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食事:妊婦の食生活上の問題点
作・
瀧本秀美
:2003/02/21
妊婦の栄養問題は葉酸だけではありません。しっかり食べて、でも摂り過ぎにも注意して、健康な赤ちゃんを生みましょう!
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現在の日本では、妊婦のビタミン欠乏症をみることは稀ですが、多くの国々では未だに深刻な問題です。しかし、食生活の変化とともに便利な加工食品の利用が普及しており、潜在的なビタミン欠乏症に陥るおそれがあります。一方、気づかないうちにビタミンの摂取過剰をきたしている場合もあります。ビタミンではビタミンAが問題です。
現在、ビタミンAは、多くの先進国において摂取所要量を満たしているとされています。平成11年度の国民栄養調査によれば、国民1人当たりの平均ビタミンA摂取量は、1日2,803IUです。日本人の栄養所要量では、妊婦60μgRE(200IU)、授乳婦300μgRE(1,000IU)の付加量が定められています。これは、妊婦600μgRE(2,000IU)/日、授乳婦840μgRE(2,800IU)/日に相当します。日本人の平均的な食生活では、欠乏症の危険性は低いと思われます。
動物実験によると、器官形成期のビタミンA欠乏症または過剰症は、胎児に対して催奇形性をもつと指摘されています。人の場合は、母親が妊娠初期に1日1万IU以上と過剰に摂取した場合に、胎児奇形の危険性が高まるとされています。しかし、通常の食生活においてこのように大量のビタミンAを摂取することは困難です。
次に、妊娠中の栄養で不可欠なミネラル類の中では、鉄とカルシウムが問題です。妊婦のミネラル栄養を考える上で鉄は特に重要です。妊娠中は全期間を通じて、循環血液量が増加し続けますが、それは妊娠中期に最も著明です。出産予定日近くでは、循環血液量は非妊時の40〜50%も増加しています。こうした母体の変化に加え、特に妊娠中期以降は胎児及び胎盤での鉄の所要量が増大します。このため、日本人の栄養所要量では、妊婦、授乳婦に8rの付加量が示され、20r/日の鉄が必要であるとしています。特に妊娠初期に鉄欠乏性貧血と診断された場合には、切迫早産や子宮内胎児発育遅延などの異常を合併する頻度が高いとの報告があり、早期の治療が必要です。
胎児におけるカルシウムの蓄積は、主に妊娠末期に起こります。この期間に胎児の必要量が満たされない場合、母体の骨吸収が起きるおそれがあります。しかし、妊娠中は腸管からのカルシウム吸収が高まっているので、通常は病的な骨吸収が起きる可能性は低いとされています。しかし、妊娠前の極端なダイエットなどで骨密度が低下しているおそれのある人は、注意が必要でしょう。新生児における体内カルシウム含有量と、妊娠中のカルシウム吸収率の上昇を考慮に入れると、摂取必要量は753r/日と推定されますが、これに安全率約20%を見込むと、妊娠中の所要量は900rとなります。米国では1,200rを必要量としています。
(国立健康・栄養研究所編『第二版 健康・栄養-知っておきたい基礎知識-』
第一出版
、東京、2001収載。出版社の許可を得て転載)
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