新しい食事の多様性指標とその年次変化
私たちが生きていくのに必要な栄養素をいろんな食べ物から摂ることが推奨されています。このことを食事の多様性(dietary diversity)といいますが、この多様性を表す世界共通の指標がないのが現状です。
過去の多くの研究では、ある一定期間に摂取した食品数(あるいは食品群数)が多様性の指標として用いられていますが、どんな食品がどのように数えられるのかについては各研究でばらばらの状態であり、異なる集団間や異なる時期間で比較することが困難でした。さらに、食品数(食品群数)のみでは摂取した食品の量的な側面を十分に把握することができません。
そこで私たちは、量的な側面をもう少し把握でき、しかも集団間や異なる時期間で比較可能な指標の作成を試み、その指標を1957年?2000年までの国民栄養調査に適用し、年次変化を検討しました。
新しい指標(Quantitative Index for Dietary Diversity:QUANTIDD)は次式で表すことができます。
prop(j):jという食品(群)から摂取されるエネルギーや各種栄養素の割合
n:摂取された総食品(群)数
jのとる値の範囲は1?n
この指標は0?1の値をとります。総摂取重量や総エネルギー摂取量に対して、各食品(群)からの摂取重量やエネルギー摂取量が等しく分布していれば1の値となり、その分布がアンバランスであると0に近づくようになり、摂取源である食品(群)が1つであったりすると0になります(下図)。
この指標をわが国の国民栄養調査のデータに適用した結果(今回は全部で16食品群としました)、エネルギー摂取量に対するQUANTIDDは1950年代後半に0.53でありましたが、1980年には0.8を超えるようになり、その後も漸増傾向にあります(下図)。
すなわち、各食品群からのエネルギー摂取量の偏りが少なくなったことがこの図から見て取れます。摂取総重量に対するQUANTIDDは、1950年代後半に0.83でありましたが、1970年代前半には約0.1増え、近年では0.93あたりでほぼ安定しています。
摂取食品重量よりエネルギー摂取量の指標値が小さいのは、食品群によってはエネルギー摂取への寄与が小さいもの(野菜類や海草類など)があるためと考えられます。
ここでは摂取食品重量とエネルギー摂取量に対する指標値を示しましたが、その他の栄養素摂取量に対する値も計算でき、それらの値をみて総合的に多様性の状況を検討することができるようになります。
ただし、この指標を用いる際に注意すべき点もあります。この指標は食事の量的側面をかなり反映しているとはいえ、食事の質的な側面を十分に反映していないということです。また、他と比較する際、用いる食品(群)を同じにする必要があります。
これらの点を考慮しながら、この指標を利用していただきたいと思います。【松村康弘】
出典:Katanoda K, Kim HS, Matsumura Y: New quantitative index for dietary diversity (QUANTIDD)and its annual changes in the Japanese. Nutrition 22; 283-287: 2006.
ニュースレター「健康・栄養ニュース」第5巻1号(通巻16号)平成18年6月15日発行から転載
私たちが生きていくのに必要な栄養素をいろんな食べ物から摂ることが推奨されています。このことを食事の多様性(dietary diversity)といいますが、この多様性を表す世界共通の指標がないのが現状です。
過去の多くの研究では、ある一定期間に摂取した食品数(あるいは食品群数)が多様性の指標として用いられていますが、どんな食品がどのように数えられるのかについては各研究でばらばらの状態であり、異なる集団間や異なる時期間で比較することが困難でした。さらに、食品数(食品群数)のみでは摂取した食品の量的な側面を十分に把握することができません。
そこで私たちは、量的な側面をもう少し把握でき、しかも集団間や異なる時期間で比較可能な指標の作成を試み、その指標を1957年?2000年までの国民栄養調査に適用し、年次変化を検討しました。
新しい指標(Quantitative Index for Dietary Diversity:QUANTIDD)は次式で表すことができます。
prop(j):jという食品(群)から摂取されるエネルギーや各種栄養素の割合
n:摂取された総食品(群)数
jのとる値の範囲は1?n
この指標は0?1の値をとります。総摂取重量や総エネルギー摂取量に対して、各食品(群)からの摂取重量やエネルギー摂取量が等しく分布していれば1の値となり、その分布がアンバランスであると0に近づくようになり、摂取源である食品(群)が1つであったりすると0になります(下図)。
この指標をわが国の国民栄養調査のデータに適用した結果(今回は全部で16食品群としました)、エネルギー摂取量に対するQUANTIDDは1950年代後半に0.53でありましたが、1980年には0.8を超えるようになり、その後も漸増傾向にあります(下図)。
すなわち、各食品群からのエネルギー摂取量の偏りが少なくなったことがこの図から見て取れます。摂取総重量に対するQUANTIDDは、1950年代後半に0.83でありましたが、1970年代前半には約0.1増え、近年では0.93あたりでほぼ安定しています。
摂取食品重量よりエネルギー摂取量の指標値が小さいのは、食品群によってはエネルギー摂取への寄与が小さいもの(野菜類や海草類など)があるためと考えられます。
ここでは摂取食品重量とエネルギー摂取量に対する指標値を示しましたが、その他の栄養素摂取量に対する値も計算でき、それらの値をみて総合的に多様性の状況を検討することができるようになります。
ただし、この指標を用いる際に注意すべき点もあります。この指標は食事の量的側面をかなり反映しているとはいえ、食事の質的な側面を十分に反映していないということです。また、他と比較する際、用いる食品(群)を同じにする必要があります。
これらの点を考慮しながら、この指標を利用していただきたいと思います。【松村康弘】
出典:Katanoda K, Kim HS, Matsumura Y: New quantitative index for dietary diversity (QUANTIDD)and its annual changes in the Japanese. Nutrition 22; 283-287: 2006.
ニュースレター「健康・栄養ニュース」第5巻1号(通巻16号)平成18年6月15日発行から転載
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作成:2008/6/19 14:17:21 自動登録
更新:2009/2/6 10:50:00 自動登録
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