2020.9.24
, EurekAlert より:
COVID-19のリスク、伝播、予防に関する誤解を正すことを目的とした教育コンテンツの有効性は、対象者の道徳的価値に大きく影響されるようだ、というサウスカロライナ大学からの研究報告。
この研究によると、個人の幸福感に対して強い道徳的価値観を持つ人々は、COVID-19に関する新しい情報が提供されたとき、自分の持っている考え方を更新する可能性が高いことが明らかになった。この一方で、集団の結束を守ることに道徳的価値を置く人々や、個人の自由を保護することを重要視する人々は、新しい情報を受け入れず、COVID-19に関する誤った考え方を維持する傾向にあるという。著者らによると、これらの3つの道徳感はそれぞれ、リベラル、コンサバティブ、リバータリアン的な考え方と関連づけられる。
「この研究結果は、COVID-19のリスクと予防に関する基本的な事実を伝えるメッセージは、受け取る人が強く抱いている道徳的価値観と相反すると認識された場合には受け入れられないだろう、ということを示している。」と著者の一人であるサウスカロライナ大学のグレゴリー・トレバス氏は話す。「公衆衛生上のメッセージと道徳的価値観との対立の認識は、疑い、怒り、あるいは混乱といったネガティブな感情を引き起こし、不信感を呼び起こして新たな情報の受け入れ拒否につながる。」
「一般大衆を対象としたとき、画一的なアプローチでは成功する可能性は低い。」とトレバス氏は言う。「かわりに、情報と行動への呼びかけは、様々な道徳的価値観に適応するために、異なるかたちで組み立てられる必要がある。」
たとえば、社会の結束を重要視する人に対しては、愛国的な行動としてマスク着用を促すメッセージを送る。これに対して個人の自由に価値を見出す人に対しては、仕事やレクリエーション活動に参加する自由を高めるための自己防衛手段としてマスク着用を促す。
「マスクの着用、ステイホームや営業自粛の要請といったパンデミックに対する公衆衛生上の対策は、人々の道徳的価値観によっては、社会の結束や個人の自律性を損なうとみなされることがある。」とトレバス氏は述べている。
トレバス氏ともうひとりの著者であるメリッサ・ダフィー氏は、オンラインで募った米国の12の州 (アラスカ、アリゾナ、アーカンソー、コロラド、アイダホ、カンザス、モンタナ、ノースダコタ、オクラホマ、サウスダコタ、ユタ、ワイオミング) から518人の成人を対象に研究を実施した。対象の州は先行研究で、通常の経済活動の復帰や外出を求める住民が多い傾向が確認されている。著者らは、弱者への供給、権威に従うこと、個人の自由を守ることの重要性について問い、回答者の道徳的価値観を評価した。さらに著者らは、回答者のCOVID-19のリスクと予防に関する知識と、一般的な誤解を正すメッセージへの応答を調べた。
「この研究の結果は、COVID-19の知識に関する意見の不一致が集団行動を弱まらせ、共通認識とコンセンサスが必要とされているときにもたらされた。」とトレバス氏は話す。「パンデミック下での更新されるエビデンスとその実践に関するメッセージは、対象者の道徳的価値観と、そのメッセージに対する認知と感情的な反応を考慮する必要があることは明らかである。」
「我々は、米国人が個々の道徳的価値観に従って行動することを可能にするかたちで、COVID-19に関するエビデンスの受け入れを推し進める必要がある。」とトレバス氏は話す。「これには創造性、忍耐、信頼、相互的な尊重、そして国、州、地方レベルでの政策立案者と公衆衛生担当者間のコミュニケーションが必要である。」
出典は『教育学研究者』。 (論文要旨)
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