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研究紹介:水溶性ビタミン「ナイアシン」のヒトにおける代謝―尿中ナイアシン代謝産物排泄の日内リズムとストレスの影響―

作・西牟田 守:2003/09/26


 栄養素のヒトにおける必要量を知るためにはヒトを対象とした研究が不可欠です。水溶性ビタミンのうち「ナイアシン」はニコチンアミドとニコチン酸の総称で、肝臓に貯蔵されています。

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このビタミンは、必須アミノ酸のトリプトファンから身体の中で生合成されることが特徴で、また、エネルギー代謝に関連する重要なものです。ヒトにおけるナイアシンの必要量を研究する一環として、私たちは日常生活におけるナイアシン代謝に注目し、大学生女子12名に協力してもらい、国立健康・栄養研究所で12日間にわたり実験を行いました。食事は4日周期の規定食で、一日当たりエネルギー1,890kcal、ナイアシン13.3mg、トリプトファン706mg、トリプトファンから転換されるナイアシン11.8mg、ナイアシン等量25.0mgでした。最初の4日間は適応期間に当て、その後、ストレスとして(1)寒冷暴露:4℃のコールドルームで午前と午後各2時間30分生活する、(2)計算:小学3年生用の計算ドリルを午前と午後各3時間連続して回答する、(3)拘束:消灯した窓のない部屋でアイマスクをかけ、背もたれのない丸椅子に無言のまま午前と午後各3時間座る、の3種類を設定し、実験中にそれぞれ1回ずつ体験してもらいました。尿は6時30分(夜間尿)、8時30分(早朝尿)、13時(午前尿)、18時30分(午後尿)、22時(就寝前尿)を区切りとして採取しました。ストレス負荷の対照としては、同一メニューで負荷しない日の値を用いました。尿に排泄されたナイアシン代謝産物であるMNA(N(1)−メチルニコチンアミド)、2-py(N(1)−メチル−2−ピリドン−5−カルボキサマイド)、4-py(N(1)−メチル−4−ピリドン−3−カルボキサマイド)を測定し、それをもとにナイアシン代謝の日内リズムとストレスによる影響を観察しました。
 その結果、ナイアシン代謝産物の尿中排泄に日内リズムが存在することを明らかにしました。ナイアシンの合成と分解に関係する酵素の働きを考えると、本実験のナイアシン摂取量は十分であり、消費エネルギーの高い日中にナイアシンは消費され、MNAへ、さらにMNAから2-pyと4-pyに分解され、2-pyと4-pyの尿中排泄が高まり、消費エネルギーが減った夜間には、ナイアシンの利用が減少し、体内ナイアシン貯蔵量が一定量を超えたため、ナイアシンはMNAに分解され、早朝にNMAが多く排泄されたと考えることができます。また、ストレスでは寒冷暴露のみMNAと代謝産物の総量の尿中排泄が増加しました。これは、寒冷暴露によりエネルギー消費とともにナイアシンのトリプトファンからの生合成が高まった結果と解釈することができます。

出典:Diurnal variations in human urinary excretion of nicotinamide catabolites:effects of stress on the metabolism of nicotinamide.Okamoto H, Ishikawa A, Yoshitake Y, Kodama N, Nishimuta M, Fukuwatari T,Shibata K. Am J Clin Nutr:77:406-410, 2003



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