国立健康・栄養研究所(NIHN)のお知らせ
ヒトの体の水の代謝回転量を予測する式を世界で初めて発明 ~23カ国5604人を対象とした国際共同調査の結果から~
2022年11月25日
【概要】
国立研究開発法人医薬基盤・健康・栄養研究所(大阪府茨木市、理事長・中村祐輔)(以下「NIBIOHN」という。))身体活動研究部の山田陽介室長、吉田司研究員は、早稲田大学宮地元彦教授、渡邉大輝助教、京都先端科学大学木村みさか客員研究員、筑波大学下山寛之助教、米国・英国・中国・オランダ等の研究機関の研究者と共同して、23カ国に住む生後8日の乳児から96歳の高齢者までの男女計5604名について安定同位体を用いた調査を行い、ヒトの体における1日の水分の出入り(以下「水の代謝回転」という。)を予測する式を世界で初めて発明しました。この研究成果は日本時間2022年11月25日午前4時 に『Science』に掲載されました
【今回の研究で明らかになったこと】
ヒトの身体がどれくらい水を保有しているのか(ストック)は過去の研究によって明らかになっていたものの、意外に思われるかもしれませんが、ヒトの身体にどれくらい水が出入りしているか(フロー)はこれまで正確に把握することが困難でした。今回の研究により、平均的な場合、乳児で体水分量の約25%にあたる水分が、また、成人でも体水分量の約10%にあたる水分がたったの1日で体外に失われることがわかりました。さらに、個人の年齢、体格に加えて、環境やライフスタイルなどの要因は独立して水の代謝回転量に影響を及ぼしており、発展途上国に住むヒトの水の代謝回転は他の因子で調整しても速いことなどが、今回、ビックデータを用いることで明らかになりました。
【今回の研究の意義】
本研究の成果により、多様な環境下での脱水や熱中症の予防、さらには脱水に伴う腎臓や心臓の障害などの予防のために必要な水分摂取量の目安を明らかにできることが期待されます。さらに、国連によると、世界人口の約3分の1が、家庭で安全な飲料水が不足している状態にあると推測され、特に発展途上国において水不足の問題は顕著である中、本研究で得られた予測式は、各国における災害や有事の際の飲料水や食糧の確保の戦略立案や、世界における人口増加や気候の変動による水不足の予測モデル構築に役立つものと考えられます。
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