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研究紹介:体脂肪になりにくい油って本当?

作・笠岡 宜代:2003/12/15


 近ごろは、スーパーマーケットでもたくさんの種 類の油を目にします。特に最近注目されているの が<太りにくい油>。調理用の油だけでなくサプ リメントとしても数多く販売されています。これっ て本当?と思っている方も多いはずです。<太り にくい油>とは一体どの様な油なのでしょうか?

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 油は脂肪酸という単位から出来ています。この脂 肪酸には様々な種類があり、人間の体に必須なもの、 必須ではないけれども体の機能を調節するために 必要なもの等があります。また、体脂肪として蓄 積されにくい性質の脂肪酸もあり、<太りにくい 油>として販売されている商品にはこのような脂 肪酸が含まれています。しかし、自然界にごく微 量しか存在しない脂肪酸を大量に添加したり、構 造をちょっと変化させた脂肪酸を加えている商品 もあります。中には本当に体脂肪を減少させるか どうかハッキリと証明されていない商品や安全性 が分かっていない商品も販売されています。我々 はこのような脂肪酸が本当に体脂肪を減少させる のか、どのくらいの量を食べれば良いのか、食べ 過ぎた場合には健康に悪い影響を与えないのかど うか研究しています。
 今回、実験に用いたのは自然界にも若干存在する(牛 肉や羊肉、乳製品などに含まれる)共役リノール 酸(CLA)という脂肪酸です。マウスにCLAを食 べさせたところ、体脂肪が明らかに減少しました。 内臓脂肪も皮下脂肪もどちらもCLAの摂取量に依 存して減少し、肥満の改善に有効である事が分か りました。しかし、CLAを大過剰に摂取させると 体脂肪が極端に減少し、体に必要な脂肪までなくなっ てしまう結果、脂肪肝や糖尿病が発症してしまい ました(CLA摂取量1.3g/体重1kg、サプリメント の約70倍量)。少量のCLA摂取では脂肪肝や糖尿病 は全く発症せずに体脂肪が減少したので(CLA摂 取量0.13g/体重1kg、サプリメントの約7倍量)、 肥満を安全に改善するにはCLAを少量摂取するこ とが重要だとわかりました。また、大量にCLAを 摂取してしまった場合でも、CLAの摂取と同時に 脂肪分の多い食事をする事によって脂肪肝や糖尿 病の発症は抑えられる事も発見しました。これはC LAを肥満予防法として使用する場合には、サプリ メントより食用油に添加する方が望ましい事を示 しています。
 さらに、なぜCLAによって脂肪肝が引き起こさ れるのかメカニズムを調べたところ、CLAは脂肪 を合成する遺伝子群(SREBP−1とその標的遺伝子) に直接働きかけ、肝臓の脂肪合成を高めている事 もわかりました。
 実験で用いたCLA量はサプリメントとして摂取す る7倍〜70倍量ですので、通常の摂取量では大き な問題はないと思われます。しかし、CLAのよう に特定の遺伝子を制御している栄養素を日常的に 多量に摂取するには注意が必要です。<太りにく い油>として販売されている商品の作用メカニズ ムはそれぞれ異なりますが、脂肪は体に必要な構 成成分ですので、どのような方法を用いた場合で も極端に体脂肪を減少させないよう注意する必要 があります。

出典:Increasing the amount of fat in a conjugated linoleic acid-supplemented diet reduces lipodystrophy in mice. Tusboyama-Kasaoka N, Miyazaki H, Kasaoka S, Ezaki O : J. Nutr. : 133: 1793-99, 2003.



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