が懸念されていました。
しかし、大豆由来調整粉乳で育った20?34歳の成人男女を対象とした米国の追跡調査では、30以上の検査項目において通常の調整粉乳で育った成人との差は認められないと報告されました。
ヒトはマウスとは異なり、ダイゼインの代謝に関して個体特性があることがわかっていますので(文献2)、イソフラボンの生体利用性には種差もあると考えられます。
今後はヒトにおけるイソフラボンの生体利用性に関して、さらなる科学的根拠の蓄積が望まれます。【石見佳子】
<出典>
文献1 Fujioka M, Sudo Y, Okumura M, Wu J, Uehara M, Takeda K, Hosokawa Y, Yamada K, Ikegami S, Ishimi Y :Differential effects of isoflavones on bone formation in growing male and female mice. Metabolism 56: 1142-1148,2007
文献2 Wu J, Oka J, Ezaki J, Ohtomo T, Ueno T, Uchiyama S, Toda T, Uehara M, Ishimi Y: Possible role of equol status in the effects of isoflavone on bone and fat mass in postmenopausal Japanese women: a double-blind, randomized, controlled trial. Menopause 14: 866-874, 2007
ニュースレター「健康・栄養ニュース」第6巻3号(通巻22号)平成19年12月15日発行から転載
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私達が日常的に食物から摂取しているイソフラボンとしては、大豆由来のものが最も多いのですが、同じマメ科の葛根にもイソフラボンが含まれています。
イソフラボンは弱い女性ホルモン様作用を示すことから、植物性エストロゲンとよばれ、現在、骨代謝調節、更年期症状緩和、抗酸化、チロシンキナーゼ阻害、トポイソメラーゼ阻害、アロマターゼ阻害作用などが報告されています。また、大豆イソフラボンは、骨の健康が気になる方のための特定保健用食品の関与成分として厚生労働省の許可を受けています。
私たちはこれまでに、大豆イソフラボンが弱い女性ホルモン様作用を示すことに着目し、女性ホルモンが欠乏している骨粗鬆症モデル動物や閉経後女性を対象とした試験において、イソフラボンが骨からのカルシウムの溶出を防ぐことを報告してきました。ところが、成長期の骨に対するイソフラボンの作用についてはまだ十分な科学的根拠がありません。そこで、私たちは成長期の雌雄マウスを用いて、大豆イソフラボン摂取が生体に及ぼす影響を、主に骨形成を中心に調べました(文献1)。
その結果、生後5週齢の幼若雄マウスに高用量のイソフラボン(ダイゼインまたはゲニステイン)を混餌して(75 mg/kg体重)6週間飼育すると、全身、腰椎、大腿骨の骨密度が対照群に比べて有意に高値を示すこと、また、大腿骨における骨形成率も亢進していることが分かりました(上図)。一方、成長期の雌マウスでは、雄とは異なり、ダイゼイン摂取群の全身および大腿骨の骨密度とその骨形成率は、対照群に比べて有意に低いことが分かりました(下図)。
これらのことから、成長期の動物の骨形成に対する高用量の大豆イソフラボンの作用には、性差があることがわかりました。これは成長期の雌では、高用量の大豆イソフラボンが女性ホルモンの働きを抑えたためと推察されますが、詳しい作用機序についてはさらに検討が必要です。
なお、高用量のイソフラボン摂取により、マウスの血中イソフラボン濃度は、日本人成人の約3倍(ダイゼイン)?20倍(エクオール)まで上昇し、また、胸腺重量が雌雄ともに対照群に比べて有意に低値を示しました。
ところで、ヒトでは乳アレルギーの乳幼児は、主に大豆由来の調整粉乳を利用しますが、そのときの血中イソフラボン濃度は、日本人成人の血中イソフラボン濃度のおよそ10倍であることから、以前から健康への影響が懸念されていました。
しかし、大豆由来調整粉乳で育った20?34歳の成人男女を対象とした米国の追跡調査では、30以上の検査項目において通常の調整粉乳で育った成人との差は認められないと報告されました。
ヒトはマウスとは異なり、ダイゼインの代謝に関して個体特性があることがわかっていますので(文献2)、イソフラボンの生体利用性には種差もあると考えられます。
今後はヒトにおけるイソフラボンの生体利用性に関して、さらなる科学的根拠の蓄積が望まれます。【石見佳子】
<出典>
文献1 Fujioka M, Sudo Y, Okumura M, Wu J, Uehara M, Takeda K, Hosokawa Y, Yamada K, Ikegami S, Ishimi Y :Differential effects of isoflavones on bone formation in growing male and female mice. Metabolism 56: 1142-1148,2007
文献2 Wu J, Oka J, Ezaki J, Ohtomo T, Ueno T, Uchiyama S, Toda T, Uehara M, Ishimi Y: Possible role of equol status in the effects of isoflavone on bone and fat mass in postmenopausal Japanese women: a double-blind, randomized, controlled trial. Menopause 14: 866-874, 2007
ニュースレター「健康・栄養ニュース」第6巻3号(通巻22号)平成19年12月15日発行から転載
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作成:2008/6/12 13:57:19 自動登録
更新:2009/2/2 9:59:19 自動登録
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マウスを用いた葉酸の摂取量等の研究 |
研究紹介 |
メタボリックの男性とそうでない男性の運動習慣の比較 |