概要
一人ひとりの多様な幸せ(well-being)の最大化に向けて、包摂的コミュニティを実現する科学技術・社会技術が展開されるプラットフォームを構築することが本課題のミッションである。すなわち、包摂的コミュニティの形成に資する事業・サービス群が持続可能な形で提供され、それらをコミュニティの主体者である住民・市民、それを支える自治体やまちづくりに関わる企業等が、多様な個人の状況や目指す幸福、コミュニティの状況等に応じて、選択し、採用(購入)できる状態にあることが求められる。本課題では、包摂的コミュニティを実現するために利用できるサービス群を「包摂的コミュニティプラットフォーム」と位置付け、このプラットフォームを活用し、多様な地域特性に応じた包摂的コミュニティの適用例を日本全国に多数展開する。
サブ課題
サブ課題A「社会の寛容性向上策」
社会問題となっている社会的孤立が発生する可能性のある複数の地域生活圏において、最新のデジタル技術と、リアルでナラティブな互助やまちづくり手法を融合させることにより、従来の再生期間(約10年)の1/2程度で地域のソーシャル・キャピタルの充実化を実現する。これにより多様な人々が集うコミュニティにおいて生きづらさを抱えた人やその家族を含めた住民の寛容性を向上させ、一人一人の多様な幸せを実現する技術を開発・実装する。
サブ課題B「個人の自律性向上策」
7割と言われる健康無関心層の背景には、①ライフステージに合った適切な支援がなされていないこと、②個人の様々な健康データが連携されていない上に、情報が継続的に本人に届かないため、個人の健康リスクを把握できていないことが想定される。多くの住民が健康行動に取り組み、自律性が担保できる社会に向け、AI技術を活用し、全世代にわたるライフコースデータを解析することで個人の健康リスクを可視化するとともに、健康リテラシーを向上させ、各ライフステージにおいて自律的に健康行動を促すサービスを開発・実装する。
サブ課題C「子育て世代・女性の幸福度向上策」
妊産婦や子育て世代が抱える心身の課題への対応のため、社会全体における子育てへの前向き機運(少子化対策への貢献)、ボディイメージへの寛容な価値観、女性が生涯にわたって健幸を増進しやすい価値観が醸成され、それを国の制度化の動きと連動しながら、地域資源により持続的な支援を行う官民連携サービスを開発・実装する。
サブ課題D「障がい者・高齢者の生きがい向上策」
後期高齢者増により、独居の軽度認知障害や認知症高齢者が増加することが確実であり、生きがいの維持・増進に資する在宅ケアの革新、コミュニティへつながるための移動手段の確保、認知機能に合わせて継続的・自律的な経済活動が行えることに焦点化し、これらを解決する事業モデルを開発・実装する。
出口戦略
SIP後の社会実装の方法として、関係省庁の施策とも連携しつつ、SIPでの研究開発に参画する企業を中心とした民間企業によるサービスとして、「包摂的コミュニティプラットフォーム」を通じて全国へ展開することを想定している。サービス内容については、自治体の事業を民間が受託するもの、住民が費用負担者となるもの、住民が費用負担者となりつつ一部自治体が補助するもの、民間企業が事業活動の一環として取り組むもの等が考えられる。サブ課題ごとに、住民や自治体の受容性について検証するとともに、最適なビジネスモデルをSIP期間中に検討・検証し、持続的に提供可能且つ過疎地を含めた多様な地域特性に応じて全国に展開可能なモデルを構築する。それらのサービス群が品揃えされ、住民・自治体・まちづくり系企業等が地域特性に応じてサービスを選択・採用できる「包摂的コミュニティプラットフォーム」を構築する。
実施体制
