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研究紹介:安全性及び有効性の視点から見たドコサヘキサエン酸の適正摂取量の評価

作・斎藤 衛郎:2003/04/07


 N-3系脂肪酸のエイコサペンタエン酸(EPA) やドコ サヘキサエン酸(DHA) による循環器疾患の予防効果 に関しては、今では、周知の事実と考えられるまでに 至っています。

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 N-3系脂肪酸のエイコサペンタエン酸(EPA) やドコ サヘキサエン酸(DHA) による循環器疾患の予防効果 に関しては、今では、周知の事実と考えられるまでに 至っています。しかし、反面、これらの高度不飽和脂 肪酸は非常に酸化を受け易い化学構造であることから、 油そのものとしての酸化はいうに及ばず、体内に摂取 されてからも酸化を受けて過酸化脂質・フリーラジカ ルを生成し易い性質も併せ持っていて、いわゆるフリー ラジカル病と呼ばれる一連の疾病、例えば動脈硬化・ 糖尿病・癌等への関わりが懸念されます。生理的有効 性が重視されるあまり、可能性のある有害性について は大目に見られがちなのです。EPA/DHAサプリメ ントの摂取が日常的になっている今日、安全性の視点 はますます大切になってきています。
 そこで本研究では、1年齢の成熟ラットに純度が 83%と非常に高いDHAエチルエステルを飼料中0、1.0、 3.1、8.4エネルギー%となるように調製して1ヶ月間 投与し、安全性の視点からは過酸化脂質・フリーラジ カルの生成と抗酸化物質の変化について検討し、生理 的有効性の視点からは脂質代謝の改善効果について検 討しました。
 その結果、脂質代謝の改善効果はDHAの投与レベ ルに対して投与量依存的に観察されましたが、過酸化 脂質・フリーラジカルの生成とビタミンEの減少は、 3.1エネルギー%以上で観察されました。このことから、 脂質代謝の改善効果による有効性と、過酸化脂質・フ リーラジカルの生成及びビタミンEの減少を抑制する 有害性の防止の両面を満足するDHAの適正摂取レベ ルは3エネルギー%以下と推測できます。
 従来、こうした研究は、著者らが実施した研究も含 めて、幼若ラットを用いて検討されてきていますが、 サプリメントでの多量摂取を想定すると、むしろ成熟 ラットでの検討が適切であると考えて実施しました。 事実、成熟ラットの方がDHAの投与に対する感受性 は低く、高レベルの投与でレスポンスする結果となり ました。この3エネルギー%がどの位の摂取量になる かを、仮に、2,000kcal/dのエネルギー摂取レベルか ら計算すると脂肪酸量として約6g/dとなります。こ の結果も加味し、既に、ヒトでの検討も含めたn-3系 多価不飽和脂肪酸の安全性評価について検討し、総説 として報告しました(斎藤衛郎、栄養学雑誌、59、1- 18、2001)。そこでは、EPA/DHA混合物の許容上限 摂取量として4g/d程度と推定出来ました。国民栄養 調査から計算した、現状でのEAP/DHA混合物の摂 取量はほぼ0.9g/d ですので、サプリメントからの摂 取量は3g/d程度に抑えておけば安全性上問題はなさ そうです。ちなみに、冠動脈性心疾患の予防効果が得 られる最小量はEPA/DHAとして0.45g/d 程度と筆 者は考えています(前出、栄養学雑誌)。

出典:An assessment of docosahexaenoic acid intake from the viewpoint of safety and physiological efficacy in matured rats. Saito, M. Kubo, K.: Annals of Nutrition and Metabolism: 46: 176-181, 2002

(国立健康・栄養研究所発行 健康・栄養ニュース 第1巻3号収載)



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