HOME > お知らせ > ニュース・Q&Aコーナー
独立行政法人 国立健康・栄養研究所
ヘルプ
HOME
調査・研究お知らせ国立健康・栄養研究所について
お知らせ
ニュース・Q&Aコーナー
食事    スポーツ栄養    栄養調査    研究紹介    病気    健康食品
食事:寒さに耐える食事とは

作・浦本裕美、江指隆年:2002/12/06


 ずばり、脂身です。そのわけは本文でどうぞ。

関連記事
浦本裕美、江指隆年のほかの記事

食事に関するほかの記事

 人間の体温を維持する能力は、進化の長い過程で環境温度の変化を経験することによって獲得されたものです。秋になって朝夕の温度が低下しますと、特に身体を動かしたわけでもないのに食欲が増し、たくさん食べてしまいます。その結果、皮下脂肪が厚くなり、人によっては基礎代謝量も増え、冬の寒さに耐えやすくなります。これは寒さに適応しようとする能力の現われの1つです。
 身体に貯蔵された中性脂肪は、寒さに曝されたとき、容易に動員されるエネルギー源であり、皮下脂肪は断熱の役割をし、外気温により体温が奪われるのを抑えてくれます。そして、寒冷環境下での高脂肪食は甲状腺機能を亢進させ、耐寒性を増強します。
 従って、効率よく寒さに耐えるには、脂肪量の多い食事が適するといえます。しかし、我々が日常経験する寒さの程度では、それ程多い量は必要ないと考えます。むしろ、熱産生のためのエネルギー代謝を円滑に行うのに必要なビタミンB1、B2、マグネシウムなど、そして様々なミネラルの補給を意識するべきです。寒さに曝されると、体表部や末端部の血管が収縮し、身体中心部の血流量が増加することにより利尿が促され、血中の各種ミネラル類が尿中へ排泄増加されることが予想されるからです。効率的な体温調節を発揮させるには、神経性因子や様々なホルモンの分泌の増大と同時に、それらの作用に対する生体側の反応が活発にならなくてはなりません。つまり、たんぱく質、ビタミン、ミネラル、糖質等すべての栄養素を不足なくとることが肝心です。また、運動トレーニングも熱産生能を高めて耐寒性を増大してくれます。
 ところで、食事性産熱(以前の特異動的作用)は、三大栄養素のいずれによっても認められ、たんぱく質が最も大きい産熱を示します。この産熱は寒冷下での体温保持に役立ちます。また、とうがらしやアルコールの少量摂取による食事性産熱と血管の拡張は、体温を上昇させます。この現象も寒冷下での体温保持に役立ちます。とうがらしのこの効果は、カプサイシンによるもので、過剰の摂取は産熱よりは熱放散を多くし、逆に身体を冷やすことになります。


(国立健康・栄養研究所編『第二版 健康・栄養-知っておきたい基礎知識-』第一出版、東京、2001収載。出版社の許可を得て転載)



| | トップページ | |

(c) All Copyrights reserved 2001 National Institute of Health and Nutrition

powered by hirotasque web portal system