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二重標識水法により測定した健康な日本人の身体活動レベル


 私たちは1 日にどのくらいのエネルギーを消費しているのでしょうか。

 健康管理や減量、体力の維持・増進など様々な目的から、自分の1 日のエネルギー消費量を知りたいと思うことが多くあります。

 この研究では、自由に生活している状態のエネルギー消費量を今の時点では最も正確に測定できる二重標識水法という方法を使って、20?59歳の健康な男女150名の1 日のエネルギー消費量を測定しました。
 
 今回の対象者は、肥満者や食事療法中の人、妊産婦・授乳婦を除き、また高強度の職業に従事している方を除いています。

 二重標識水法という方法は、水の構成成分である水素と酸素の安定同位体を使った測定方法です。分子量が水素は1 、酸素は16のものが大部分を占めますが、通常の水でも水素では分子量が2 、酸素では17と18のものが微量ですが、含まれています。これらは、中性子数だけが異なりますが、安定な状態にあって、形を変えることがありません。分子量が多いものは、質量が重くなるので、海洋深層水のように深いところにある水では、その濃度が高くなり、高山の水では薄くなります。

 二重標識水法では、分子量が2 の水素と分子量が18の酸素を通常の水より多く含む水を飲んでいただきます。この水は、体の中の水分に均一に混ざっていきます。その後、身体活動量の多い人では、酸素を多く使うため、体の水分中の分子量が18の酸素の濃度が速く薄くなります。その原理を使用して身体活動量を評価する方法です。

 対象になった方は、定期的に尿をとるだけですので、大きな負担なく普段どおりの生活をすることができます。

 この方法で日本人のエネルギー消費量を測定したところ、男性では10.78±1.67MJ/日( 2,576±399kcal/日)、女性では8.37±1.30MJ/日(2,000±311kcal/日)となりました。

 1 日のエネルギー消費量は、年齢が高くなるとわずかに減少する傾向にありましたが、統計的に有意な差ではありませんでした。

 身体活動レベルの指標として、1 日のエネルギー消費量を基礎代謝量で除したPAL(physicalactivity level)という指標がよく使われます。この指標は1 日のエネルギー消費量を基礎代謝量の倍数で示すことで、性や年齢による差を考慮して身体活動のレベルを示すことができる指標です。PALでみると、男性では平均1.72±0.22、女性では1.72±0.30となり、男女差、年齢差はまったくなくなりました。

 このデータは、現在、使用されている「日本人の食事摂取基準2005年版」のエネルギーの摂取基準を決める際に用いられています。このデータから、平均的な日本人の身体活動レベルを「ふつう(?)」でPALを1.75(1.60?1.90)とし、PALが1.60未満
では身体活動レベルが「低い」、1.90より多い場合を「高い」としています。

 現在、この研究の次の課題として、様々な職種の方の身体活動レベルを測定しています。

 また、市販の歩数計などでも1 日のエネルギー消費量が表示さ
れるものがありますが、より正確に測定できる簡単な機器の開発や、数項目の質問で身体活動レベルを判断できるような質問票の開発に取り組んでいます。

 健康管理や保健指導の現場で、役にたつ結果がだせるように研究中です。【高田和子】

出典:K Ishikawa-Takata, I Tabata, S Sasaki, HH Rafamantanantsoa, H Okazaki, H Okubo, S Tanaka, S Yamamoto, T Shirota, K Uchida, M Murata. Physical activity level n healthy free-living Japanese estimated by doubly labeled water method and International Physical Activity Questionnaire. Eur J CLin Nutr. advance online publication May 23, 2007.

ニュースレター「健康・栄養ニュース」第6巻4号(通巻23号)平成20年3月15日発行から転載

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作成:2008/6/12 10:13:11 自動登録   更新:2009/2/5 13:25:03 自動登録   閲覧数:36983
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