1. トップページ  >
  2. 研究テーマ

感染症、難治疾患に対するバイオロジクスシーズ探索

1)抗体医薬品の開発へ向けて
感染症の治療抗体や、輸入血液原料由来特殊免疫グロブリン製剤の代替となる組換え抗体の開発を進めています。
EBウイルスの感染と、次世代シークエンサー(NGS)解析を用いた手法によってヒト検体を探索し、最適化を行うことにより、ヒトでの免疫原性が極小化された「ヒト型組換え抗体」を、活性を有したシーズ分子として同定します。

2)次世代コンポーネントワクチンの開発へ向けて(図2)
感染症予防で用いられるワクチンは、これまで、弱毒化、あるいは無毒化された病原体や毒素が用いられてきましたが、安全性の点で問題となることがありました。このことから、我々の研究室では、病原体などのタンパク質を組み合わせた、コンポーネントワクチンの開発を進めています。効力の高いワクチン開発のためには、ヒト免疫原性を最大化することが重要です。そのために、我々は、ファージディスプレイ技術とNGS解析を組み合わせたPathogScan法 (Phage immunoprecipitation sequencing (PhIP-Seq) 法の変法)を開発し、高い免疫原性を有する病原体タンパク質断片を、ヒト検体を用いて探索しています。これによって、ワクチンシーズ開発につなげていきます。

3)感染症、免疫病発症機構の解明(図3)
バイオロジクスのシーズ開発において、疾患発症メカニズムの解明、および活性評価のための動物モデル創出は、重要な開発ステップです。特にヒト免疫機能を駆動する感染症、免疫病に対するバイオロジクスは、ヒト免疫システムと病原体との相互作用や免疫破綻機構の理解が必要です。したがって、我々は、重篤疾患を引き起こすヒトヘルペスウイルス感染症に注目し、がん、および自己免疫疾患等の炎症疾患の発症機構について、動物モデルを用いて研究しています。  EBウイルスはヒトに感染するヘルペスウイルスの仲間で、成人の90%以上が感染している一般的なウイルスです。多くの場合小児時に感染し、無症状であったり、軽い症状であったりしますが、思春期や成人に感染するとリンパ球の異常増殖によって伝染性単核球症を起こすことがあります。また、EBウイルスは疫学的知見よりバーキットリンパ腫やホジキンリンパ腫などのリンパ腫や、全身性エリテマトーデスや多発性硬化症などの自己免疫疾患との関連が知られています。  我々は、EBウイルス感染細胞が発現するウイルス由来膜タンパク質であるLatent membrane protein 1 (LMP1)やLMP2Aが、胚中心B細胞と呼ばれる分化段階のB細胞で発現するマウスを作製し、リンパ腫や自己免疫疾患発症とEBウイルス感染との関係を調べてきました。その結果、LMP2AがB細胞の分化を正に制御することによって、自己免疫疾患の発症を促進することや、LMP1とLMP2Aが協調的に機能し、リンパ腫発症のきっかけとなることを明らかにしました。これらのマウスは、自己免疫疾患やリンパ腫発症のモデル動物としての利用が可能であり、創薬や治療法の開発に活かされます。これらの基礎研究を通じて、最終的に感染症、免疫病に対する治療戦略の構築を目指しています。