マウスの卵巣切除により、骨格筋や褐色脂肪で脂質代謝の遺伝子発現が減少し、体脂肪量が増加する
?閉経後肥満のモデル実験?
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脂肪細胞を肥大化させる遺伝子Mest
食物として体内に取り込んだエネルギーの量が、運動などによって消費されるエネルギーの量よりも過剰であると、エネルギーは脂肪の形で体内に蓄積され、その結果、肥満が生ずる。
閉経後の女性では女性ホルモンの量が減少し、肥満を生ずることが知られている。この閉経を、動物を用いた実験のモデルとして再現しようとする場合、げっ歯類(ネズミ)の卵巣切除という手法が有効である。
卵巣は女性ホルモンを生産する主な臓器であるため、卵巣を取り除くことにより、閉経と同様の現象が起こると考えられる。実際、卵巣切除により、ネズミの骨密度は減少し、閉経女性で見られる様な骨粗鬆症が生ずる。
さらに、卵巣切除したネズミは体重増加が見られる。ネズミの卵巣切除によって生ずる肥満は酸素消費量の減少を伴い、エネルギー消費の抑制が起こっている。
しかしながら、このエネルギー消費の減少の正確な機序はわかっていなかった。
体内で、エネルギー消費に重要な臓器は筋肉(骨格筋)である。またネズミの場合は褐色脂肪という組織もエネルギー消費を行なうことが知られている。
本研究において、マウスの卵巣切除後の体重増加のメカニズムを明らかにするために、骨格筋と褐色脂肪におけるエネルギー消費や脂質代謝に関する遺伝子の発現パターンを調べた。
卵巣切除後、2、4週間後の骨格筋と褐色脂肪では、エネルギー消費に関わる核内受容体とコファクター、すなわちERR1、PPARα、PPARδ、そしてPGC1α、PGC1βの発現がコントロールに比べ低下していた。
そして、これらの核内受容体とコファクターの標的となる遺伝子である脂肪酸β酸化酵素の中鎖アシルCoAデヒドロゲナーゼとアセチルCoAオキシダーゼの遺伝子発現の量が下がっていた。
脂肪酸β酸化は、脂肪酸を分解する経路であり、脂肪酸β酸化酵素の量が多く、この経路が活発であると、脂肪がエネルギーとしてよく消費されるわけである。卵巣切除の場合は、脂肪酸β酸化酵素の量が減少していたため、脂肪はあまり消費されていない、ということになる。つまり、本研究で示した、これらの遺伝子発現変化は、卵巣切除ネズミが肥満する現象を説明しうるということになる。つまり、少なくとも部分的に、筋肉や褐色脂肪でのエネルギー消費に関する遺伝子発現が変化することにより卵巣切除後の肥満が生じていることを示している。
閉経後女性が太りやすいことも、これらの分子や経路が関与しているかもしれない。【亀井康富】
骨格筋や褐色脂肪では、ERRやPPARといった核内受容体とPGC1αやPGC1βというコファクター蛋白質が、エネルギー消費(脂肪消費)の遺伝子群の発現量を調節している。ネズミの卵巣切除(閉経のモデル)により、これらの遺伝子発現量が減少し、エネルギー消費量が減少し、その結果、体重増加(肥満)が生ずる
出典:Kamei Y, Suzuki M, Miyazaki H, Tsuboyama- Kasaoka N, Wu J, Ishimi Y, Ezaki O : Ovariectomy in mice decreases lipid metabolism related gene expression in adipose tissue and skeletal muscle with increased body fat. J Nutr Sci Vitaminol. 51:110-117, 2005
ニュースレター「健康・栄養ニュース」第4巻2号(通巻13号)平成17年9月15日発行から転載
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卵巣は女性ホルモンを生産する主な臓器であるため、卵巣を取り除くことにより、閉経と同様の現象が起こると考えられる。実際、卵巣切除により、ネズミの骨密度は減少し、閉経女性で見られる様な骨粗鬆症が生ずる。
さらに、卵巣切除したネズミは体重増加が見られる。ネズミの卵巣切除によって生ずる肥満は酸素消費量の減少を伴い、エネルギー消費の抑制が起こっている。
しかしながら、このエネルギー消費の減少の正確な機序はわかっていなかった。
体内で、エネルギー消費に重要な臓器は筋肉(骨格筋)である。またネズミの場合は褐色脂肪という組織もエネルギー消費を行なうことが知られている。
本研究において、マウスの卵巣切除後の体重増加のメカニズムを明らかにするために、骨格筋と褐色脂肪におけるエネルギー消費や脂質代謝に関する遺伝子の発現パターンを調べた。
卵巣切除後、2、4週間後の骨格筋と褐色脂肪では、エネルギー消費に関わる核内受容体とコファクター、すなわちERR1、PPARα、PPARδ、そしてPGC1α、PGC1βの発現がコントロールに比べ低下していた。
そして、これらの核内受容体とコファクターの標的となる遺伝子である脂肪酸β酸化酵素の中鎖アシルCoAデヒドロゲナーゼとアセチルCoAオキシダーゼの遺伝子発現の量が下がっていた。
脂肪酸β酸化は、脂肪酸を分解する経路であり、脂肪酸β酸化酵素の量が多く、この経路が活発であると、脂肪がエネルギーとしてよく消費されるわけである。卵巣切除の場合は、脂肪酸β酸化酵素の量が減少していたため、脂肪はあまり消費されていない、ということになる。つまり、本研究で示した、これらの遺伝子発現変化は、卵巣切除ネズミが肥満する現象を説明しうるということになる。つまり、少なくとも部分的に、筋肉や褐色脂肪でのエネルギー消費に関する遺伝子発現が変化することにより卵巣切除後の肥満が生じていることを示している。
閉経後女性が太りやすいことも、これらの分子や経路が関与しているかもしれない。【亀井康富】
骨格筋や褐色脂肪では、ERRやPPARといった核内受容体とPGC1αやPGC1βというコファクター蛋白質が、エネルギー消費(脂肪消費)の遺伝子群の発現量を調節している。ネズミの卵巣切除(閉経のモデル)により、これらの遺伝子発現量が減少し、エネルギー消費量が減少し、その結果、体重増加(肥満)が生ずる
出典:Kamei Y, Suzuki M, Miyazaki H, Tsuboyama- Kasaoka N, Wu J, Ishimi Y, Ezaki O : Ovariectomy in mice decreases lipid metabolism related gene expression in adipose tissue and skeletal muscle with increased body fat. J Nutr Sci Vitaminol. 51:110-117, 2005
ニュースレター「健康・栄養ニュース」第4巻2号(通巻13号)平成17年9月15日発行から転載
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脂肪細胞を肥大化させる遺伝子Mest
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作成:2008/6/23 16:14:41 自動登録
更新:2009/2/6 15:03:27 自動登録
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