Welcome GUEST
重要なお知らせ
現在リニューアル中のため、これは閲覧のみの旧バージョンです。質問や検索はできませんのでご注意下さい。
トップ  >  研究紹介  >  一般住民の排便状況について
一般住民の排便状況について

 近年、我が国において大腸疾患(がん、憩室等)が増加していますが、それが便秘に代表される便通異常に大きく影響されていると考えられています。しかし、一般住民における排便状況の詳細はほとんど知られていません。

 これを明らかにすることは、便通異常と大腸疾患の関連を評価するためにも重要です。また、便秘は自覚的な部分に大きく影響されることは知られていますが、便秘に対する各人の自覚がどのような要因に影響されているかに関する報告はありません。これらを明らかにすることは、日常的また臨床的に多く遭遇する便秘への対策の観点からも重要です。

 そこで、岩手県在住の40歳以上の農村住民1,195名を対象に、「自覚的な便秘」、「排便の回数」、「排便時の腹痛」、「排便の規則性」、「環境の変化による便秘の出現」、「残便感の有無」、「排便に要する時間」、「便の性状」、及び「交代性便通異常」の9項目の排便に関する項目について聞き取り調査を行いました。

 自覚的な排便状況として、「正常」、「重度の便秘」、「中等度の便秘」、「軽度の便秘」、「交代性便通異常」、及び「下痢」に分けて男女別にみると、「正常」と答えた人は男性が79.3%、女性が60.5%と男性の方が多くなっていました。便秘傾向についてみると「重度の便秘」(男性3.6%、女性6.3%)、「中等度の便秘」(男性3.9%、女性14.2%)、及び「軽度の便秘」(男性6.3%、女性15.5%)となり、男性より女性の方が便秘の傾向が著しいことがはっきりとしました。逆に男性では女性より「下痢」(男性3.9%、女性1.8%)と答えた人が多くなっていました。

 また、各年代別でも女性が男性より便秘傾向にあり、男女とも加齢によって便秘傾向が強くなることが明らかになりました。加齢による変化の原因としては、加齢による大腸機能の低下と、低下していくエネルギー摂取量による繊維分の摂取量低下を考えています。

 また、「自覚的な便秘」に他の因子がどのように関連しているかをlogistical regression analysisで分析し、8項目のそれぞれのオッズ比を求めました。その結果、「自覚的な便秘」に対して最も高いオッズ比を示したのは「排便の回数」で、特に「1日当たり1回以上の排便」では男女のオッズ比は各々13.38と42.46になり、排便回数が便秘の自覚をもっとも左右する要因であると考えられます。

 さらに、「排便時の腹痛」のみは、男性のオッズ比は有意でしたが女性では有意ではありませんでした。しかし他の項目では、男女ともにオッズ比が有意でした。したがって、上述した多くの因子(項目)で総合的に便通が判断されていることが示唆され、「排便の回数」の項目のみで排便習慣を評価するには限界があり、本報で検討した8個の因子(項目)全てを検討する必要性があると考えられます。

 以上の結果のように、性別や年齢による便通の違いが明らかになり、大腸疾患と便通との関連を検討する疫学調査のための重要な知見が得られました。また、各個人の便秘に対する判断状況が明らかになり、各々の便秘患者に対する指導指針(排便の規則性に欠ける患者には規則的にトイレに向かうことを勧めたりすること等)を得ることができました。【熊江 隆】


出典:Bowel habits among the Japanese population. Matsuzaka M, Nakaji S, Umeda T, Suzuki K, Sugawara K , Sakamoto J, Wada S, Kumae T, Tokunaga S: J Phys Fit Nutr Immunol 13:9-16.2003

関連ニュース
食品摂取量と機能性便秘の関連
プリンタ用画面
友達に伝える
投票数:8 平均点:6.25
作成:2003/9/26 14:17:53 自動登録   更新:2009/2/5 11:51:48 自動登録   閲覧数:5891
前
水溶性ビタミン「ナイアシン」のヒトにおける代謝
カテゴリートップ
研究紹介
次
運動による糖代謝促進へのPGC-1αの関与

メインメニュー