生活習慣病関連遺伝子の多型解析の研究
?PPARα遺伝子のGly395Arg多型は729人の日本人の検体では検出されなかった?
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高脂肪食を摂った骨粗鬆症モデルラットに関連した遺伝子発現を経て、イソフラボンは脂質代謝を制御する
私たちの顔や体型が千差万別であるように、遺伝暗号であるDNAの塩基配列も一人ひとりかなり多くの部位で異なっています。このような遺伝暗号の違いは遺伝子多型(ポリモルフィズム)と呼ばれています。
このような遺伝子多型がどのような役割を担っているかが明らかになれば、個人個人の疾患にかかりやすさのリスク判定が可能となり、必要に応じて疾患を避けるためのライフスタイルをとることによって、疾患の予防、発症の遅延、早期発見、早期治療が可能となると考えられています。
特に、糖尿病や高血圧、肥満等の生活習慣病には、この遺伝子多型が関与すると考えられます。古典的な遺伝病の場合は、単一の遺伝子の変異によって起こり、メンデルの法則に従って、発症がほぼ予測されます。
しかしながら、生活習慣病は、現代の生活習慣(環境)に起因することは間違いないことですが、それでも発症する人としない人がおり、遺伝子の関与が濃厚です。おそらく、いくつかの遺伝子多型の組み合わせによって、生活習慣病になりやすい人となりにくい人がいるのでしょう。そのような遺伝子多型と生活習慣病の関係を調べるために、私たちは今回PPARαという遺伝子に着目して研究を行いました。
PPARαは核内受容体スーパーファミリーの一員であり、脂質代謝、脂肪酸酸化、ホメオスタシス、炎症に重要な役割を果たします。また、魚油が身体に及ぼす作用の一部はこのPPARαを介したものであるとされています。
ヒトPPARα遺伝子では、いくつかの多型(Leu162Val:162番目のロイシンというアミノ酸がバリンというアミノ酸になっているものやVal227Ala:227番目のバリンがアラニンというアミノ酸になっているもの)が存在することが、日本人を含め、いくつかの人種で報告されていました。
最近、PPARα遺伝子の別の多型であるGly395Arg(395番目のグリシンがアルギニンになっているもの)が白人とアフリカ人のサンプルで報告されました。
PPARαの395番目のアミノ酸は、リガンド結合領域と呼ばれる部分であり、リガンド(例えば魚油の成分である脂肪酸等)が結合する重要な場所です。
そこで、私たちはこのGly395Arg多型に注目することにしました。BMLという企業の協力を得て「インベーダー法」という解析方法でGly395Arg多型を検出する方法を確立しました。そして、この多型の有無を無作為に選択した成人日本人729検体について測定しました。
合成したオリゴヌクレオチドDNAは、Gly395Argの多型を明確に区別できたのですが(実験はうまくいっていたのですが)、729人の検体は全てGly(G)型であり、Arg(C)型は全く検出されませんでした。
これらのデータにより、PPARα遺伝子のGly395Argという多型の頻度は人種によって多様であり、日本人では極めてまれであることがわかりました。
今後は、日本人で割合の多い、別の遺伝子多型を解析し、生活習慣病のなりやすさとの相関を調べていく予定です。【亀井康富】
出典:Kamei Y, Saito K, Yokoyama T, Yoshiike N, Ezaki O, Tanaka H: Gly395Arg polymorphism of PPARalpha gene was not detected in Japanese population of 729 individuals. J Nutr Sci Vitaminol. 52(1); 75-8: 2006.
