健康増進法という法律に基づいて行われる国民健康・栄養調査は、行政が行う調査
としてはかなり特殊なものです。それは、全国の約5千ものご家庭に、ある一日に何
をどれだけ食べたかを、例えば醤油をどのくらい使ったかといったことも含めて、秤
などで測定し、個々、詳細に記録していただくものです。さらに、お住まい近くの会
場にもお越しいただき、血圧測定、血液検査、服薬等についての問診なども行ってい
ます。
このように、“普通のアンケート”とはかなり異なる複雑かつ膨大な資料を基に集
計を行うことが、法律により私たちの研究所の仕事として定められています。調査は
毎年11月に行われますので、全国300地区で行われた調査記録が、12月末に向
けて各都道府県や政令市等から続々と研究所に送られてきます。さながら、クリスマ
スプレゼントのようです。そして、年明け早々から私たちの作業の開始です。まず、
膨大な量の“紙束”の確認です。複雑な食事記録の確認もさることながら、お一人お
一人の対象者について、何種類かの調査票や記録表がありますので、まずそれらがき
ちんとつながって整理されているかといった、単純ではありますがきわめて重要なこ
との確認です。意外なことと思われるかもしれませんが、年齢の誤記等も少なからず
あります(対象者数が1万人を超えますので、全体ではかなりの数になります)。こ
のように、人手によって丁寧に確認した調査票の内容を入力し、さらにコンピュータ
上と管理栄養士による何段階かの確認作業を経て、初めてコンピュータでの計算・集
計が始まります。そして、調査実施の約1年後には厚生労働省から「結果の概要」が
発表され、一部の結果は新聞等でも報道されています。
詳細な食事記録を中心として、このようなデータの確認・入力・集計作業には、大
きな労力と時間を必要とするため、その効率化と精度の向上を目指して、私たちは研
究事業として、全国の保健所と研究所とをつなぐコンピュータシステムの研究開発も
行っています。そのようなシステムの成果もあらわれ、数年前と比べて集計にかかる
時間もずいぶんと短縮されてきました。しかし、さらなる改良を目指して、管理栄養
士を中心としたチームが地道な作業を日夜続けています。
皆様が国民健康・栄養調査の調査結果をご覧になるときには、私たちのこのような
姿を思い出してみてください。
(よした・かつし 国民健康・栄養調査集計業務担当リーダー)
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