医薬基盤研究所(NIBIO)のお知らせ
抗IL-8抗体を用いた子宮内膜症の炎症と線維化改善に関する産官学での非臨床試験の成果がScience Translational Medicineに掲載
2023年2月28日
【概要】
国立研究開発法人医薬基盤・健康・栄養研究所(大阪府茨木市、理事長・中村祐輔)(以下、NIBIOHN(ニビオン)という。)霊長類医科学研究センター 研究員 山海 直と中外製薬株式会社(本社:東京、代表取締役社長 CEO:奥田 修)、自治医科大学附属さいたま医療センター産婦人科教授 今野 良の研究グループは、子宮内膜症を対象として開発中の抗IL-8抗体(AMY109)について、サルを用いた非臨床試験において子宮内膜症の炎症と線維化改善の成果があることを明らかにしました(下図)。本非臨床試験は、2023年1月21日に開催された第44回日本エンドメトリオーシス学会学術講演会(高知市)においても発表しました。
本研究成果は,2023年2月22日(現地時間)に米国科学誌Science Translational Medicine電子版に掲載されました。
【今回の研究の意義】
子宮内膜症は20-40歳代の女性の10人に1人が罹患しており、疼痛と不妊症を引き起こすとされています。現在、子宮内膜症の標準治療はホルモン関連製剤および鎮痛剤による対症療法が中心ですが、今回の成果は子宮内膜症の病態解明に近づく研究であり、抗IL-8抗体が子宮内膜症の病態に基づく新規治療薬になりうることが期待されます。
【研究者のコメント】
NIBIOHN霊長類医科学研究センターの山海 直は、「カニクイザルには子宮内膜症を自然に発症している個体もいるのですが、症状の程度にばらつきがあるため、自然発症の個体だけでは信頼できる実験結果を出すことが困難でした。今回、子宮内膜症モデルのカニクイザルの作製に成功したことで、症状の程度を均一化した個体群を対象に実験を行うことができ、信頼できる評価系の確立および抗IL-8抗体の有用性が示唆されました。子宮内膜症で苦しんでいる方が大勢いる中、本研究が役立つことを願っています」と語っています。
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