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研究紹介:糖尿病でビタミンCがなぜ足らなくなる?

作・岡 純:2003/04/07


 ビタミンCは天然の主要な抗酸化物質の一つです。 体の中では、動脈硬化や癌などの原因となる可能性 のある活性酸素・フリーラジカルを取り除く働きが あります。

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 ビタミンCは天然の主要な抗酸化物質の一つです。 体の中では、動脈硬化や癌などの原因となる可能性 のある活性酸素・フリーラジカルを取り除く働きが あります。
 一方、糖尿病患者では酸化ストレスが亢進し、体 の中のビタミンC濃度が下がっています。ですから、 糖尿病状態でなぜビタミンC濃度が下がるのか、はっ きりとした仕組みを知ることは重要で、以前からも 断片的に研究されていました。例えば、糖尿病患者 でビタミンCの尿中排泄に異常がある、糖尿病モデ ル動物ではビタミンC合成酵素の活性が低下してい ることは知られていましたが、最近やっと本体が明 らかになってきたビタミンC輸送タンパク(細胞膜 でビタミンCの出し入れをするタンパク)や還元再 生酵素(酸化されたビタミンCを元に戻す酵素)の 動態についてはまだ研究されていません。
 さて、体の中のビタミンC濃度を決める因子には、 口からの摂取、腸管での吸収、組織の中での酸化と 還元再生、尿中排泄と再吸収、体内での合成などが 考えられます。そこで、ストレプトゾトシン(STZ) 糖尿病ラットを使ってなぜビタミンC濃度が下がる のか、研究しました。STZ 糖尿病ラットはI型糖尿 病のモデルで、発症すると急激に血糖値が上がり、 体重は低下し、尿量は増加します。さらに血中や組 織中のビタミンC濃度が下がります。肝臓中のビタ ミンC還元再生酵素の活性を測定すると、活性は下がっ ていました。つまり、酸化されたビタミンCが元に 戻らない可能性があります。それらの酵素のメッセ ンジャーRNAを定量したところ増えていました。 酵素タンパクが作られていても実際に機能していな いと思われます。腎臓でビタミンCの再吸収に働い ている輸送タンパクのメッセンジャーRNAに変化 はなかったのですが、大量の尿の中にビタミンCが 出て、結果的に大量のビタミンCが失われていました。 さらに肝臓のビタミンC合成酵素の活性を測定した ところ非常に低くなっていました。ビタミンCが作 られないのもビタミンC濃度が下がる原因の一つの ようです。
 このように、ラットI型糖尿病でビタミンC濃度 が下がる原因は、還元再生酵素や合成酵素の活性低 下に加え尿中へのビタミンCの損失があると考えら れました。ただ、ラットと違ってヒトはビタミンC を合成できません。ですから、ヒトの糖尿病ではビ タミンCの還元再生酵素活性低下や尿中損失を考え に入れてビタミンCの摂取量を増やすことが糖尿病 の合併症である動脈硬化などの予防にとって重要と なるかもしれません。その検討はこれからの課題だ と思われます。

出典:Impaired Ascorbic Acid Metabolism in Streptozotocin-induced Diabetic Rats. Kashiba M, Oka J, Ichikawa R, Kasahara E, Inayama T, Kageyama A, Kageyama H, Osaka T, Umegaki K, Matsumoto A, Ishikawa T, Nishikimi M, Inoue M, Inoue S: Free Rad Biol Med: 33(9): 1221-30, 2002.

(国立健康・栄養研究所発行 健康・栄養ニュース 第1巻3号収載)



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