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有酸素性運動と内臓脂肪の減少における量?反応関係

 メタボリックシンドロームは、肥満、特に内臓脂肪の蓄積を源流として、動脈硬化の危険因子が集積している状態とされています。そのため、メタボリックシンドロームの改善には、過剰に蓄積した内臓脂肪を減少させることが重要です。

 有酸素性運動は、改善の有効な手段の一つであるといわれており、その効果はヒトを対象としたいくつかの介入試験においても認められています。

 Ross and Janssen(2001)は、身体活動(運動)量と内臓脂肪の減少との関係性についてレビューを行ないましたが、両者をともに定量化した介入試験の報告数が少なかったことから、量–反応関係が認められるか否かについての結論を出すまでに至りませんでした。

 その後、運動量が多いものなどを含めて、両者の関係を検討した介入試験の報告が複数追加されました。そこで、有酸素性運動と内臓脂肪の減少における量-反応関係について、システマティックレビューにより検討しました。

 1 )有酸素性運動(身体活動)のみによる介入を実施、2 )CT法又はMRI法を用いて内臓脂肪量を評価している、などの条件を満たす論文を採択した結果、9 つのRCT試験(13群)と7 つの非RCT試験( 8群)が選ばれ、計21群のうち6 群が代謝関連性疾患(糖尿病や高脂血症)を有していました。

 これらを対象に、週当たりの内臓脂肪の減少率と運動量(メッツ・時/週)との相関関係をみたところ、代謝関連性疾患群を有していない群に限定すると、有意な相関係数が得られました。

 つまり、代謝関連性疾患を有さない、肥満者においては内臓脂肪の減少と運動との間に量反応関係のあることが認められたことになります。また、有意な内臓脂肪の減少は、約6 メッツ・時/週で有意な減少のみられたMiyatake etal.(2002)を除いて、約10メッツ・時で実施された複数の群より観察されていたことから、内臓脂肪を有意に減少させるには、少なくとも週当たり10メッツ・時以上の運動を加える必要のあることが示唆されました。

 これは、例えば、30分間の速歩(約4 メッツ)を週5 日実施することに相当します( 4メッツ×0.5時間/日× 5 日/週=10メッツ・時/週)。

 また、体重の減少率と内臓脂肪の減少率との間に非常に高い相関関係が得られ、有酸素性運動によって体重と内臓脂肪は1 次直線的に減少していくことが認められました。

 「健康づくりのための運動指針2006(エクササイズガイド2006)」において、内臓脂肪を確実に減少させるには少なくとも週に10エクササイズ(10メッツ・時に相当)以上の運動を加える必要があると述べられています。

 これは、本研究に基づいたものであり、国内外を通じて、メタボリックシンドロームを解消するために必要な運動量を提唱した初めての基準といえます。国内では、平成20年度から生活習慣病対策のための特定保健指導が新たに始まり、該当者への運動指導はエクササイズガイド2006をベースにして行なわれます。これらの施策が成功すれば、メタボリックシンドロームを予防するモデルケースとして、世界的に注目されるでしょう。

 そのためには、メタボリックシンドロームを解消するために必
要な週10エクササイズがどのような過程で導き出され、どの程度の目安となるのかを、現場の指導者に理解してもらうことも重要だと考えています。
【田畑 泉、田中茂穂、大河原一憲】



Ohkawara K, Tanaka S, Miyachi M, Ishikawa-Takata K, Tabata I. A dose-response relation between aerobic exercise and visceral fat reduction: systematic review of clinical trials, Int. J. Obes., 31, 1786-97, 2007.

ニュースレター「健康・栄養ニュース」第6巻14号(通巻23号)平成20年3月15日発行から転載

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作成:2008/6/12 10:27:06 自動登録   更新:2009/2/2 11:04:46 自動登録   閲覧数:20748
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