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魚油は砂糖過剰摂取による脂肪肝を予防するが、
脂肪(サフラワー油)過剰摂取による脂肪肝をさらに悪化させる

ddYマウスを用いた研究から
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 砂糖や脂肪の摂り過ぎは、非アルコール性脂肪肝(NAFLD)の原因となります。

 NAFLDは運動や食事といった生活習慣の改善によってよくなる場合があり良性疾患と軽く考えられていますが、脂肪性肝炎にいたる場合があるだけでなく、メタボリックシンドローム発症にも関係しています。

 さらに近年、日本人中年男性を対象とした研究から、NAFLDはII型糖尿病の危険因子であると報告され、臨床的に重要な疾患として認識されるようになってきました。

 そこで、NAFLDの発症原因とその成因に基づく予防法を明らかにし、さらに、NAFLDを予防あるいは改善できる食品成分を見出すために、まず、砂糖過剰摂取でも脂肪過剰摂取でも脂肪肝を発症するモデルマウスを作製しました。

 マウスは系統によっては脂肪肝を発症しにくいものもありましたが、ddYマウスは、砂糖水を飲ませた場合も、脂肪(サフラワー油)が多い高脂肪食を食べさせた場合も脂肪肝を発症しました。

 次に、このモデルマウスを使って、血中TG濃度を下げることや肝臓での新規脂肪合成を抑えることで知られる魚油の効果について調べました。

 砂糖過剰摂取による脂肪肝では脂肪酸合成を行う遺伝子の転写因子SREBP-1cやグルコース代謝や脂質合成を調節する遺伝子の転写因子ChREBPの活性化が認められました。ところが、魚油を少量( 4 % wt/wt)添加すると、これらの転写因子の活性化が抑制され、砂糖による脂肪肝が完全に予防されました(図1)。

 一方、サフラワー油過剰摂取による脂肪肝では転写因子PPARγの発現量増加及び活性化が認められ、脂肪酸の肝臓への流入をつかさどるCD36の発現量も増加していました。しかし、驚いたことに、サフラワー油に魚油を少し(4 % wt/wt) 加えると、更にPPARγの発現量増加及び活性化が生じ、CD36も増加し、脂肪肝がさらに悪化していました(図1)。

 血中のインスリン濃度及びグルコース濃度の解析から、このPPARγの更なる発現量増加は魚油により軽度のインスリン抵抗性が生じたためと考えられました。最後に、脂肪をサフラワー油ではなく、バターに換えた場合どうなるか検討しました。バターでも脂肪肝を発症し、肝臓では転写因子SREBP-1cとPPARγの発現量増加及び活性化が認められました。そして、バターに魚油を少し( 4 % wt/wt)加えたところ、興味深いことに、魚油はこれらの転写因子の活性化を抑制したものの脂肪肝のレベルは変化しませんでした。

 血中TG濃度が高いため肝臓への脂肪の流入を抑制できず、脂肪肝を予防することができなかったためと考えられました。

 以上の研究結果から、脂肪肝の成因により脂肪肝の予防法が異なることがわかりました。脂肪酸合成亢進による脂肪肝(例えば、砂糖の取りすぎによる脂肪肝)に対しては、魚油は非常に効果的に予防しますが、脂肪酸流入増加による脂肪肝(高脂肪食)に対しては、効果がないことが示されました。【山崎 聖美】



出典:Yamazaki T, Nakamori A, Sasaki E, Wada S. Ezaki O. “Fish Oil Prevents Sucrose-Induced Fatty Liver but Exacerbates High-Safflower Oil-Induced Fatty Liver in ddY Mice” Hepatology 46:1779-1790, 2007.

ニュースレター「健康・栄養ニュース」第6巻4号(通巻23号)平成20年3月15日発行から転載


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作成:2008/6/12 10:39:57 自動登録   更新:2009/1/27 10:30:38 自動登録   閲覧数:18651
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