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日本人男性における日本酒換算週13合程度以上の飲酒は血圧の上昇度に強く関与する


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 高血圧は循環器疾患発症の最も重要な危険因子の一つであり、その予防対策は重要な課題となっています。

 高血圧は日常の生活習慣と深く関わっており、多量飲酒との関連についても多くの報告があります。しかし、飲酒と血圧に関する疫学研究の多くは横断研究や短期介入研究であり、長期にわたる縦断研究は少ないのが現状です。さらに縦断研究の多くは高血圧の発症をエンドポイントとしたもので、正常範囲内を含めた長期の血圧の上昇度を指標とした追跡研究は国際的にも殆ど存在しません。

 そこで、近年開発された多変量解析法である Estimated Equation法(GEE法)を用い、大規模な成人男性集団を対象に飲酒量がベースラインの血圧およびその後7年間にわたる長期の血圧の上昇度とどのような関連を示すのかを検討してみました。

 対象は国内のある企業に勤務する20歳から59歳の男性3,900人とし、1994年?2001年までの7年間の血圧値を毎年追跡しました。

 ベースライン調査においては職業要因(職種、交替勤務の有無、労働時間、作業強度、精神的負荷等)、生活習慣要因(食習慣、主な食品群の摂取頻度、飲酒・喫煙習慣、日常生活の身体活動量等)について詳しい調査を行いました。

 血圧測定は、全従業員に対し毎年定期検診時に実施されました。分析においては、2001年まで7年間の収縮期血圧および拡張期血圧測定値の変化、すなわち年当たり血圧上昇の勾配を目的変量として解析しました。この際、他の交絡要因(職業要因、生活習慣要因)の影響を除外して解析するため、GEE法による解析を行いました。

 収縮期血圧においては、週当たり300g以上の純アルコール摂取者群は非摂取者群に比べ、年齢と体重を調整した場合、ベースライン値で5.21mmHg高値を示し、年当たりの血圧変化においても0.44mmHgの上昇を示しました。

 これは7年間では3.08mmHg大きい血圧上昇になります。さらに職業要因と生活習慣要因を加えて調整した場合でも、ベースライン値で4.97mmHg高値を示し、年当たりの血圧変化においては0.33mmHgの大きな上昇を示しました。

 また、ベースラインの収縮期血圧は純アルコール摂取量が週200g以上でも著しい上昇を示していました。

 拡張期血圧においては、週当たり300g以上の純アルコール摂取者群は非摂取者群に比べ、年齢と体重を調整した場合、ベースライン値で4.16mmHg高値を示し、年当たりの血圧変化でも0.19mmHg の上昇傾向を示しました。

 この結果日本人の男性集団において純アルコールで週300g以上の飲酒習慣がベースラインの血圧値はもとより、その後長期にわたる血圧上昇度に対しても強く関与することが明らかとなりました。

 また、この関連は追跡中の体重増加や飲酒に伴う様々な食習慣・職業要因を多変量解析で調整しても認められました。わが国で一般的に用いられる量で現すと、純アルコール週300g以上の摂取は日本酒換算週13合程度以上の飲酒となります。従来、高血圧と関連する飲酒量は1日2?3合以上(週14?21合以上)とされていましたので、それより少ない飲酒量でも長期の血圧の上昇度が高まるといえるでしょう。

 一方、ベースラインの血圧値は純アルコールで週200g以上(日本酒換算週8.7合以上)の飲酒でも明らかな上昇を示していました。

 集団レベルでは、僅か数mmHgの血圧分布の変化によって、虚血性心疾患や脳血管疾患等の発症者数が大幅に変動することが指摘されています。このため、正常範囲内を含めた集団全体の血圧平均値を少しでも低い方向に移動させる対策が必要です。

 若年期からの適正な飲酒量の普及啓発とその実践が重要と考えられ、今回の結果は今後の高血圧予防対策の立案において重要な根拠を与えるものと思われます。【由田克士】


出典:Yoshita K, Miura K, Morikawa Y, Ishizaki M, Kido T, Naruse Y, Soyama Y, Suwazono Y, Nogawa K,Nakagawa H:Relationship of alcohol consumption to 7-year blood pressure change in Japanese men. J Hypertens.: 23:1485-1490, 2005

ニュースレター「健康・栄養ニュース」第4巻3号(通巻14号)平成17年12月15日発行から転載



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作成:2008/6/23 14:40:59 自動登録   更新:2009/2/6 14:59:10 自動登録   閲覧数:9438
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