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研究紹介:緑茶の成分がDNAを損傷から守る

作・梅垣敬三:2002/11/14


 日本人が日常多量に摂取している緑茶に含まれるエピガロカテキンガレートが、安全でなおかつ生体が受ける各種の酸化ストレスから染色体を防御する作用のあることを明らかにしました。

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 生体成分(脂質やDNA)の酸化損傷は、化学物質に曝されたり、放射線を曝露したような特殊な状況だけでなく、日常の身体活動や炎症などによっても起こります。そのような生体成分の酸化損傷を抑える抗酸化物質は、疾病発症や老化の予防にも関連するため注目されています。
 日本人が日常多量に飲んでいる緑茶の中には、カテキンとよばれ、抗酸化作用・抗菌作用など多彩な作用を持つ物質が存在します。これまで、カテキン類の有効性や安全性について、実際の体内での濃度を踏まえて評価した研究はほとんどありません。因みに、カテキンの血液中濃度は数μM以上にはなりません。今回私たちは、緑茶に含まれる主要なカテキンであるエピガロカテキンガレート(EGCg)について、その安全性と有効性を、染色体損傷という視点で検討しました。すなわち、ヒトリンパ芽球細胞を用い、染色体損傷は環境化学物質の評価にも利用されている細胞質分裂阻害小核試験法という方法により測定しました。その結果、非生理的な高濃度(約100μM)のEGCgには染色体の損傷作用があり、その損傷にはEGCgが発生する過酸化水素が関連していました。この結果は通常では考えにくい高濃度の場合ですが、仮に過酸化水素を発生するような高濃度のEGCgが生体内に存在したとしても、体内には過酸化水素を分解する酵素等が存在していますので、EGCgが直接染色体損傷を起こす可能性はないと考えられます。他方、生理的な濃度(1μM前後)のEGCgには染色体の損傷作用はまったくなく、むしろスーパーオキシド、過酸化水素、tert-ブチルヒドロペルオキシドなど各種の活性酸素種により誘発した染色体損傷を抑制する作用がありました。
 以上の結果により、日本人が日常多量に摂取している緑茶に含まれるEGCgは、安全であり、生体が受ける各種の酸化ストレスから染色体を防御する作用を有することが明らかになりました。なお、緑茶中にはビタミンCや、抗酸化作用を有するEGCg以外のカテキン等も存在しています。そのため、サプリメントなどの抽出物としてカテキンを摂取するよりも、日本人がこれまで長く経験してきた摂取方法である緑茶としてカテキンを摂取する方が、より安価で安全かつ有効なカテキンの利用法であることは間違いないでしょう。

出典:Physiological Concentrations of(-)-Epigallocatechin-3-O-Gallate (EGCg) Prevent Chromosomal Damage Induced by Reactive Oxygen Species in WIL2-NS Cells.Sugisawa A,Umegaki K:J Nutr:132(7):1836-9,2002.

(国立健康・栄養研究所発行 健康・栄養ニュース 第1巻1号収載)



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