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中高年日本人の糖尿病に対するアルコール摂取の影響

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 米国やブラジルに移住した日本人は西欧型の生活習慣になっていますが、遺伝的背景は日本人と同等と考えられます。

 これらの移民日本人の2型の糖尿病の有病割合は、日本に住んでいる日本人より高いことから、2型の糖尿病の発症は遺伝的体質が関連しているとともに、食生活や運動習慣などの生活習慣が強く関連していると考えられています。

 日本を含めたアジア諸国における2型糖尿病の発症状況は変化してきており、ここ10?20年の間、2型糖尿病の有病割合は劇的に増加してきています。生活習慣の改善を図り、2型糖尿病を予防することは、アジア諸国においても危急の健康問題となってきています。そのためには、西欧諸国における2型糖尿病の危険因子がアジア諸国においても危険因子となるかどうかを評価することが重要となります。

 しかし、この問題に答えようとする断面的な研究はいくつかありますが、一般住民を対象とした大規模なコホート研究はほとんどありません。そこで、日本における地域住民を対象とした前向きコホート研究(JPHC研究)において検討しました。

 対象者は、岩手県、秋田県、長野県、沖縄県の4つの保健所管内(二戸、横手、佐久、石川)の住民で、1990年の調査開始時点において年齢が40?59歳で、糖尿病や心血管疾患などの疾患発症のない2 万8893人(男性1万2913人と女性1万5980人)です。

 これらの対象者を10年間追跡し、調査開始から5年目と10年目の2回、対象者に調査票を送付し、自己申告によって、体重、身長、健康状態、喫煙習慣の有無、アルコール摂取状況、糖尿病や高血圧などの医師による診断の有無や様々な生活習慣について回答してもらいました。

 アルコール摂取については摂取頻度、アルコール飲料の種類と1回当たりの摂取量について回答してもらいました。

 アルコール摂取状況から、対象者を、「全く飲まないとたまに飲む(一ヶ月に3、4日)」グループと、「よく飲む」グループに分けました。「よく飲む」グループについては、その飲酒量をアルコール量に換算(例えば180mlの酒はエタノール量で23g、633mlのビールはエタノール量で23g、180mlの焼酎や泡盛はエタノール量で36gなど)して、1日当たりのアルコール摂取量に応じて3つのグループに分けました。

 その結果、アルコール摂取量に関して、男性は、ALC_0:全く飲まないかたまに飲む、ALC_1:0g<エタノール≦23.0g、ALC_2:23.0g<エタノール≦46.0g、ALC_3:エタノール>46.0gの4グループに、女性はALC_0:全く飲まないかたまに飲む、ALC_1:0g<エタノール≦4.9g、ALC_2:4.9g<エタノール≦11.5g、ALC_3:エタノール>11.5gの4グループに分けました。

 10年の追跡期間中に、男性703人、女性482人の糖尿病の発症がありました。この糖尿病の発症に対する、年齢、BMI、喫煙状況、アルコール摂取状況、糖尿病の家族歴、余暇における身体活動状況、高血圧歴の影響を、ロジスティック回帰分析によって検討しました。

 その結果、男女ともに、BMI、糖尿病の家族歴、喫煙、高血圧歴が、糖尿病の危険因子であることが明らかとなりました。

 アルコール摂取の糖尿病発症に対する影響は、女性では認められませんでしたが、男性では、アルコール摂取がALC_2やALC_3のグループで糖尿病の発症率が高くなっていました。特にB M I が2 2 k g / m 2の男性群では、ALC_0のグループに比べて糖尿病が何倍発症しやすいかを示すオッズ比は、ALC_2のグループで1.91、ALC_3のグループで2.89と有意に高い値を示しました。BMIが22kg/m2より高い男性群では、糖尿病の発症に対するアルコール摂取の影響は認められませんでした。

 西欧において、アルコール摂取と2型糖尿病との関連性は無いとする報告や、過剰なアルコール摂取は糖尿病を発症させる報告があるなど、両者の関連性はまだ確実なものになっていません。日本人と西欧人とのアルコール代謝酵素の違いによる影響もあるかもしれませんが、西欧の人々に比べ日本人にはアルコール摂取が糖尿病の発症に何らかの影響を及ぼすかもしれない事が本研究から明らかになりました。【田中雅子】


出典:Waki K, Noda M, Sasaki S, Matsumura Y, Takahashi Y, Isogawa A, Ohashi Y, Kadowaki T, Tsugane S. Alcohol consumption and other risk factors for self-reported diabetes among middle-aged Japanese: a population -based prospective study in the JPHC study cohort I. Diabet Med. 22(3):323-331, 2005

ニュースレター「健康・栄養ニュース」第4巻2号(通巻13号)平成17年9月15日発行から転載


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作成:2008/6/23 16:31:55 自動登録   更新:2009/2/6 15:12:16 自動登録   閲覧数:7709
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