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食事:ヒスチジンが必須アミノ酸と考えられる理由

作・山口迪夫:2002/12/11


 「あめふり、ひといろのバス」 必須アミノ酸の名前の1文字目を並べるとこうなります。「水兵リーベ僕の船」みたいなものです。このなかの「ひ」がヒスチジンです。

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 10数年前までは、ヒスチジンは乳児期では準必須アミノ酸で、それ以降の年齢層では非必須アミノ酸として扱われるのが一般的でした。乳児期での準必須性については、ヒスチジンの体内合成量が要求量をまかなえないという見解にもとづくものでした。そして当時ヒスチジンが成人において非必須アミノ酸とされた最大の理由は、ヒスチジン欠乏条件にしても窒素出納(Nバランス)がマイナスにならないという試験結果からでした。
 しかし、1985年にFAO/WHO/UNU(国連大学)が新たに提唱したアミノ酸評点パタン(表II-3)においては、乳児期及びそれ以降もヒスチジンは必須アミノ酸扱いにされました。その根拠としては、Kopple,J.D.(1975)らの報告が引用され、ヒスチジンをある程度長く欠乏させると窒素出納は漸次マイナスになり、ヘマトクリット・血清アルブミン・血漿と筋肉中のヒスチジン濃度が低下するとともに多くの例で皮膚病変が見られ、これらの異常がヒスチジン投与によって元の状態に復することがあげられています。
 このほかVisek,W.J.(1984)の総説でもヒスチジンの必須性を認める10数報の文献が紹介されています。筆者が改めて行った文献検索でも高等動物でのヒスチジンの合成経路を証拠づけるものはなく、むしろその必須性を示す文献が多く見られました。また、腎不全時の必須アミノ酸療法(必須アミノ酸のみによる輸液)においてもヒスチジンの添加効果が認められています。
 高等動物においてはヒスチジンの体内分解速度は極めて遅く、従って再利用率が著しく高いことが、過去においてヒスチジンの欠乏症をとらえ難くしてきたものと思われます。しかし、その後の生理・生化学的研究方法の進歩から上記のような必須性を示す証拠が多く得られるようになりました。
 結論的には、高等動物のヒスチジン体内合成経路が確認されていない以上、ヒスチジンは必須アミノ酸とするのが妥当であると考えます。日本の代表的な食品296品目でヒスチジンが第1制限アミノ酸になるのは、あわび・なまこ・あまのりの3品目だけであるので、現実的に問題になることはありません。


(国立健康・栄養研究所編『第二版 健康・栄養-知っておきたい基礎知識-』第一出版、東京、2001収載。出版社の許可を得て転載)



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