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低葉酸状態では骨髄染色体損傷が惹起こされやすいが、組織中の葉酸濃度が飽和する異常の摂取量ではさらなる防御効果は期待できない

?葉酸の摂取量と体内濃度、骨髄染色体損傷度の関連を検討したマウスの研究?


 葉酸には胎児の神経管閉鎖障害の予防、ならびに動脈硬化の危険因子となる血漿ホモシステイン濃度の増加の抑制作用があります。また、サプリメントに添加されている葉酸の形態(プテロイルモノグルタミン酸、folic acid)は、通常の食品に含まれている形態よりも吸収が良いことが知られています。

 しかし、摂取すればするほど良い効果だけが得られるわけではなく、過剰に摂取すると有害な影響が出るかもしれません。

 実際に、サプリメントから葉酸を過剰摂取すると乳がんのリスクが高まるといった研究論文もあります(Am J Clin Nutr, 2006, 83,895-904)。

 では、安全で効果的な葉酸の摂取量はどのように設定すればよいのでしょうか。

 その答えは、葉酸の体内濃度を踏まえて有効性を評価する研究から得られると考えられます。

 葉酸はDNAの合成や修復に関与していることから、我々は葉酸の染色体の安定化作用に焦点を当て、その体内濃度と染色体損傷の防御作用の関連をマウスの実験系で検討しました。

 具体的には、低葉酸食(葉酸無添加)、基本食(Folic acid 2mg/kg含有)、高葉酸食(Folic acid 8mg/kgまたは40mg/kg含有)で4 週間飼育したマウスにX線全身照射あるいはベンゼンを経口投与して骨髄の染色体損傷を誘発し、組織の葉酸濃度と骨髄染色体損傷の関連を調べました。X線の全身照射ならびにベンゼン投与は、骨髄に明確な染色体損傷を誘発することができる実験モデルです。

 その結果、X線照射やベンゼン投与により染色体損傷を誘発すると、低葉酸食群では染色体損傷が起きやすく、基本食群と高葉酸食群では差は認められませんでした。

 組織の葉酸濃度は、低葉酸食群では基本食群の約40%にまで低下しましたが、高葉酸食群と基本食群に差はなく、体内葉酸レベルを反映する血漿ホモシステイン濃度についても、低葉酸食群では高かったのですが、基本食群と高葉酸群で差はありませんでした。

 高葉酸食の葉酸濃度は基本食の4 倍から20倍も高いのに、組織中の葉酸濃度や血漿ホモシステイン濃度に差がなかったことは、基本食に含まれている葉酸の摂取レベルで、組織中の葉酸濃度がほぼ飽和していることを示しています。

 低葉酸状態で染色体損傷が誘発されやすいメカニズムには、DNAの損傷や修復に対する葉酸のメチル基の供与作用が関連していると考えられます。

 以上の研究から、低葉酸状態では染色体損傷が起きやすいのですが、染色体損傷を抑制する葉酸の必要量は、組織濃度が飽和する量で十分であり、過剰摂取してもさらなる抑制効果は期待できないと考えられます。

 このマウスの研究結果をヒトに直接適用することはできません。ただし、葉酸の摂取が少ない人が葉酸のサプリメンを適宜利用するのは良いでしょうが、組織濃度が飽和する以上の量を過剰摂取する意味はないと言えるでしょう。【梅垣敬三、遠藤 香】




<出典>

文献1 Endoh K, Murakami M, Araki R, Maruyama C, Umegaki K.: Low folate status increases chromosomal damage by X-ray irradiation. Int J Radiat Biol. 82: 223-30, 2006.

文献2 Endoh K, Murakami M, Sugiyama T, Taki Y, Umegaki K.: Low folate status enhanced benzeneinduced cytogenetic damage in bone marrow of mice: a relationship between dietary intake and tissue levels of folate. Nutr. Cancer 59: 99-105, 2007.

ニュースレター「健康・栄養ニュース」第6巻4号(通巻23号)平成20年3月15日発行から転載


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作成:2008/6/12 11:09:43 自動登録   更新:2009/2/5 13:30:36 自動登録   閲覧数:5834
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