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ダイエット食品素材ガルシニア、過剰摂取による精巣毒性に注意が必要!


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健康影響評価:ガルシニア


 ハーブの一種、ガルシニア・カンボジアはインドや東南アジアに生育する常緑樹で、5?9月頃にオレンジ大の実をつけます。

 果実や果皮は柑橘類に似た強い酸味を有し、熟果は生食されるほか、果皮や実を乾燥させて貯蔵し、カレーの酸味付けや魚の塩蔵保存などに古くから利用されています。果皮抽出物には (?)?ヒドロキシクエン酸(HCA)が多量に含まれ、肥満抑制を標榜する多くのダイエット食品やサプリメントに利用されています。
 
 HCAの抗肥満作用は、糖から解糖系を経て生成したクエン酸とATPクエン酸リアーゼの結合を競合的に阻害することで、クエン酸からのアセチルCoA生成を抑制し、その結果、糖からの脂肪の合成・蓄積を抑制することによります。

 これまで、HCAの効果を動物試験で検討した結果では、体重増加の抑制とともに体脂肪蓄積抑制効果が観察されています。ヒトでも同様にHCAによる体脂肪蓄積抑制を観察した結果が幾つか報告されていますが、効果が得られないとする報告も多く、被験対象者や食事内容、HCA摂取量等の影響を強く受け、有効性については必ずしもコンセンサスは得られていません。

 一方安全性については、ガルシニアは、東南アジアにおける長い食経験やラットを用いた急性毒性試験(LD50は5,000mg/kg BW以上)から、問題はないと考えられて来ました。しかし、筆者らによる、HCAを含む飼料をZucker肥満ラットに与えたペアフィーディング試験では(1)、ガルシニアの多量投与(154mmol HCA/kg diet)が副睾丸周囲脂肪蓄積抑制に効果があったものの、HCAとして102mmol/kg diet以上を含む飼料を摂取した場合に(778mg HCA/kg BW/日以上)、用量依存的に顕著な精巣毒性(精細胞の萎縮と変性、精子形成不全)が観察されました。

 筆者らと同様な精巣毒性の結果は別の研究グループによっても報告され、厚生労働省からも公表されています。精巣毒性はHCAそれ自体による可能性の高いことも示唆されています。

 市販されているガルシニアを含む‘いわゆる健康食品’の1日当りのHCAの有効摂取目安量(750?1,500mg HCA/日/人)は、体重50kgでは15?30mg HCA/kg BW/日であり、この量は筆者らが行った試験のNOAEL(無毒性量:51mmol HCA/kg diet、389mg HCA/kg BW/日)の1/26?1/13量となります。従って、摂取の指示量を守れば有害な影響は起こらないだろうと思われます。

 しかし、ガルシニアを含む‘いわゆる健康食品’は種々の形態で販売されており、錠剤やカプセルでは簡単に摂取目安量の数倍を摂取することができますし、ヒトでは感受性の個体差も大きく異なると考えられます。

 また、ヒトはATPクエン酸リアーゼ活性が低く、グルコースからのアセチルCoA生成はラットの約1/40とされるため、極端な高炭水化物、高HCA、低脂肪という食事を別にすれば、ヒトでHCA摂取による体脂肪蓄積抑制効果は得られにくいと思われます。

 精巣毒性の可能性を否定できない以上、安全性が判明するまでは摂取を控えることが賢明でしょう。

 なお、ガルシニアの精巣毒性の機序(2)、雌ラットへの影響(3)、等についても検討しましたが、幸いにして雌ラットへの有害な影響はなさそうです。また、精子形成不全は、形成開始シグナル物質の生成がHCAにより抑制されるためではないかという結果も得ています。

 本研究は、当研究所の独立行政法人第一期中期計画期間(H13.4?H18.3)中に遂行すべき重点調査研究業務「食品成分の有効性評価および健康影響評価」の一つとして行った成果です。【斎藤衛郎】



出典:
1. Saito M, Ueno M, Ogino S, Kubo K, Nagata J, Takeuchi M. High dose of Garcinia cambogia is effective in suppressing fat accumulation in developing male Zucker obese rats, but highly toxic to the testis. Food Chem Toxicol 2005; 43: 411-419.

2. Kiyose C, Ogino S, Kubo K, Takeuchi M, Saito M. Relationship between Garcinia cambogia-induced impairment of spermatogenesis and meiosis-activating sterol production in rat testis. J Clin Biochem Nutr 2006; 38: 180-187.

3. Kiyose C, Kubo K, Saito M. Effect of Garcinia cambogia administration on female reproductive organs in rats. J Clin Biochem Nutr 2006; 38: 188-194.

4. 斎藤衛郎.「いわゆる健康食品」の有効性と健康への影響 ?ガルシニア.臨床栄養2006; 108: 60-64.

ニュースレター「健康・栄養ニュース」第5巻2号(通巻17号)平成18年9月15日発行から転載


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作成:2008/6/19 13:17:30 自動登録   更新:2009/2/6 10:34:35 自動登録   閲覧数:18907
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