体制として、全体を統括する久野 譜也プログラムディレクター(PD)のもとに、青木 由行サブPD(一般財団法人不動産適正取引推進機構 理事長)、石田 惠美サブPD(BACeLL法律会計事務所 代表弁護士・公認会計士)、唐澤 剛サブPD(社会福祉法人サン・ビジョン 理事長)、北出 真理サブPD(順天堂大学医学部産婦人科 教授)、目﨑 祐史サブPD(セコムIS研究所 所長)の5名配置した。また、審査委員会、ピアレビュー委員会、知財委員会、ELSI(Ethical, Legal and Social Issues)委員会を研究推進法人に設置し、各サブ課題が相互に連携する体制で運用する。
期待される成果
「包摂的コミュニティプラットフォーム」の広域での普及・展開が期待されるため、スタートアップを含め、その構成要素となる技術やサービスを提供する企業群の参入が促進されることが期待される。なお、このプラットフォームは、様々な企業に門戸を開くことによって、よい良いサービスが市場競争の中でユーザーである住民・自治体・まちづくり系企業等に選ばれ、サービス内容が改善されていくようなプラットフォームを目指す。このように「包摂的コミュニティプラットフォーム」が、一つのエコシステムとして持続可能な形で発展していくことを目指す。
達成目標
SIP期間中のサブ課題ごとの達成目標は以下の通りである。
サブ課題A「社会の寛容性向上策」
《達成目標1》包摂的コミュニティモデルに必要な技術要素が開発され、コミュニティサービスの立上ができている。且つ、コミュニティサービス実装地域において、策定するガイドラインに基づく包摂性評価が向上している。
《達成目標2》AI技術を活用したコミュニティ形成ガイドラインが企業、自治体に採用されている。また、このガイドラインが適用された仕組みが一般市街地等の地域で住民に利用されている。
サブ課題B「個人の自律性向上策」
《達成目標1》健康リスク検知(予測)エンジンを開発し、その有効性が検証され、個々人の健康リスク・健康リテラシーの可視化が可能となっている。
《達成目標2》医学的要因に加えて一人ひとりの嗜好等も取り入れた生活行動変容支援サービスと多層的介入プログラムが開発され、健康無関心層が健康リテラシーを向上させ、何等かの健康行動を自主的に開始している。
《達成目標3》AIによる健康リスクの検知・予測や健康リテラシーの向上、多層的介入サービス等の有効性・事業性が検証され、自治体及び自治体から委託をうけた民間企業が自治体にてサービスを提供している。
《達成目標4》上記に関連する健康データを分析・活用できる自治体の人材が育成されるとともに、多層的介入プログラムを担う人材が育成されコミュニティで活動する。また、人材育成を継続的に行う支援組織が立ち上がっている。
サブ課題C「子育て世代・女性の幸福度向上策」
《達成目標1》パブリックリレーションズ技術により、モデル地域の子育てに対する寛容性の指標が一定以上であると判定される者の割合が60%以上となっている。
《達成目標2》妊娠前後、子育て世代の男女の心身の不安を解消できるハイブリッド伴走型支援が構築され、有効性が検証されている。
《達成目標3》医学的に課題となる瘦身ではない新しい美としてのボディイメージを社会として形成するための社会技術が開発され、その効果が検証されている。
《達成目標4》新しい美の価値観に基づく商品や、検証された痩せ症スクリーニングツール、栄養・運動プログラムが開発され、それぞれ顧客に提供できる状態になっている。
サブ課題D「障がい者・高齢者の生きがい向上策」
《達成目標1》遠隔家族が支え合う豊かな暮らしをデジタル技術で実現する次世代型ライフスタイルモデルが開発され、有効性・事業性を検証されている。
《達成目標2》ラストワンマイルの移動を容易とする官民連携のビジネスモデルが構築され、有効性・事業性が検証されている。
《達成目標3》経済取引上の判断能力に限らず高齢者が、継続して自律的な経済活動が行えるように支援する社会技術が開発され、効果が検証されている
※社会実装に向けた戦略及び研究開発計画はこちらをご覧ください
「包摂的コミュニティプラットフォームの構築」戦略及び計画