2022.8.29
, EurekAlert より:
血縁関係はないのによく似た顔の人どうしは、遺伝子上の共通点があるほか、生活習慣や行動までもが類似していることが明らかに。スペイン・ホセ・カレーラス白血病研究所の研究。
氏か育ちか―人間は未だその結論にたどり着いていないが、疑問のいくつかは双子の研究によって明らかになっている。しかし、血縁関係のない人々の場合ではどうなのか。このたび初めて、顔は瓜二つだが血縁関係のない人々のペアを対象にした研究から、遺伝と環境の影響が判明した。そっくりさん同士 は、顔の外観、身長、体重などにとどまらず、行動のいくつかの側面においても類似しているとのこと。
現在、インターネットやSNSなどの普及により、そっくりさん同士を探すのが容易になったことが、この研究を大きく後押ししたという。
今回はカナダのアーティスト、フランソワ・ブルネルが撮影したそっくりさん写真シリーズに掲載されたペアに参加を募り、32組の人々が被験者となった。参加者全員に、広範囲にわたる生活様式と生体認証アンケートに回答してもらった。次に、3 つの異なる顔認識プログラムを使用して、各ペアの「類似性」の程度を判断した。すると、少なくとも 2つのプログラムによって相関すると判断されたペアの数は32組のうち25組(75%)と非常に高かった。このことは、人間が一卵性双生児を認識する際のスコアに非常に近いものだというが、本研究ではさらに精度を高め、3つのプログラムすべてで相関が認められた16組を対象として次の分析を進めた。
唾液DNAサンプルを用いて一般的な遺伝的変異とそのエピジェネティックなプロファイルのゲノム全体の分析を実施するとともに、マイクロバイオーム分析を行った。すると、16組のうち9組で、最も一般的なタイプの遺伝的変異である、多くの共通した一塩基多型 (SNP) を持っていることが明らかになった。
また、これら16組の多くはペアと体重が類似しており、生体測定およびライフスタイル要因の分析でも類似点があることが示された。喫煙や教育レベルなどの行動特性についても相関がみられ、遺伝的変異の共通点が外見だけでなく、一般的な習慣や行動にも影響を与える可能性があることが示唆された。
今回の発見は様々な分野に応用できる可能性があり、医学の分野においては、顔の分析から人のゲノムを推測できる可能性があるため、これを事前スクリーニングツールとして使用して、病気に関連する遺伝子変異の存在を検出し、初期段階で予防戦略を適用できる可能性があると研究者は述べている。
出典は『細胞レポート』。 (論文要旨)
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