「インベーダー法」により、日本人の血液DNAサンプルを用いてPPARα遺伝子のGly395Arg多型を調べました。塩基がGであると緑色、塩基がCであると赤色のシグナルが出るようになっています。人工的に合成したDNAではGあるいはCのシグナルがはっきり検出されましたが、729人の日本人の血液サンプルではすべてがGであり、Cの塩基を持つ人はひとりもいませんでした(この図は例として12人分の結果を示しています。
ニュースレター「健康・栄養ニュース」第5巻1号(通巻16号)平成18年6月15日発行から転載
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このような遺伝子多型がどのような役割を担っているかが明らかになれば、個人個人の疾患にかかりやすさのリスク判定が可能となり、必要に応じて疾患を避けるためのライフスタイルをとることによって、疾患の予防、発症の遅延、早期発見、早期治療が可能となると考えられています。
特に、糖尿病や高血圧、肥満等の生活習慣病には、この遺伝子多型が関与すると考えられます。古典的な遺伝病の場合は、単一の遺伝子の変異によって起こり、メンデルの法則に従って、発症がほぼ予測されます。
しかしながら、生活習慣病は、現代の生活習慣(環境)に起因することは間違いないことですが、それでも発症する人としない人がおり、遺伝子の関与が濃厚です。おそらく、いくつかの遺伝子多型の組み合わせによって、生活習慣病になりやすい人となりにくい人がいるのでしょう。そのような遺伝子多型と生活習慣病の関係を調べるために、私たちは今回PPARαという遺伝子に着目して研究を行いました。
PPARαは核内受容体スーパーファミリーの一員であり、脂質代謝、脂肪酸酸化、ホメオスタシス、炎症に重要な役割を果たします。また、魚油が身体に及ぼす作用の一部はこのPPARαを介したものであるとされています。
ヒトPPARα遺伝子では、いくつかの多型(Leu162Val:162番目のロイシンというアミノ酸がバリンというアミノ酸になっているものやVal227Ala:227番目のバリンがアラニンというアミノ酸になっているもの)が存在することが、日本人を含め、いくつかの人種で報告されていました。
最近、PPARα遺伝子の別の多型であるGly395Arg(395番目のグリシンがアルギニンになっているもの)が白人とアフリカ人のサンプルで報告されました。
PPARαの395番目のアミノ酸は、リガンド結合領域と呼ばれる部分であり、リガンド(例えば魚油の成分である脂肪酸等)が結合する重要な場所です。
そこで、私たちはこのGly395Arg多型に注目することにしました。BMLという企業の協力を得て「インベーダー法」という解析方法でGly395Arg多型を検出する方法を確立しました。そして、この多型の有無を無作為に選択した成人日本人729検体について測定しました。
合成したオリゴヌクレオチドDNAは、Gly395Argの多型を明確に区別できたのですが(実験はうまくいっていたのですが)、729人の検体は全てGly(G)型であり、Arg(C)型は全く検出されませんでした。
これらのデータにより、PPARα遺伝子のGly395Argという多型の頻度は人種によって多様であり、日本人では極めてまれであることがわかりました。
今後は、日本人で割合の多い、別の遺伝子多型を解析し、生活習慣病のなりやすさとの相関を調べていく予定です。【亀井康富】
出典:Kamei Y, Saito K, Yokoyama T, Yoshiike N, Ezaki O, Tanaka H: Gly395Arg polymorphism of PPARalpha gene was not detected in Japanese population of 729 individuals. J Nutr Sci Vitaminol. 52(1); 75-8: 2006.
「インベーダー法」により、日本人の血液DNAサンプルを用いてPPARα遺伝子のGly395Arg多型を調べました。塩基がGであると緑色、塩基がCであると赤色のシグナルが出るようになっています。人工的に合成したDNAではGあるいはCのシグナルがはっきり検出されましたが、729人の日本人の血液サンプルではすべてがGであり、Cの塩基を持つ人はひとりもいませんでした(この図は例として12人分の結果を示しています。
ニュースレター「健康・栄養ニュース」第5巻1号(通巻16号)平成18年6月15日発行から転載
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高脂肪食を摂った骨粗鬆症モデルラットに関連した遺伝子発現を経て、イソフラボンは脂質代謝を制御する
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作成:2008/6/19 14:05:33 自動登録
更新:2009/2/6 10:49:04 自動登録
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研究紹介 |
新しい食事の多様性指標とその年次変化 |