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[栄養]  ジャンクフードがやめられないのは腸からの命令のせい?
2022.9.12 , EurekAlert より:   記事の難易度 1
  

脳を刺激して食欲を促進する、腸内の脂肪センサーが明らかになった。不健康な食品選択を防ぎ、過食によって引き起こされる健康問題に対処するためには、この腸と脳のつながりをブロックする必要があるかも? 米・コロンビア大学ザッカーマン研究所の動物実験から。

「私たちは、脂肪と糖分の過剰摂取が肥満と代謝障害の蔓延を引き起こしている前例のない時代に生きています」と、筆頭著者でザッカーマン研究所ズッカー研究室のリー博士は述べている。「脂肪に対する飽くなき欲求をコントロールしたいのであれば、科学は、これらの欲求を駆り立てる重要な経路が腸と脳の間のつながりであることを示しています。」

食事の選択と健康に関するこの新しい見方は、砂糖に関するズッカー研究室の以前の研究から始まった。研究者は、ブドウ糖が腸内の糖の存在下で脳と通信する特定の腸脳回路を活性化することを発見している。対照的に、カロリーゼロの人工甘味料にはこのような効果はなく、ダイエットソーダでは満足できない理由はここにあるのかもしれない。

「私たちの研究は、舌が私たちの脳に、甘いもの、塩辛いもの、脂肪の多いものなど、私たちが好むものを伝えることを示しています」と、ズッカー教授は述べている。「それに対し、腸は脳に私たちが望むもの、必要とするものを伝えます。」

リー博士は、マウスが食物脂肪にどのように反応するかを調べたいと考えていた。脂質や脂肪酸は、すべての動物が生命の構成要素をまかなうために消費しなければならないものだ。そこでマウスを用いた実験で、大豆油の成分を含む脂肪が溶解した水のボトルと、人工甘味料(アセスルファムK)を含む水のボトルを与えた。するとマウスは、脂肪の多い水を強く好むようになった。遺伝子操作によって舌が脂肪を味わう能力を除去したときにも同様の好みを持つようになった。

研究者らは、マウスの脂肪に対する行動反応を駆動する特定の脳回路を活性化しているのは脂肪に違いないと推論した。その回路を探すため、リー博士はマウスに脂肪を与えている間の脳の活動を測定した。すると脳幹の孤束核尾側部 (cNST) と呼ばれる領域のニューロンが活性化した。cNSTは、砂糖の好みの神経基盤に関する先行研究にも関与していたため、この発見は興味深いものだったという。

その後、リー博士はメッセージをcNSTに伝える通信回線や、腸内の内皮細胞にある、脂肪に反応して迷走神経ニューロンに信号を送る細胞グループを2つ発見した。

「細胞グループの1つは、必須栄養素の一般的なセンサーとして機能し、脂肪だけでなく糖やアミノ酸にも反応します」と、リー博士。「もう一方のグループは脂肪のみに反応し、脳が脂肪を他の物質と区別するのに役立つ可能性があります。」

リー博士は、薬剤を使用してこれらの細胞の活動をブロックすることにより、さらに重要な一歩を踏み出した。いずれかの細胞群からのシグナル伝達を遮断すると、迷走神経ニューロンは腸内の脂肪に反応しなくなったのだ。その後、遺伝的手法を用いて迷走神経ニューロン自体または cNSTのニューロンのいずれかを不活性化してみると、いずれの場合もマウスは脂肪に対する食欲を失ったとのことだ。

カリフォルニア大学で脳と食欲の関係について研究するスターソン教授は「このエキサイティングな研究は、動物が脂肪を欲するように仕向ける分子と細胞についての洞察を提供します。」などと述べ、この欲求を制御することで、最終的には高カロリーで脂肪分の多い食品の摂取を減らすことによって肥満と闘うのに役立つ治療につながる可能性があるとしている。

出典は『ネイチャー』。 (論文要旨)      
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