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葛根は雄性骨粗鬆症モデル動物の骨量減少を予防する

 超高齢化社会を迎え骨粗鬆症の増加が問題になっています。

 骨粗鬆症は骨量と骨質の両方が低下して骨折やすくなる病態のことです。日本人女性の約半数は一生涯のうちにこの病気による骨折を経験するといわれています。一方、男性も男性ホルモンの低下や加齢によって骨粗鬆症にかかります。

 疫学研究によると75歳以上の男性の約20%が骨粗鬆症を発症します。成人男性の骨代謝を調節している性ホルモンは主に男性ホルモンですが、女性ホルモンも重要な働きをしていることが最近の研究でわかってきました。

 すなわち、遺伝的に女性ホルモンの受容体が欠損している男性は骨粗鬆症を発症しますし、また、生体内で男性ホルモンから女性ホルモンを作る時に必要な酵素が欠損している男性もやはり骨粗鬆症を発症します。


 私達は以前より、骨粗鬆症の予防を目的とした栄養学的研究を実施していますが、そのなかで弱い女性ホルモン作用のある大豆イソフラボンが、男性ホルモンの欠乏に起因する雄性骨粗鬆症モデル動物の骨量減少を抑えることを明らかにしました。

 イソフラボノイドは大豆の他にも葛根などにも含まれています(食薬区分では葛根の根は「医薬品」に、種子、葉、花およびくず澱粉は「食」に分類されています)。そこで葛根粉末中のイソフラボン含量を調べてみたところ10/gもありました。これは大豆の約5倍量のイソフラボンに当たります。

 葛根は日本では葛根湯として感冒薬に利用されていますが、骨に対する効果は明らかにされていません。そこで、雌雄の骨粗鬆症モデル動物を用いて骨代謝に対する葛根の効果を調べてみました。ここでは雄の結果について解説します。


 まず、男性ホルモンの分泌を抑えた骨粗鬆症モデルマウス(ORX)を作製し、葛根粉末を5?20%含有する餌で飼育しました。

 4週間後に大腿骨の骨密度を測定したところ、葛根5%食を摂取したマウス(PR5群)の骨密度は摂取しないマウス(ORX群)に比べて有意に高く、20%食群(PR20群)では対照マウス(Sham群)よりもさらに高い骨密度を示しました。

 これは女性ホルモンを投与したマウス(E2群)と同じレベルでした。また、この効果は海綿骨の多い大腿骨頸部で特に強く認められました(図)。一方、体重及びその他の器官には大きな影響は認められませんでした。

 これらの結果から、葛根粉末の摂取は、雄性の骨粗鬆症モデル動物の骨量減少を抑制することが明らかになりました。


 さて、これを機にくず餅やくず湯を食する時に少しでもご自分の骨のこと、骨粗鬆症の予防策などについて思いを巡らせいただければ幸いです。

 なお本効果については特許が出願公開されていますので、ご興味のある方はご一報下さい。【石見佳子】



出典:Wang X, Wu J, Chiba H, Yamada K, Ishimi Y: Puerariae radix prevents bone loss in castrated male mice. Metabolism. 54: 1536-41. 2005.



ニュースレター「健康・栄養ニュース」第4巻4号(通巻15号)平成18年3月15日発行から転載
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作成:2008/6/23 10:59:39 自動登録   更新:2009/2/6 11:16:19 自動登録   閲覧数:8559
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